第23話 勝負の行方
アーロイも人の姿で竜の力を使うことは、負担が大きいらしく、以前にも増して息を切らし、スタミナの消耗を物語っていた。
「これでお前も終わりだアサ」
アーロイが起き上がれない私に剣を振り上げ、とどめを刺そうとしたその時だった。アーロイの背中に衝撃が走り、爆発が巻き起こる。
ジョセが倒れながらも、弓を構え矢継ぎ早に矢を放っていった。
「あんたの相手はあたしだ。くたばりな!!」
「おのれー女!!」
アーロイは怒号を上げ、爆発を誘発する矢を受けながらも衝撃に耐えジョセに向かって行った。
「お願い動いてこのままじゃジョセが」
私は足に無理をきかせ、踏ん張り立ち上がろうともがいた。
すると急に身体が軽くなるのを感じた。リップが肩を貸してくれたのだ。
「クークー」
私を立ち上げさせると、リップはアーロイに向けて突進を繰り出し、アーロイが態勢を崩すと、その勢いのままジョセの元へ駆けつけ、ジョセを乗せると、中へと戦線離脱していった。
「おのれ」
アーロイは態勢を立て直すと、空に逃げたリップに睨みを利かせた。
ターゲットを完全にジョセとリップに移していたアーロイの背中に私は叫んだ。
「アーロイ私はまだ戦える」
ゆっくりと振り返るアーロイ。アーロイの目に映るのは、立ってるのがやったのボロボロな私だった。
「満身創痍なその体で何ができる?」
「満身創痍ならあなたも同じことでしょ」
アーロイが自分の体を見下ろしてみると鎧は至る所からひびを作り、崩れてなくなっている所もあった。
「お互い条件は同じ」
私は棍を構え直しアーロイ言った。
「同じだと?」
「ええ」
私は息を整え五感を研ぎ澄ませ、まぶたを開くとアーロイと同じく、瞳は赤く光を放っていた。
「貴様にも使えるというのか」
アーロイに私の計り知れない力に一抹の不安を覚え、腰がすくんだ。
私はアーロイが弱気になった所で一気に攻めに転じた。
私の連続の突きにアーロイは手を出せずに防戦一方になっていた。どんどん後方に追い詰められていき水辺が見えてきた所で、アーロイは持ち前の力技で私の混を止めた。
お互いどちらも引かずに力を込める。しかし力では上だと踏んでいたアーロイだったが、力さえも私にどんどんおされていった。
リップに乗り上空からそれを見てたジョセも驚くばかりだった。
「どうなってるんだ?アサがアーロイをおしてやがる。リップもしかしたら勝てるかもしれないぞ」
アーロイ信じられない現実に嘆いた。
「馬鹿なこの俺がこんな女に」
しかしあと一歩の所で私の瞳に宿る光が、そよ風に消されるようにその光を失った。
アーロイは力を失った私をその自慢の力で大きく後方へと吹き飛ばした。
「どうやら荒削りの秘技だったようだな。この勝負黒竜アーロイの勝利だ。ははははは」
勝利を確信して声高らかに笑っているとその頭上に、白い竜が飛んでることに気が付いたアーロイ。
すると白い竜から聞き慣れない男性の声が聞こえてきた。
「アーロイ勝利宣言にはまだ早いぜ」
アザエルさん地上に下りてくるとその背中にまたがっていたのはなんと黒騎士ウィリーさんだった。
「ウィリーなぜ貴様がここにサリサはどうなった?」
「サリサの住民はみな俺が避難させたた安心しろアーロイ」
「そうかならばこの女を殺し私はサリサに戻る」
「そうはさせない、アサを殺される訳には行かないのでな」
剣を抜きアーロイの前に立ちはだかるウィリーさん。
「貴様どういうつもりだ」
「俺の本当の名前はカイト、バルセルラ出身者だ。アサとは古い仲でな」
顔を覆う甲冑を投げ捨てると中から顔を出したなのは、なんとカイトだった。
「なるほどサリサにスパイが紛れ混んでいたということか。レムルを襲撃した際、唯一の生き残りだったお前と剣を交え、その実力を買い、お前を生かしてやったというのに残念だよ。
ウィリーお前はみすみす私にここで殺されるのだからな」
「アーロイそう上手くいかんぞ」
カイトが懸命に攻め立てるもアーロイの言うとおり、彼は竜の力を使いすべての攻撃を防いでみせた。
「竜の力を持たないお前が私にどうやったら勝てるというのだ?
所詮人間の力などたかが知れているのだ。私の相手にはならん、ウィリー、アサと共にここで死ね」
アーロイが攻撃に転じ、カイトを斬りつけよう大きく振りかぶったが、その一瞬体から力が抜けて地面に膝をつけてしまった。
「なんだと竜の力が解けただと?そんなバカな」
何が起きたか理解が出来ず動揺するアーロイにカイトが種明かしを始めた。
「竜の扱いには3年前に既に熟知してるんでな。
お前ら竜は警報音のような甲高い音が苦手なんだ。お前が竜の力を使えば使うほどにその弱点は強くなる」
防犯用の携帯警報機を片手にカイトが言った。
「貴様」
「アーロイ勝負あったな」
アーロイに刃を向けカイトが言ったが、アーロイは納得ができないようで怒り声をカイトにぶつけた。
「貴様そんな姑息な真似をしなければ私に勝てんのか、この卑怯者め」
「いいだろう。そこまでいうならアーロイお前を実力で打ちのめす」
カイトはアーロイが立ち上がるの待ち、二人がともに剣を構えた。
「行くぞウィリー」
二人が同時に駆け出し、お互いに向かって渾身の一撃を繰り出した。
剣と剣がぶつかり合い火花を散らす。
しかしアーロイの剣がカイトの放った一撃に耐えきれずに、惜しくも砕けて折れてしまった。
「ぐは」
吐血しアーロイは膝をついた。
カイトはアーロイに対して刃を彼に向けることはなかったが、それでも腹部に受けた衝撃は凄まじくすぐに立ち上がることは出来なかった。




