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第14話 恐怖心

 休憩を済ませ登山を再開した私達だったが、一向にリップの住処とおぼしき場所は見えてこない。

 休憩をして体力が戻ったとはいえ、疲労の蓄積から膝や足首が徐々に痛み出しており、このゴールの見えない山登りはなかなか心にくるものがある。

 お母さんは未だに弱音を一切吐く事もなく、涼しい顔をしている。普段私より運動してないはずなのに、お母さんのどこからそんな力が沸き出てくるのか私は不思議で仕方なかった。

 

 そうこうしているとようやく山に変化が現れはじめた。その変化が必ずしも私達にとって嬉しいことだとは限らない。

 ある場所を堺に私達の視界が徐々に白く曇っていったのだ。


 「お母さん急に様子が変わったけど、なんだろ?」

 その正体は霧だ。でも変なことにそれは本当に突然のことだった。雨上がりや曇り空だったわけでもなかったのに、自然現象にしては不自然で私は違和感を覚えた。


 「そうね、なんだか変な感じがする」

 それでもお母さんは足を止めることなく進んでいった。

 私はその場で立ち止まり、先を進んでいくお母さんに声をかけた。


 「お母さん、私なんか嫌な感じがする。もう山を降りようよ」

 得体の知れない霧を前に私の心は急激に不安にさいなまれ、恐怖を感じはじめた。 

 そんな私とは対照的にお母さんは何一つ動じる事なく、私に笑顔で返事をかえした。


 「エルヤ大丈夫よ、何も心配いらないわ。もしかしたらこの現象もリップが引き起こしてることかもしれない」


 その言葉を聞き、お母さんが先に進むつもりなのが分かった。最終決定を決めるのはお母さんだ、子供である私は母親の決定には従わなくちゃいけない。

 私はその決定に従うのが怖くて、恐怖から口から出任せを言って、お母さんが心変わりするのではと考えた。


 「だったらリップは私達を歓迎してないんだよ。お母さんに捨てられてきっと今も怒ってるんだよ」

 本当はこんなこと言いたくないよ。お母さんがリップのことを心から信頼していることを知っているから。その絆を壊すような事を言うのは最低だ。それでも私は今この状況が怖くてどうしようもない。


 お母さんは怯える私に怒ることなく、温かく私を落ちつかせるよう優しく声をかけた。

 「エルヤ、リップは私達家族を恨んだりなんかしてないわ。今でも私達の事を1番に想っててくれてるはず」


 「どうしてそんなことが分かるの?」


 「この山にリップが残ったのは、あなたが危険な目に合わないため、そしてもしもの事があれば、ここからリップがあなたの元に駆けつけてくれる。あなたリップから貰った笛を持ってるでしょ?」


 お母さんに言われ首に掛かった笛に手を掛けた。

 「うん、でもどうしてリップはそこまでして私を?私はリップの顔すら覚えてないのに」

 その問いにお母さんは少し言葉をためてから、私の目を見つめて答えた。


 「あなたが私の最後の子供だから……」


 「最後?」

 私は最後という言葉に違和感を覚えお母さんに聞き直したが、お母さんは早口にすぐ先程の言葉を訂正した。


 「ううん、私の子供だからあなたに幸せになってもらいたいと思っているの。

 だからこの霧は敵対の意思表示じゃない、人が寄り付かないようにリップなりにカモフラージュしてるんだと思うの」

 お母さんがそう思う理由はそれだけじゃなかった。竜の聖域、その時に見た白い空間に通じるものをこの霧からも感じ取ったからだ。


 「リップのことはお母さんが1番知ってるものね。少し先に進むのが怖いけど、お母さんの言葉を信じてみる」

 腹を決めて私はこの恐怖に立ち向かうことにした。

 私の震える強がった表情みて、お母さんがすかさず私の腕を掴んだ。


 「大丈夫一人じゃない、お母さんがすぐ側についてるわ」

 今の私には、その言葉がなにより力強く感じた

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