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第31話 りんご農園

 小刻みよく『カン』っと響き渡る音が聞こえ私は目を覚ました。

 時刻は午前10時を回っており、いつもなら8時には起きてるはずなのに、快適過ぎて眠り過ぎてしまった。

 それでもリップはまだを目を開けようとしないので体を揺すって起こした。

 リビングに出たがカイトの姿はなく、昨日の洗い物は既に綺麗に洗われていた。

 テラスから外に出てみると体を突き刺すような寒さが出迎えたが、カイトが早くから薪を作ってくれていた。

 さっき聞いた音は薪が割れる音だったのだ。


 「カイトおはよう」


 「アサおはよう。昨日はよく寝れたか?」

 カイトは手を動かしながら私に言った。


 「お陰様でね。早起きしたなら一緒に起こしてくれれば良かったのに」

 

 「気持ちよさそうに寝てたもんだから、起こしづらくてな」

 斧を振り下ろし丸太が2つに割れる。


 「それより昨日の八百屋の所にお礼にいくんだろ?俺はここで待ってるから早く支度してこいよ」


 「分かったわ。少し待ってて」

 私は洗面台で顔を洗い、歯を磨いてからツンツンと所々跳ねている髪をくしでとかした。もみあげは密編みにして先に赤いリボンであしらった。


 寝室に置いてきたリュックを取りにいくと、リップはさっき起こしたのにも関わらず、また大きないびきを立てて寝ていた。 


 「リップいい加減にしなさい。起きるのよ」

 大きな体を揺するに揺するとようやくリップが目を覚ました。


 「グワーグルルー」

 リップはまだ寝ぼけているようで呂律がうまく回っていなかった。そんなリップに私は顔を洗ってくるよう命じた。


 「カイトお待たせ」

 私はリップを連れてカイトの待つ外にやってきた。


 「今日はカイトも一緒に行くんでしょ?」


 「そうだな、俺も昨日のお礼がしたいしな」


 「それじゃいきましょ」

 私達はリップの背中に乗って商店街の通りを目指した。

 程なくして到着すると昨日とは違い、通りには活気があって沢山の人でごった返していた。


 「あっカイトあの店だわ」

 私は昨日の露店を指差して言った。

 

 店の前には昨日の店主がいて私達は挨拶をした。 

 「こんにちは、昨日はありがとうございました」  


 「どうもよく来てくれたね。そういえばお互い自己紹介がまだだったな。俺はラルドだ」

 ラルドさんに続き私とカイトも自己紹介をした。


 「じゃロト、店番頼んだぞ。父ちゃんちょっと行ってくるからな」

 ラルドさんが立ち上がって、私達をある場所に案内するため先導していった。

 ラルドさんの跡についていって、私はあることが気になった。

 ラルドさんの左足だ。歩く度に軋むような音を立てて、よく目を凝らして見てみるとそれは義足であった。

 調子があまりよくないのかおじさんは、時折左足はを引きづるような歩き方をしていた。


 そしてラルドさんが足を止めるとそこには立派な野菜畑とりんご農園が広がっていた。


 「これ全部ラルドさんの畑なんですか?」


 「そうだよ、ここで朝採れたての物を店頭で販売してるのさ」


 「それで俺達に手伝ってほしいことっていうのは?」

 カイトが聞くとラルドさんは言った。


 「それが隣のりんご農園なんだが、実がみのって今が収穫時なんだが、脚がこの通りでな。脚立に乗るのが難しいんだ」


 「それじゃー私達でりんごの収穫をすればいいんですね」


 「頼めるかな」


 「勿論ですよ。それじゃ3人で手分けしてやりましょう」

 私が腕をまくり作業に取り掛かろうとするとカイトが私に言った。


 「アサちょっとリップと一緒に先にやってもらっていいか?」


 「別にいいけど、どうしたのよカイト」


 「ちょっと俺に考えがあってな」


 するとカイトはラルドさんに向き返り言った。

 「あのあなたの義足をちょっと見せてもらっていいですか?」


 「別に構いやしないけどどうするんだ?」


 「機械には少し腕に覚えがあるんです。その義足を少し俺が見てみます」


 私とリップはカゴに次々りんごを収穫していき、カイトはラルドさんの義足のメンテナンスを行った。

 空のカゴが3つ一杯になった所で、ラルドさんが大きな声で喜ぶ声が聞こてきた。


 「こいつは凄い、しっかり動くぞ」

 ラルドさんが飛び跳ね、左足の調子を確かめた。


 「潤滑油を差したんです。雨に濡れた時などは特に気を付けて下さい。精密機器なので乾かした後は必ず油を差すこと。こちらはあなたに差し上げます」

 説明をし終えカイトはラルドさんに潤滑油を手渡した。


 「いやー本当に助かりました。これなら明日の仕事もはかどります」

 ラルドさんはカイトに頭を下げお礼をした。


 「カイト上手くいったんだ!!」

 私は脚立に足をかけながら、カイトに聞こえるように大きな声で言った。


 「ああ」


 「アサさんも収穫はそのへんで終わってもらって結構ですよ」


 「でもまだりんご沢山なってますよ」

 

 「明日私がやりますんで大丈夫です」

 そう言われ私とリップは収穫を止めてラルドさんの元に駆け寄った。


 「いやーお二人にお会い出来て本当に助かりました。これなら明日から仕事がはかどります。なんとお礼をしたらいいか」

 ラルドさんは改まった様子で私達にお礼をしたが、元々お返しのつもりでやったことだったので、そこはしっかりと訂正させてもらった。


 「ラルドさん辞めて下さい。これは昨日のお礼なんですから」


 「そうですが、これだけのことをしてもらったんですから何かしらお返しをしたいところです」


 「そうですね。どうしてもと言うならラルドさんのおすすめする素敵な村を聞いてみたいです」


 ラルドさんが少し考え込んでから言った。

 「素敵な村でねぇ。それこそモンテは気に入らなかったのかい?」


 「勿論気に入りましたけど、もう満喫出来たので、そろそろ次の村に旅立とうと思ってます」


 「そうか、ならここから西に30km程行った所にグレースという村がある。そこの村は色とりどりの花が咲き乱れて美しい村だと聞いたことがある」


 「花ですか素敵ですね。グレース気に入りました。私達次はそこを目指そうと思います」


 私達はラルドさんに別れを告げて一度コテージに帰ってきてから支度を済ませ、ラルドさんから聞いたグレース村を目指すために西の大地に飛び立った。

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