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staying out for the summer  作者: 双葉紫明
どこへも帰らない
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 満足してたんだ。

 毎月、月末には借金の支払いがあるけど、あきは何も聞かなかった。

 あきが居てくれれば、大丈夫。

 僕はただ、良い曲を作って良いうたを乗せて上手に演奏して、たくさんの人に聴かせて。

 ただの僕。

 その存在を受け入れてくれる誰か。

 それは、疑いようのない、希望そのものだった。

 そんな4年間。

 しかし、バンドはうまくいかなかった。

 もう30過ぎ。

 僕とあき以外のメンバーは、なかなか活動に足並みを揃えられなかった。

 それでもそれならあきとふたり遊びに出かけ、毎日が楽しかった。

 けれど、僕。

 出来損ないは、幸せをそのまま味わう事すら出来なかった。

 心の何処かであきを疑い、焦って、なんとかしようと給料が入るとスロットでひと勝負、負ける事が何度かあった。

「今が自分の底だから、上しか見なくて良いんだよ」とか言い、あきの愛情を信頼して自信に満ちた様に振る舞いながら、ひとりの休み、ガタガタ震えた。

 きっとあきは、いつか居なくなる。

 彼女が本当の僕の姿に気付いた時。

 夢から醒めたみたいに。

 その時僕は生きて居られないだろう。

 ならば、そんなかりそめの幸せみたいなもの、ない方が良いんじゃないか?

 自信のなさ。

 それは、蜂蜜を苦々しく飲み下し、進んで下水に口を付ける。

 自己完結した理不尽なあきへのちいさな不信。

 それは、最大の背信行為だった。

 そしてそれが、彼女の表情を歪めて映し、彼女の言葉尻に棘を散りばめた。

 精神異常。

 僕の行き先は、濃い霧の中。

 深い自意識の霧靄。

 そのなかでひとり、帰る場所など、とうに見失ったまま。

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