第6話 サリサの案内人
サリサの村を歩いて村人の様子を見てみると、黒竜がいるサリサの方が優勢で豊かな暮らしをしてると思っていたが、実際はそんなことはなさそうだった。
村には活気がなく外を出歩く村人も、どこかうつむいた表情をしており、子供に至っては泣いている子さえいた。
「お姉ちゃん喉乾いたよ」
小さな女の子が私と同い年くらいの子に水をせがんでいた。
「朝に飲んだでしょ、夜まで我慢して」
その子は褐色の肌に茶色い瞳、白いショートヘアに服は黒の民族衣装のようなワンピースで腕の縁とスカート丈の部分に白く模様が刺繍されている。
その会話を聞いた私はあの時アザエルさんが言っていた事を思い出した。『この土地では水は貴重になるだろうからな』
私はすぐにミコットさんに聞いた。
「ミコットさんサリサは水不足なんですか?」
「そうみたいだな」
ミコットさん今初めて知ったような物言いだけど、嘘が下手で私にはバレバレだった。
「さっき言ってた交渉ってそういうことだったんですね」
その言葉に観念したのかミコットさんはサリサで起こってる事情を話し始めた。
「ああ、マカが所有してるダムでサリサの方に流れる川をせき止めてるからな川が干やがっちまってるのさ」
「なんでそんな事を」
「制裁だよ。奴らレムルの村の人々を滅ぼしたんだ、当然の報いさ」
「確かにサリサのやったことは、いけないことだったかもしれないけど、少なくともあの子達にはなんの罪もないはずよ」
私はそう言うと先程水を欲しがっていた子の元へ行った。
「おい、どこいきやがる。牢は向こうだぜ」
ミコットさんは私の意外な行動にあたふたしたが結局何もできないでいた。
私があの女の子の所へいくと、先程のお姉さんの姿はなく、変わりに5人の子供達が集まっていた。
「ねぇお嬢さん喉が乾いてるんでしょ?お水どうぞ」
私はあの子にアザエルさんからもらったお水を差し出した。
「これ変わった水筒だね。本当にお水入ってるの?」
竜の牙の水筒だからこの子が疑うのも無理はない。そこで私はある提案をその子にした。
「なら振ってみな」
この子が水筒を降るとじゃぶじゃぶと水が弾かれる音がした。ようやく信じてくれたようでこの子は私に笑顔でお礼を言ってくれた。
「お姉ちゃんありがとう」
この子が水を飲んでいると途端に5人の子達も水に集まってきた。この子は心優しくも水を独り占めにせず、みんなに分け与えた。
私はその姿に満足してあたふたするミコットさんの元へ戻っていった。
「まったく余計なことするなよ、こちとら警備の連中に目をつけられないか冷や冷やしたぜ」
ミコットさんが冷や汗を吹きながら私に言う。私はそんなことお構いなしにミコットさんに言った。
「それで独房ってどこですか?」
「おそらくあそこだ。コンクリートの壁に警備の出入りも激しいだろ、臭うぜ」
ミコットさんが建物に指を差して言った。
そして頭を悩まさせ「さてどうやって入るか」
「さっきの睡眠草使えばいいんじゃ?」
「いや無理だ。寝る前に煙がバレちまうだろうし、あの人数じゃどうしようもない」
私達はあーでもないこーでもないと立ち往生していると、村のある女性が私達に声を掛けた。
「お困りのようですね」
「あなたは?」
その子は先程子供にお姉ちゃんと呼ばれていたあの女性だった。
「先程は子供達にお水を頂きありがとうございました。
あなたウィリーさんが言ってたアサさんでしょ?」
「そうですが、ウィリーさん?」
私にウィリーという名の知り合いはいなく頭を傾げた。
「あなたウィリーさんの知り合いじゃないの?ウィリーさんはあなたのこと知ってたみたいだけど」
「存じ上げませんね」
「まぁいいわ。貴方の友達と竜ならこちらです。私についてきて」
私が彼女を跡をついていき、ミコットさんも跡を追うと彼女はミコットさんに振り返り言った。
「男性の方はここで待っててもらえますか?」
「なんだって」
「数が少ないほうが安全ですので、それに外に見張りは必要では?」
「ちっ分かってたぜ。アサ通信機だ。何かあったら連絡してこい」
ミコットさんは彼女に言いくるめられ、通信機を私に渡し残ることになった。
私は彼女について牢獄の中へと入ってゆく。
「私といれば兵士から疑われることはないので安心してください」
彼女はそうは言うものの、緊張せずにはいられないよ。
それにしても彼女こんな所に入って不審に思われないだなんて、結構偉い人なのかな?私は不思議に思い名前を聞くことにした。
「あなたお名前は?」
「私はジュエルです」
ジュエルさんがこちらを見て微笑んでいうもんだから、私は照れてしまった。綺麗な人だったから。
「ご苦労様、見張りは私が変わるわ」
そう言うと見張り番の人は休憩なのか牢獄の外へと向かっていった。
そして牢部屋でリップとジョセに再会した。
「ジョセ、リップ平気?」
私が格子に顔を近づけるとジョセが顔を上げた。
「アサじゃねーか、あたしずっと心配してたんだぜ」
「心配はお互い様今助けるわ。リップも元気してた?」
「クックルー」
リップも元気みたいで私は安心した。
「これが鍵よ」
ジュエルさんに鍵を渡され、牢の扉を開けジョセとリップを開放した。そしてジュエルさんにお礼を言う。
「ありがとうございますジュエルさん」
「さぁ一緒に逃げて、入口の二人なら竜がいれば突破出来るでしょ」
「はい、ジュエルさんあなたはどうして私達を助けてくれたんですか?」
「出来ることならお互い争いはしたくないでしょ。あなた方は関係のない人達だから巻き込みたくなかったの」
私は納得しジョセに向け言った。
「ジョセ、先にリップと一緒に逃げて」
「アサお前はどうする?」
ジョセは心配そうな顔で言った。
「私もすぐに逃げるから大丈夫」
「分かった。これお前の荷物だ」
ジョセは私にリュックを投げ入れ、私はそれをキャッチした。
「荷物没収されなかったんだ」
「否応なしに牢にぶちこまれたからな、そうだそうだ。リップがお前の武器持ってたっけ」
そう言うとジョセはリップの胴に巻かれたベルトに収まった棍を私に手渡した。
「ジョセありがとう気をつけて」
「アサもな」
そう言うとジョセはリップの背中に乗りそのまま出口にむけ飛んで行った。
「アサさんどうして一緒に逃げなかったの?」
詰め寄るジュエルさんに私は言った。
「ジュエルさん貴方も一緒に逃げましょう」
「できません……私はアーロイの妻なのです」
それを聞き言葉を失っていると通信機からミコットさんの声が聞こえてきた。
「まずいぞアサ、アーロイの奴が帰ってきたらしい。今すぐにそこから逃げるんだ」
「わかりました」
アーロイさんとも一度話す必要がありそうだ。私には切札がある、最悪捕まっても逃げられるはずだ。
私はジュエルさんを残し牢獄の外へと向かって駆け出した。




