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第18話 約束

 「エルヤ大丈夫?」

 お母さんが私を後ろから抱きかかえ、心配そうな表情で言った。

 

 私は虚ろげな瞳で「うん」と一言頷くと、私を不思議そうに見つめるリップに向き返った。


 「エルヤ具合でも悪いのかい?」

 リップはキョトンとした様子で首を傾げ、私が何故腰を抜かしたのか分かっていないようだった。

 その愛くるしい仕草から、私の中の恐怖心はすぐに消失したが、一度力を失った腰部は私をすぐには立ち上がらせてくれなかった。


 お母さんは私を洞窟の壁にもたれかけさせると、私が落ち着くまでバッグから水筒を取り出し、私の口元に水を運んでくれた。


 「エルヤ自分で持てる?」


 「うん」

 私はお母さんからコップを受け取ると深呼吸をして心を落ち着かせる。


 「アサ、エルヤはどこか悪いのかい?」

 長い首を伸ばしリップが私達の間に割って入り、顔を覗かせた。

 私はまた背筋に緊張が走ったが、お母さんが気を利かせリップの頭を撫でると私からリップの顔をそっと遠ざけた。


 お母さんはそのまま立ち上がるとリップの質問に答えた。

 「いいえ、あなたの姿をみて少し驚いただけよ。エルヤ、ビビり屋さんだから」


 「なんでさエルヤ、昔は僕を見ても全然平気だったじゃないか?」


 「へへへ、幼少の頃の記憶はあまり覚えてなくて、リップには悪いけど正直はじめましてな気分なんだ」

 私はリップに悪いと思い、照れながらも正直にリップに打ち明けた。


 「そういうことか、それじゃエルヤはじめましての挨拶をしよう」

 リップはそう言うと長い首をこちらに伸ばし私に顔を近づけてきた。

 大きな顔、リップの顔は座ってる私の背丈と殆ど変わらなかった。

 リップの吐息が当たり私の髪が微かに揺らぐ。


 「エルヤ怖いことないてないわ」

 一歩踏み出せないでいる私にお母さんが一声掛けた。


 「リップただいま」

 私は勇気を振り絞りリップの顔を抱きしめた。


 「おかえりエルヤ」

 その声は優しくそして温かった。

 「体が震えてるけど無理してないかい?」


 「ううんもう平気。リップの声、見た目と違ってずっと可愛らしい声してるもの」

 私はリップに体を委ね、抱擁の一時を

噛み締めた。するとお母さんも抱擁に加わり3人で円を描くように抱きしめあった。

 それから私達は焚き火を囲み、3人で久々の再会に会話を弾ませていた。その頃には私の抜けた腰も元通りに戻っていた。


 「リップ私、別れたあの日からあなたのことがずっと気掛かりだった」

 お母さんがか細い声でリップに心の内を打ち明けた。


 「僕もだよ、一日たりとも君達のことを忘れたことなんてないよ。8年と6ヶ月と3日」


 「?」


 「僕たちが別れたあの日から今日に至るまでの期間さ。とても長かった」


 「リップごめんなさい、あなたに寂しい思いばかりさせてしまって。もっと早くここに訪れるべきだったわ」

 お母さんはリップの大きな胸に飛び込み、むせび泣きながらリップに謝罪の気持ちをぶつけた。


 「大丈夫だよ。二人が元気でやれてるって分かってたから」

 リップが涙を滲ませるお母さんの頭を優しく撫でて励ましの言葉を送った。

 私はその言葉を聞いて少し疑問に思った。どうしてリップは私達の無事を今日に至るまで確信していたのだろうか?


 「リップどうしてそんなことが分かるの?私達をどこかで見てたってこと?」


 「エルヤ、君に笛を授けただろ。その笛が鳴らされないってことはルヴィーが襲って来てないってことだ。それに仮にルヴィーが村に入ってきたとしても僕の鼻なら奴を嗅ぎつけることが出来るからね」


 「ルヴィーって誰のこと?」

 リップが何の話をしてるの分からず私が聞き返すと、リップは驚いた様子で前のめりなり私に言った。


 「君はルヴィーのことも知らないのかい?」

 それでもぽかんと頭に?マークを浮かべているすかさずお母さんが私の頭をコツンと叩き私言った。


 「エルヤ、前にお母さん教えたでしょ。白髪の女性には気をつけなさいって」


 お母さんの話を聞き、ようやくルヴィーとは誰の事なのかを理解した。

 「あーリップその人なら知ってるよ」


 「エルヤ、ルヴィーの名前を知らないなんて危機感が足りないよ」

 お母さんに続き、リップも叱るように私に注意する


 「ごめんなさい」


 「彼女は君の命を狙ってる、遅かれ早かれいつかはルーブルにも必ず現れるよ

 仮にこの地域に奴が来たとしたらルーブルから遠く離れなくてはならないよ。友達と別れるのは悲しいかもしれないけど」


 「リップそれなら私大丈夫だよ、私友達1人もいないもの」

 その言葉を聞いたリップは暫し言葉を失い目に寂しさ浮かばせた。


 「そっか。それじゃ僕がエルヤの初めての友達になるよ」

 リップのその優しさが嬉しかった。私はこの再会を最後にしないためにもリップと約束を交わすことにした。


 「そうだね、友達ならまた会いにきてもいい?」


 「そう何度も会えないかも知れないけど、月に1度くらいならいいかもね。どうアサ?」


 「そうねそうしましょ」

 お母さんが優しく笑顔でリップに答えた。

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