第16話 ループ
道を引き返して5分後、あれだけ霧の中を彷徨ってた私達だったが、ここに来て嘘みたいに霧が晴れていった。
「道を引き返すことは出来るみたいね」
お母さんが神妙な表情を浮かべ言った。
「あれだけ歩いてたのに、私達実際は全然進んでなかったってこと?」
「そうらしいわね」
お母さんの言葉に私は落胆し、その場に座り込んだ。今まで汗を流して歩いて来た分がパーなんて考えたくもなかった。
「お母さんこれからどうするの?」
「何か手立てはきっとあるはずよ。まずはどこで戻されてるかその出掛かりを探しましょう」
「分かった」
私はお母さんの手を借りて立ち上がりまた霧の中へと足を踏み入れるであった。
まずは反り返った木の場所まで向かい、その先は少しずつ進んでは地面に印をつけ、振り返って印が消えていればそれは戻されたということ。
すぐに印の場所を目指し、そこから慎重に印を更新していき、私達はループするその地点を突き止めた。
お母さんは印より先の地点に手や足を伸ばしてみた。
「どうやら空間そのものに入ったら飛ばされる訳じゃなさそうね?足を地面につけたら戻されるのかしら?」
「それなら思いっきりジャンプしてみればいいんじゃない?
ワープする判定を超えられればひょっとすれば上手く行くかもしれない」
我ながら上手い考えだと思った。
「それじゃエルヤにやってもらおうかしら?私はここで見てるわ。戻されたらここまで登ってきなさい」
「えー、お母さんの方が脚力あるんだから突破できる可能性高いよ」
私はまた戻されるの嫌で自分がやるのを拒んだ。
「だからこそよ。私だけが突破出来たんじゃエルヤがリップに会いに行けないじゃない?」
「そっか」
確かにお母さん言ったことは一理ある。でもなんだか丸め込まれたようで良い気はしないな。けど、ここは私がやるしかないか。
私は腹を決めて助走をつけて印の先に思いっきりジャンプした。
「えいっ」
私は着地に失敗してあろうことか硬い地面に尻もちをついてしまった。
着地と同時にお尻に激痛が走った。
「いてて、やっぱり慣れないことはするべきじゃないな」
痛みが収まり振り返るとお母さんの姿はそこにはなかった。つまりは戻されたってこと。
「もう、こんな事だと思ったよ」
私は一人文句を言いながらお母さんの待つ印の場所まで急いで戻って行った。
「駄目だったわね」
お母さんは印の前で私の到着を待っており、どうやら結果が分かっていたかのような口ぶりだった。
「そんな簡単には突破はさせてくれないみたいだね」
私はすぐに次の作戦を考えた。
「ねぇお母さん崖側の縁に捕まって向こうに渡ったらどうだろ?」
「うーん、確かにそれで突破出来るかもしれないけど、命綱なしでそれをやるにはちょっとリスクが高すぎるわ」
お母さんは万が一のことも考え私の案に反対した。
「じゃーお母さんは何かいいアイディアがあるの?」
「お母さんの考えはね、この反り立った斜面をのぼって向こう側に渡ってみてはどうかなって考えてるの」
確かにお母さんのいった通り、これなら万が一手を滑らせても奈落の底に落ちることはない。
私達はロッククライミングの要領で外壁をよじ登っていった。
掴める石はないが、山の壁面なだけあり草びっしり生えており、纏めて掴めば私達の体重を軽く支える事が出来た。
「エルヤ気をつけてよ」
お母さんが先頭をいき私もその後に続いて行った。
10メートル程進んだ先で試しに地面に足をつけてみる。
「これでどうかしら?」
お母さんが半信半疑ながら大地に足をつけた。
けれど周りを見渡しても霧のせいでループしているのか、はたまた先に進めているのか私達には判断のしようがなかった。それを知るには先に進むしか方法はなさそうだ。
「お母さん行こう、先に進まないと突破出来たか分からないよ」
「そうね」
それから山を進んでいくと、霧はどんどん薄くなって行った。
「霧がなくなった。これってうまく行ったってことじゃない?」
私はお母さんの顔を見合わせ喜びからその場で飛び跳ねた。
「そうらしいわね」
「やったねお母さん。ゴールはきっとすぐそこだよ、早くリップ会いに行こう」
ようやく霧地帯を抜け、私の足取りも軽くなった。




