第2話 怯える来訪者
私が調理を進める中カイトは二人の子供をあやしていた。
ハルの反応は良かったが、エルヤはお母さんの私の方が好きで、顔をカイトから背けた。
「エルヤ、お父さんは悲しいぞ」
カイトは嫌がるエルヤをお構いなしに顔を近付け、エルヤのほっぺに顔を擦りつけるとエルヤはたちまち大きな声で泣き出してしまった。
「カイトったらエルヤをいじめないの」
私がキッチンから魚のムニエルを持ってきた。
「いじめてなんかいないよ。愛情表現の一種さ」
「エルヤ、怖かったわね。もうご飯できたからお母さんがついてるから大丈夫よ」
私がエルヤの頭を優しく撫でるとエルヤは泣き止み、顔を微笑ませた。それが納得出来なかったみたいでカイトは顔をしかめた。
「カイト先に二人と一緒にご飯食べててくれる?私リップにご飯を持っていくから」
「分かった」
私は魚の入ったボックスを片手に玄関の扉を開き外に出てきた。
「リップ起きてる?」
リップに声を掛けると暗闇から長い首を近付けその姿を現した。
「起きてるよ。お腹が空いて寝ようにも寝れないよ」
リップも今ではすっかり人の言葉を話すようになった。リップの身体は大きくなりすぎて今さ玄関の扉を潜ることも出来なくなってしまった。
だからこうして外にリップ専用の大きな小屋を作ってあげて、リップはここで暮らしている。リップは暑さにも寒さにも強いから、冬に雪が降ろうが全然平気なのだそうだ。
「今日はカイトが魚を沢山持ってきてくれたから大量よ」
ボックスを逆さにして魚を地面に出すと新鮮な魚達はまだ生きており、その場で飛び跳ねた。
「後でカイトに礼を言わないとね」
そう言うとリップは魚を一飲みでどんどんたいらげていった。
すると村の広場のほうから人の叫びのようなものが聞えてきた。
「何かしら?」
私が広場に行こうとするとリップがすかさず止めに入った。
「アサ待って僕も一緒にいく。なにやら同族の匂いがする」
「また竜が現れたというの?でもさっきのは人の声だったけど」
「とにかく僕の背中に乗って」
「分かったわ」
私はリップの背中に乗り、リップは飛ぶ事なくそのまま猛スピードで走りだした。
「どうしたの何事?」
広場につくと二人の警備員が暴れる人を必死に抑えつけていた。
しかしその人の力は強く二人がかりでもまるで抑えきれてなかった。
「こいつが夜中に騒いでるもんだから、止めさせようしたら暴れるもんでよ」
暴れる人の顔をようく見てみると髪は白色で瞳の色は蒼色、それはまさしくルヴィーさんだった。
「あなたルヴィーさん?」
「アサさんこの人知り合いなんですか?」
警備員が身体を揺らしながらも言った。
「昔にね、ルヴィーさん私が分かるアサよ」
私は暴れるルヴィーさんの身体を揺すりながら必死に問いかけた。
「アサ?アサ助けて」
するとルヴィーさんの様子が変わり、子供のように私を抱きしめると、酷く怯えた様子で身体を震わせていた。
「この人は私が預かります」
「分かりました。アサさんお気をつけて」
警備員の人と別れを告げて私はルヴィーさんを連れて家に戻ることにした。
「ありがとう、行きましょリップ」
出来るだけ振動を与えないよう帰りはリップにゆっくり歩いてもらった。
もう一度ルヴィーさんの瞳を覗き込んだがやっぱり綺麗な蒼色だ。前に会った時はアザエルさんだったけど、ルヴィーさんは本来の自分に戻ることが出来たんだろうか。
「ルヴィーさん私のこと覚えてますか?」
「うーアサ、アサ、アサ」
ルヴィーさんはうなだれるように私の名前を繰り返すだけで、とても話せる状況ではなかった。一体ルヴィーさんに何があったんだろう。
これがアサの最終章になります。ブックマーク、感想、評価頂けると執筆の励みになりますのでよろしくお願いします(^^)




