第7話 月日は流れ
ルーブル村を訪れてから早8年の月日が流れた。
その間に私達が大きな事件に巻き込まれることはなかったが、依然として隠居生活は続き、世間の竜に対する評価は変わらず危険の存在という意見が今でも根強い。ルヴィーさんも調査の手を緩めることなく、その範囲をどんどん広げつつあった。
エルヤも10歳の誕生日を迎えて身長も140cm程に伸び、女の子らしく髪も背中に当たるくらいまで伸ばしはじめた。
私がエルヤくらいの頃は男勝りにショートヘアばかりだったが、エルヤの姿を見ると昔の私のアルバムを見てるかのような不思議な気持ちになった。
それだけエルヤは私に似て育ったのだ。そんなエルヤの成長を目の当たりにしてしまうと、どうしてもハルが生きていてくれたいたらどうだったのだろうと考えてしまって暗い気持ちになってしまう。
この頃になるとエルヤも自分の置かれた立場をしっかり理解出来ていたので、私は一人での外出を許可していた。無論、制限はつき遠くても隣町のリール村までに限るが、リール村には薬屋や朝早くからやってる市場があるのでよくエルヤにお使い任せることがあった。
この日も季節の野菜を買ってきてもらうためにエルヤに買い物を任せていた。
季節は夏に差し掛かろうする6月だった。
「お母さんバーバラさんのお手伝い終わったよ」
エルヤが一階の厨房から帰ってきて私に言った。
「エルヤありがとね、今お茶を出すわ」
午後1時テーブルの椅子に腰掛けるエルヤに紅茶を出してあげた。今では昼食後に皿を下げるのはエルヤの仕事になっている。
料理もバーバラに作ってもらうのではなく、一階の厨房のコンロを1つ借りて私が毎日料理を作っている。
宿屋が忙しくなる週末時はバーバラさんに代わり私がお客さんの料理を担当することもあり、その時が唯一の私達の収入源となっている。それでも宿費は掛らないので二人分の食費だけならなんとかまかなえた。
エルヤと紅茶を飲みながら他愛もなく話していると、今日は宿屋が忙しかったらしくバーバラさんに皿洗いをお願いされたそうだ。
そしてエルヤはお小遣いに500ミラの硬貨1枚を貰ってみたいで、嬉しそうに私に話してくれた。
「エルヤ良かったわね。お母さんもエルヤにお願いしたい事があるの。リールの村で買い物お願いできるかしら?」
私がそう言うとエルヤは目を輝かせながら言った。
「勿論、外の空気も吸いたいし良い運動になるわ」
「そう言って貰えると嬉しいわ、季節の野菜と夕食の魚を買ってきてちょうだい」
「分かった」
「それじゃお金と……あとこれね」
私はエルヤに2000ミラと肩に掛けられる樹脂で編み込まれたカゴをエルヤに手渡した。勿論底に穴なんてあいてないものよ。
エルヤはカゴを受け取ったはいいものの、頭の中でハテナが浮かび上がらせ、これを何に使うものなのか検討もつかなかった。
「これ何に使うの?」
「道中になってる山菜を採ってきてちょうだい」
自分でその言葉を言って、私も子供を持つ母親になったんだなぁと改めて実感した。
「へー楽しそう」
エルヤの目はより一層輝き、飛び跳ねて喜ぶもんだから、あの頃の自分の反応とそっくりでついつい笑ってしまった。
「自分が分かるものだけ持ってくるのよ、キノコは見分けが難しいから採ってこなくていいわ」
「分かった」
そう言ってエルヤは玄関に向かって走り出し、扉に手を掛けようとしてので、私はすかさずその背中に注意をした。
「エルヤそんな格好で外に出るつもり?」
エルヤは私に言われようやく気付いたようで、振り返って戻ってきた。
「ごめんなさい、忘れてた」
エルヤは家にいるときだけは、明るめの色の服、赤やオレンジ、黄色などを好んで着ており、今日は赤のワンピースを着ていた。
タンスの前で着替え、外出用の紺のワンピースを身にまとい、私の前でフードを深々と被った。
「お母さんこれで大丈夫でしょ?」
「うん、それじゃ気をつけて行ってらっしゃい」
エルヤを軽く抱きしめて、私は宿屋を出るエルヤを見送った。
月日が流れエルヤが成長した姿で登場しました。以降はエルヤが中心に物語が進むことになります。
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