21 核心
マーガレットは王室の扉を叩き返事を待った。
「入れ」
声を聞き、マーガレットはゆっくりと扉を開けていく。
「失礼します」
中には背を向けたガザリウス王が佇んでいた。
王は扉が閉まるのと同時に振り向いてマーガレットに深々と頭を下げた。
「マーガレット殿。今回の死の行進の事だが、我々、王国騎士団よりも迅速な対応誠に感謝する」
「いえ。クロム様の教えのおかげです」
「そうか。奴にも感謝を述べないとだな」
軽く笑うガザリウス王。
「突然呼び出してすまなかったな」
「いえ。それでは」
用が済んだと思い、マーガレットは退室しようと足を動かした。
しかしそれをガザリウス王が呼び止める。
「——たしか話によると影を操る魔法を使ったとか」
「ええ」
「少し見せてはくれないか?」
そう言われマーガレットは疑問を抱いた。
影を操る魔法は無詠唱、つまりは日常生活で使える簡単な魔法だ。
何故ガザリウス王はそんな魔法を見たいのだろう。
マーガレットの緻密な魔力操作を見たいという目的なら大した疑問も湧かない。
だが相手はこの国一番の実力を持つ魔法騎士だ。
影操しか使えないマーガレットよりも知識も経験も上。
「どうした? ダメか?」
「いえ。では少しだけ」
何かの企みがあると察したマーガレットは敢えて誘いに乗った。
ガザリウス王の前で影を操り小さな猫を創り出す。
「これでよろしいでしょうか」
「ああ。どうやら死の行進を一人で止めたその実力は本物のようだ。疑ってすまなかった」
「いえ。それでは」
マーガレットが振り向いて扉に手を掛けた時だ。
王が呟いた言葉をマーガレットは流さなかった。
「これなら大量に自身の分身体を作れるな。それに地下にも......」
刹那、マーガレットの体が硬直するのと、研究施設を探索させていた分身体の反応が消えたのは同時だった。
「どうかしたのか?」
「何でもないです。失礼します」
そう言ってマーガレットは退室した。
そして至って冷静な頭で考えをまとめていく。
「なるほどね。一本取られたわ」
あの男、ガザリウス王が何を企んでいるかはマーガレットはまだ分からない。
だかこそマーガレットは今一度、先程まで戦闘していたあの場所へと足を進めたのだった。
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「ガザリウス王。一体なにが目的なの?」
マーガレットは死の行進の魔物達と戦った場所に来ていた。
そして見つけてしまったのだ。
魔物を呼び寄せ、興奮状態にさせるお香の残骸を。
「なるほど。通りで壁の壊れたここをピンポイントで襲えた訳ね。しかし誰が何の目的で?」
ガザリウス王には、意図的に死の行進を起こしてまで国を襲わせるメリットはない。
それにそんな事をする理由すらない筈だ。
「となるとかの国を潰したい誰か?」
そう口に出すがマーガレットは何処か納得しなかった。
何かがマーガレットの中で引っ掛かっていたのだ。
「......そう言えば死の行進は強くても中級の魔物の筈。なのに何故ディザスターウルフが?」
魔物を喰らい魔力を取り込み強くなる。
今回の死の行進も同じ事が起こり災害級のディザスターウルフが誕生した。
「死の行進で共食いが起こった例は何件か存在する。ただ生まれても上級か、進化する前に同じ魔物に食われるか狩られるか———いや違う? 予め一体上級を用意して、そいつを強化させる餌として死の行進を起こしたとすれば......」
マーガレットが何かを思い付いたその時だった。
未だ国中を探し回っていた分身体の反応が全て消滅したのだ。
「ガザリウス王......」
マーガレットの中で何かが確信に変わった。
ガザリウス王は黒だ。
ただマーガレットにしてもまだ不明な点が多い。
「行きますか」
彼女は影で穴を掘り地下へと足を運んだのだった。




