第10話 ダム、村長の策略
黒竜となったアーロイが無数の矢が刺さりながらも、サリサの村へと帰還した。
「アーロイ様が戻ってこられたぞ!!みなのものスペースをあけろ!!」
ウィリーさんが声上げ村人を避難させる。
アーロイがサリサの大地に足をつけ、地響きなような大きな音を立てた。
ジュエルさんとウィリーさんがアーロイの元へと駆け付けた。先にアーロイの元についたウィリーさんが言った。
「マカの者の仕業ですか?これは酷くやられましたな。さぁ手当しますので人の姿に戻られてください」
「いや、竜の姿のままなら大した傷ではないのだが、この矢が刺さったまま元の姿に戻れば、瀕死の状態になりかねん。
兵を呼び集め矢を抜いてくれ。後の傷は自然治癒する」
「分かりました。よし皆の者集まれ、アーロイ様に刺さった矢を除去するのだ」
「あなた」
ジュエルさんがアーロイに駆け寄り心配そうな瞳で彼を見つめた。
「ジュエル心配かけたな、しかしこの戦いも後少しの辛抱だ。明後日には全てにケリがつく。マカがどちらの選択を選ぼうがな」
「はい……」
争いを好まないジュエルさんだけにその表情は切なさを滲ませていた。
その頃ジョセ達は村長に案内され、マカ村から少し離れたダムに訪れていた。
「中々立派なダムだね。空気が澄んでて気持ちいいや」
ジョセが体を伸ばしご機嫌に言った。リップも気持ち良さそうに羽を伸ばしている。
「ここは涼しくていいでしょう」
「そうですね。でも随分と水位が高くないですか?」
確かにダムは不自然なくらいに水位をあげ、このままではその内決壊してもおかしくないだろう。
「よく気づきましたね、3方向に流れ出るはずの1 つをせき止めているからですよ」
「なんだってまたなんでそんなことを?」
ジョセが首を傾げて言った。
「サリサへ制裁ですよ。
水の供給にわざわざ遠くまで足を運ぶ必要があれば、奴らはそこを去ると考えたのです。
しかし奴らは竜をつかい、我々に脅迫してきた。
だが我らはそんな力には決して屈指しません。奴らが我らに2日時間を与えたことをきっと後悔することでしょう」
「一体どういうことです?」
「奴らは水を開放しなければ、2日後にこのダムを破壊すると宣言した。
だが見よ、今まさに作業を勧めている。
水路に細工し水が流れ出ることがあれば、サリサは洪水に襲われ、奴らには自らの手で自らを破滅することになるのです」
「………」
ジョセはその話を聞き、黙ったまま複雑な気持ちになった。どちらにも正義なんかない。これは殺し合い、戦なんだと思った。
サリサでは黒竜に刺さった矢は全て取り除かれ、傷が癒えた所でアーロイは人の姿に戻り、体を休めるため屋敷へと戻っていった。
「お体の様子はどうですか」
ベッドに横たわるアーロイをジュエルさんがいたわった。
「問題ない」
「あの先程の話ですが、今朝のマカとの交渉の場でどのような話がされたのですか?」
「奴らに2日やるとだけ言っておいた。ダムの水を開放しなければダムを破壊するとな。だがそれだけでは済まさん。マカの村も焼き払ってやる」
「あなたこれ以上の殺戮はお辞めください」
ジュエルさんにはアーロイの非道行いを見過ごす事が出来なかった。
「なんだと」
「はじめから私達がいけなかったんです。レムルの村を襲うべきではありませんでした。この土地もお返しすべきです」
ジュエルさんのその言葉にアーロイさんはむきになり立ち上がり、彼女に詰め寄った。
「うぬぼれた事を抜かすな。国を追われた俺達にどこに行き場があるというのだ。
この黒龍の力がなければ当に我々は滅んでた事だろう。あとは水路の確保だけなのだ。それで我ら一族は繁栄できるのだ」
「そうですねアーロイ、私の考えが甘ったわ」
争いは加速しいき、もう誰にも止めることは出来ないのかもしれない。
私はマカの病室でようやく目を開いた。私の視界の先に医師がいた。
「ここは?」
「ようやく目が覚めたいかい。ここマカの病院だよ。今お友達と村長を呼びにいくから、ここでじっとしていて」
「マカか、みんな無事かな。黒竜に襲われてそこから記憶がないや」
体を起こそうとしたが頭が痛み私は力を抜いた。医師の言いつけ通りじっとしていた方が良さそうだ。




