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岸高隆史の恋愛物語  作者: 斉藤
本編
15/22

■ 岸高 隆史のまとめ(本人視点)

■ 岸高 隆史のまとめ(本人視点)


最初の俺は、ただのダメ人間だった。


仕事はいい加減、ミスばっかり、報告・連絡・相談って単語にはアレルギー反応が出るレベルで興味がなかった。

製品を間違えて作っても「まあ大体合ってればいいっしょ」って笑ってた。

職場でも変な奇声あげて、サボって、怒られても右から左。

筋トレ? 痩せ薬? シックスパック? そんなもん“面白半分のネタ”でしかなかった。


それでも――結婚はしてた。

矢智代っていう、よく笑うけど、すごく賢くて、ちょっとこわいくらい芯のある女の人と。


だけど俺の“愛”は、セックスのときだけだった。

優しさも、言葉も、触れ方も、全部その瞬間だけで、終わったあとには元通り。

俺は“愛される”ことばっかり求めて、“愛する”ってことが何なのか、1ミリも考えてなかった。


で――

ある日、コーヒーに変な薬を混ぜられた。


「1000年後に明らかになる愛に至る道」

なんかよく分からんが、10段階で強制進化するやつ。

笑える話みたいだけど、マジで地獄だった。


地獄。餓鬼。畜生。修羅。


何がキツかったって、痛いとか苦しいじゃなくて、

“自分がどれだけ何も見てなかったか”を思い知らされるのが、地獄だった。


誰かを所有しようとしたこと、

理解したつもりになってたこと、

尽くせば好かれると思ってた浅さ、

自分の不安を“愛”と勘違いして押しつけてたこと――


全部、薬に突きつけられて、逃げ場はなかった。


でも、“人”になって、“声”を聞いて、

“沈黙”を読み取って、

最後は「この人の幸せが、自分の幸せより優先できるか」ってところまで来た。


ああ、俺は、

本当に“この人を大切にしたい”って思ってるんだなって、

やっと分かった。


矢智代が海外に行くってなったとき、正直怖かった。

でも、止めたくなかった。


帰ってきた彼女に、もう一度「恋しよう」って言われたとき、

たぶん、人生で初めてちゃんと“恋”の意味が分かった。


俺はもう完璧な人間じゃないし、昔の失敗も消えない。

でも、今なら言える。


俺は今、ちゃんと“愛してる”。


毎日それを続けることが、俺の生きる意味になってる。

隆史が変わったのは仕事に対しても「苦しい時ほど楽しんで」を使いだしたからである

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