表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
岸高隆史の恋愛物語  作者: 斉藤
本編
13/22

その後の再会

2年後。


成田空港の到着ゲート。

午後3時、春のやわらかい光がガラス越しに差し込んでいる。


隆史は、白いシャツと紺のジャケットという、見慣れないほど落ち着いた格好をしていた。

手には小さな花束。青と白だけでまとめられた、控えめなブーケ。


ゲートが開き、人の波の向こうに、見慣れた姿があった。


矢智代。


少し髪が伸びて、口紅の色も以前より強い。でも、その目は変わっていなかった。

まっすぐで、まるで何かを読み取ろうとするような、深く静かな目。


ふたりは、黙って数歩近づいた。


先に口を開いたのは、隆史だった。


「……おかえり」


矢智代は、ゆっくりうなずく。


「……ただいま」


一瞬、時間が止まったように感じた。

周囲の喧騒も、アナウンスの声も、遠ざかる。


「そっちは、どうだった?」


「大変だった。でも、楽しかった。あっちで“私”としてちゃんと働けた。逃げずにいたと思う」


「そうか。……俺は、相変わらず地味に生きてたよ。特別なことは何もない。でも、空気の読み方は、たぶんちょっと上手くなった」


矢智代がくすっと笑う。


「前は読めなかったからね、空気」


「うん、俺の辞書に“察する”って単語、なかったもんな」


隆史は花束を差し出した。


「似合うか分かんないけど。あんまり派手なのは、君っぽくない気がして」


矢智代は受け取り、ふっと息をのんだ。


「……ねえ」


「ん?」


「私、もう一度ちゃんと“恋”してみたい。

今度は、付き合ってるとか、結婚してるとかじゃなくて。

ちゃんとあなたを知って、また一から好きになっていきたい」


隆史は、笑った。


「俺も。……初めて君を“愛せるようになった”のは、君がいない間だった。

戻ってきてくれて、ありがとう」


静かに、ふたりの間の距離が縮まる。

手が触れた。

それだけで、充分だった。


言葉はもう、あまりいらなかった。

隆史が変わったのは仕事に対しても「苦しい時ほど楽しんで」を使いだしたからである

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隆史が変わったのは仕事に対しても「苦しい時ほど楽しんで」を使いだしたからである
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ