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第6話 増えていく手紙

 それから一週間は安全のため、私達は外には出ずに部屋だけでの生活を続けていた。

 外の情報は部屋にあったラジオを使って知る事が出来た。

 ユーレン大陸南ロードス地区の放送を受信して、トルーカの情報を知ろうとしたがやはりトルーカ村は跡形もなく焼け焦げてしまった様子で、生存者はごく僅かで証言者によると白い竜が火の柱を次々と吐き出して壊滅に至ったとのこと。

 ロードス地区は軍事力を持たないため、竜討伐には動かないと表明。住民にも竜を目撃しても刺激を与えないよう呼び掛けている。 

 このニュースはどこのチャンネルを受信しても、竜を討伐すべきだという意見が強まっている。特に私の地元、南東のアルカヘルム地区では王都バルセルラにてルヴィーさんが軍に復帰し、竜討伐に名乗りを上げたことが分かった。

 ロードス地区も調査を依頼し現在調査中。自分がその張本人くせに白々しい限りだ。

 ユーレン大陸北部は中央地区レムルズの管轄なのでレム王都がバルセルラ軍隊の進行を許すとは思えないので、その点は少し安心かな。

 でも単身なら特に規制がかけられている訳じゃないので気を付ける必要はある。


 昼時になりバーバラさんが持って来た食事を食べ終えるとエルヤが私に言った。

 「ママ、私外で遊びたいよ」


 「そうね……」

 しばし私が考えこんでいると、ノックと共に玄関の扉が開きバーバラさんが食後の皿を下げにやってきた。


 「ご飯ご馳走さまでした」

 私が頭を下げてバーバラさんにお礼すると、エルヤも見様見真似で遅れて頭を下げた。


 「はいはい、あんたらは綺麗さっぱり食べてくれるから作ってる方として気持ちいいよ」

 バーバラさんが皿を重ねて専用のカゴの中でしまいながら言った。


 「バーバラさんの料理美味しいもん」

 エルヤもすっかりバーバラさん慣れた様子で緊張して固まることもなくなった。


 「そう言ってもらえると作り甲斐があるよ。エルヤちゃんはお子様用だけど量が少なかったりしないかい?」


 「大丈夫だよ」


 「そうかい、なら良かったよ」

 バーバラさんが私に視線を移すと悩んでるの察知にして私に声をかけた。


 「アサ考えこんでどうしたんだい?」


 「エルヤが外で遊びたいっていうのよ」


 「ルーブルの近場で遊ぶ分には良いんじゃないかい?そのルヴィーって奴も今は南地区にいるんだろ?」


 「そうなんだけど、それでも変装するべきだと思うし、二人して顔を隠してたらそれこそ怪しまされそうで」

 私が困った顔でいうとそれを見兼ねたバーバラさんが私に言った。


 「仕方ないねー、だったら私がエルヤちゃんについてってあげるよ」


 「本当に助かるわ」


 「エルヤちゃんはどこに行きたいんだ?」


 エルヤは少し悩んだがすぐに「公園」と元気な声で言った。


 「そっかじゃエルヤちゃんが準備出来たらおばちゃんと行こっか?」


 「うん」


 「アサ、私は皿洗いをすませてまた来るから、それまでにエルヤちゃんを着替えさせな」

 そう言うとバーバラさんは部屋を後にしてキッチンの洗い場に向かった。


 私はタンスから、ここに来てからバーバラさんに買ってきたもらったエルヤの子供服を取り出した。

 紺色長袖のフード付きワンピースだ。

もっと明るい子供らしい服を着せてあげたいが、今は仕方ない。


 「エルヤばんざいして」

 エルヤが手をピンと頭上に伸ばし、私はエルヤの寝巻きを脱がせて、紺のワンピースを着させてあげた。


 「ママこの服変な匂いがするよ」


 「新品だからそういうものよ。エルヤ外に出る時はフードをしっかり被るのよ」


 「どうして?」


 「外には良い人ばかりじゃないの、怖い人も沢山いる。だから守れるわね」


 「分かったママ」


 程なくしてバーバラさんが部屋に戻ってきた。


 「それじゃママ行ってくるね」

 手を振るエルヤに私も手を振り「いってらっしゃい」っと笑顔で送り出した。

 

 私もいつもの着慣れた赤いワンピースを脱ぎ捨て、フード付きの黒のワンピースに着替えた。

 これからはこれが私の私服になる。隠れてここでひっそりとエルヤと暮らしていくんだ。


 私は部屋の中央にある丸テーブルの椅子に腰掛けると、バッグから便箋を取り出し、誰宛に届ける訳でもない手紙を書きはじめた。


 あなたは今どこにいますか?


 手が震えてそれ以上は書くことが出来ずその手紙は引き出しの中へしまった。


 エルヤはその頃バーバラさんと一緒に公園を目指していたが、道中にあったお花畑夢中になってしまい結局今日は公園には行かなかった。


 一時間程してエリヤが帰ってくると外での出来事を嬉しいそうに私に報告した。

 そしてこの日を堺に午後1時はエルヤにとってお出かけの時間になった。お花畑に行くことがほとんどだが、時には虫を捕まえてきたりとエルヤはすくすくと成長していった。

 エルヤが外出する度に私は誰かへの手紙を書こうとするが、一文だけの手紙だけが引き出しに増えていく一方だった。

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