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第2話  ささやかな一時

 気持ちのいい朝の日差しを全身に浴びながら、私は緑に染まった大地の上を颯爽と走っていった。

 こんなに気持ちいい晴天の空に気分は高揚し、ついつい駆け出してしまったけれど、後ろを振り返るとお母さんの姿がないことに気が付き、置いてきてしまった事を今更ながら少し反省した。

 でも前に目を向けるとそんな気持ちは鳴りを潜め、私は最後までスピードを落とすことなく家路を走り去っていった。

 自宅に到着し玄関を勢いよく開くと、普段なら聞き慣れない大きな開閉音から、リビングにいたお父さんが肩を跳ね上げさせ驚いた。

 たまたまその姿が目に入り、なんだか可笑しく思え、ふきだしてしまった。でも驚かせちゃったのに、それを笑うだなんて失礼だと思い、口に手をやりなんとか笑いを堪えた。 

 お父さんは短髪の黒い髪に、口元には立派な髭を蓄えている。口数は家族の中でも少ない方だけど、誰より家族思いで誰よりも頼りになる一家の大黒柱だ。


 「お父さんおはよう!」

 私が元気よく挨拶するとお父さんは冷や汗を拭いながら言った。

 

 

 「おはようアサ、今日は人一倍元気だな」


 「そうかしら?私はいつだって元気でしょ?」


 「言われてみればそうだな、所で今日もあの丘に行ってたのか?」


 「うん」

 その言葉にお父さんは少し険しい顔をし、私に注意を促して言った。 


 「あの丘には行かん方がいい、聞けば盗賊がでるって噂だ」


 「そうなの?そんな噂初めて聞くけど?」

 不思議そうに見つめる私に、お父さんは何も言わず深く頷くだけだった。

 変なお父さんと思いながらも、親の言うことは聞くべきだと思った私は、お父さんの言いつけを守ることにした。

 

 「わかったわ、少し控えるようにする。でも小鳥さんが巣立つまでは面倒見させてほしいの?それぐらいは良いでしょお父さん?」

 

 お父さんは深く考えた後「んー、分かった」と歯切れの悪い返事をかえした。

 お父さんも流石に小鳥を『放っておけ』とはいえず、しぶしぶ私の意見を受け入れてくれたみたい。


 そうしていると遠くから扉を開く音が聞こえ、ようやくお母さんが帰ってきた。

 お母さんは緑のロングスカートに黄色の服を着ており、髪色は茶色より明るめのオレンジ色だ。ちなみに私の髪色は黒味がかった茶色だ。


 「ちゃんと火とめてくれたんですね、助かりました」

 お母さんは感心するようにお父さんに言った。


 「わしだってそれくらいのことはできる」

 お父さんは馬鹿にされたようで少し不満気だ。 


 「アサ、そんな格好で出歩かないの、着替えてらっしゃい。それが終わったら皿に盛った料理を運んで頂戴」


 「はーい」

 

 私はお母さんに言われた通り、自分の部屋の2階に上がり、タンスからいつも着ている服を取り出した。

 私のお気に入りの服、誕生日にお母さん、お父さんからプレゼントされた服だ。

 赤いワンピースで裾にはフリルがあしらわれていて可愛い。新品の時と比べ、鮮やかな赤色がくすんでしまった感じもするけど、こっちほうが馴染んで私は好きだ。

 これだけでは少し肌寒さを感じるので中に白のトレーナーを着、その上からワンピースを着た。

 鏡で自分の姿を確認すると、肩ほどまで伸びた髪を整えていく。少し伸びたもみあげを三編みにし赤い紐でリボンを作り縛った。


 2階までお母さんの作る料理の香りが立ち込め、食欲をそそり私は駆け足で台所に向かい、お母さんの手伝いをした。


 テーブルには次々と御馳走が並んでいく。お父さんもようやく新聞を脇におき、私たちの朝食の時間が始まった。


 「いただきます」

 食事がはじまると私は自分の好きなものばかりに手をつけていたため、お母さんからバランスよく食べなさいとお叱り受けた。

 お母さんは行儀やマナーにはうるさい人だから怒られるのはしょっちゅうで、何度も言われてるはずなんだけど、いざ御馳走を目の前にすると衝動で体がいうことをきいてくれないの。


 そんな楽しい時間はあっという間に過ぎ、私はお母さんを手伝い、皿の洗いかたをした。


 「お母さん終わったよ」


 「ありがとね。アサ助かったわ」


 「はい、これ」

 私はお母さんから何かを手渡され、ゆっくり手を開くと中からお札が出てきた。


 「いいよ、こんなの。うちだって余裕ないんでしょ」


 「そんなこと子供が気にすることじゃありません」

 確かにまだ親に気を使う年じゃないかもしれないけど、うちの家計が厳しいのを子供ながら私は知っていた。

 そんなことを考えていた私だったが俯いた顔を上げると何やらお母さんがニヤニヤしている。ずばり嫌な予感がした。


 「それとついでっちゃあれだけど隣町にいって塗り薬を買ってきて頂戴。お父さん腰が痛くて働くの辛いっていうからさ」

 ずばり嫌な予感は的中した訳だが、断ってもいいことはないし、お父さんのためになるならと快く受けることにした。


 「うんわかった」

 ちなみにうちのお父さんの仕事は農家だ。


 「はいお金、後これね」

 すると底に無数の穴のあいたカゴを手渡された。


 「何これ?」

 底の穴からお母さんを覗きこみ思わず言葉がもれる。 


 「道中に山菜なってると思うから、帰りにでも採ってきてよ」


 「山菜かぁ、いまの時期なら沢山なってそう」

 想像しただけでワクワクした。どんな山菜に出会えるのか。


 「そうでしょ、でもあんまり変なの採ってこないのよ」


 「大丈夫ー、私山菜詳しいもの」

 私はそのまま部屋を後にし玄関へかけていった。


 「じゃお願いねー」

 私が玄関から出ようとしたときお母さん思い出したかのように顔を出し「あー寄り道しないのよ」


 「もう17よ、子供じゃないもん。いってきます」

 バタンと扉をしめさっそく隣町のタンパへと向かった。

 執筆の励みになりますので、感想、ブックマーク、評価よろしくお願いします。

 投稿日は基本毎日2話つづアップします(*^^*)

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