第33話 花を育てる本当の理由
村長さんの自宅までの道程でさえ、素敵な花に沢山会うことができ、私の顔は自然と笑顔になった。
カイトはやっぱり村人のリップをみる視線が気になったのか、花にまで意識を向けることは出来ずに、私とは対照的に険しい顔をしていた。
そうしてようやく村長の家についた。
グレースの建物は石造りでつくられており、代々受継げられたであろう年季が見て取れた。
「さぁどうぞお入り下さい」
村長が扉を開き、私達を家に通した。
「お邪魔します」
中に入ると小さな女の子とその母親と思しき方がテーブルの座布団に腰をかけていた。
私達もそちらに案内されて村長がコーヒーを出してくれた。
「その竜本物なの?」
女の子が興味津々でリップを見つめて言った。
「本物だよ」
私がリップの代わりに答えた。
「その子は私の孫のメイです最近4歳を迎えたばかりでね。何にでも興味を持つんですよ」
メイちゃんはリップを大変気に入ったようでまだおぼつかない足取りでリップの元へいき、リップの頭を触ろうとしたが、寸前のところで母親に止められてしまった。
「メイちゃん駄目よ」
母親に止められるとメイちゃんは今にも泣き出しそうな顔をしたので、すかさず私が「お母さん大丈夫ですよリップは嫌がったりきませんから」と母親に言った。
「そうですか」
メイちゃんがリップを撫でるとリップは気持ち良さそうに鳴いてみせた。
「グルルーグルルー」
相変わらず子供に人気なリップだった。
するといつまでも本題に入ろうとしない村長を見兼ねたのか、カイトが村長に話を切り出した。
「村長それでさっきのお話の続きですが?」
「そうでしたな、ではこちらへ来て下さい」
すると奥のある部屋に案内された。そこにはベッドに横たわる老婆の姿があった。寝ているのか意識がないのか私達には皆目検討もつかなかった。
「こちら私の妻のフレシアです。今は気持ちよく寝てます」
寝ているだけと知ってまずは一安心した私だったが、フレシアさんが調子がいちようには見えなかったので、村長に聞いてみた。
「あのフレシアさんどこか悪いんですか?」
「肺の機能がね。今は自分で歩く事もままなりません。
しかしこれでも少しは良くなったほうなんだよ。以前は人工呼吸器がなければ息を吸い込むことさえ出来なかった。しかし今はもうこれ以上の手立てがないのです。病状の後戻りも時間の問題でしょう」
「不治の病ということですか」
カイトが村長に言った。
「どうかな?治せない訳ではないんだ。治すための原料がこの地にないんだよ」
セドリック村長は幸せそうな奥さんの寝顔を見つめながら話を続けた。
「アイリス、昔はそこまで珍しい花でもなかったんだが、今ではまったくと言っていい程見かけなくなってしまった。
この病魔に打ち勝つためにはどうしてもアイリスが必要だった。
私達はそれからというもの、アイリスの代わりとなる特効薬を作るために色々な種類の花を育て研究しては試した。
しかしこの病に打ち勝つ糸口は未だに掴めずにいる」
「今やフレシアだけではない。この村に住む人たちに病魔が蔓延してきている。この問題をなんとかせねばグレースは滅んでしまう」
「そんな……」
私はそれ以上村長にどう励ませばいいか言葉が思いつかなかった。
それを察したのか村長が私達に言った。
「あなた達が気に病むことはありません。もしグレースが滅ぶことがあればそれもまた運命なのです。私達にはそれを受け入れるしかありません」
村長は半ばこの問題を諦めているように私には見えた。
しかし私にはこんな悲しいことを運命で片付けることは決して出来なかった。
「村長さん諦めないで下さい。きっとアイリスはまだ探せばどこかにあるはずです。アイリスはどのような場所に咲くのでしょうか?」
「そうだな、山の標高の高い所に自生する花ですが、私達も散々探してそれでも一輪も見つける事ができなかった」
「花の特徴もいいですか」
カイトが言った。
「葉っぱは細長く青い花を咲かせる。写真があるからこれを持っていくといい」
セドリック村長に写真を受け取り私は彼に言った。
「リップなら空を飛べるので少し近くの山を見てきます」
私はそう言うと外に駆け出しカイトとリップに乗って空に飛びだった。




