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第1話 その代償は片手


エクシー。

君がおれに言いたいのは、テンプレどおりに始まる関係。

……そんなのは、ひとつも無いってことだろ?

異世界だって、日本じゃなくたって。


テンプレ通りじゃない。


……左腕が、ない。

あぁ、やっぱり夢じゃない。


ま、いいさ。

そろそろ始めようか。

ここからが、おれたちの“本当の物語”だ。





もやがかった視界。

静かだ。

神様でも出てくる?


「何やっているんだ」

あの怒鳴り声。よく知ってる。


……部長。

怒ってる。

こんなポカミスあり得ないーーこの前、おれが、注意したばっかりだろう?部下にさ。


……無いな……無いよな。


……


モヤから、ちょっとずつ、目の焦点が合ってきた。


こする目。


「えっ……」

どこ??

木、天井……ログハウス?


匂い……爺ちゃんの家。


そう。


日本じゃない。

ここは異世界。


思い出した。

ーーあの時、出し惜しみは無しだった。


歪む空気。伸びる時間。

仲間たちの動き、スローモーション。


……来る。


魔王の剣、こっちに。

はっきりとわかった。


そして──


おれの左腕が斬り落とされた。


プシュー、スプラッシュ。

吹き出す血。


無我夢中、おれの右だけで、渾身の一撃!


放つ!


グサッ。


心臓に、剣。

押し込む!沈む。


ズブズブ。

ゆっくり、崩れ落ちる魔王。



ッ!!

焦り、引き戻される。詰まる……呼吸。


そーっと押さえる。

「ない?」


……左腕がなかった。

ウッ。詰まる。


あぁ……。


上、あおいだ。


どうしたんだ?思い出せない。

その後の記憶が無い。




左腕で魔法。右腕で剣。

『魔法剣士』って呼ばれてた。

年甲斐もなくはしゃいで。

そりゃ、ねーよ。



陽が差し込む。

床。

終わったよな? 魔王、倒したよな?


持ち物は、ない。

パーティーメンバーは……無事か?


フッ、しらじらしぃ。


……無事なら、おれの左腕が無いはずがない。


聖女が治せる。

彼女なら。治せる。


違和感。

焦燥感。

あいつら……魔王を倒す前に──いや、無い。



ッ!!


スー。


扉がゆっくりと開いた。


息と時が、と…まる。


空気がフーっと重くなった。


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