第39話 アイリス
「アルバさんアイリス見つかりましたよ」
アルバさんの洞穴に戻り、私はいの一番にアルバさんにアイリスの入った結晶を見えた。
「お嬢ちゃんこれはただの氷でないでないかい?」
アルバさんは首を傾げてそれを氷の塊としか認識していなかった。
「アルバさんよく中を見てください」
カイトがアルバさんに言った。
そうしてアルバさんが氷の中をじっと見つめると、ようやくアイリスの花がアルバさんにも見えてきた。
「ほほうこれは凄いもんじゃな」
「アルバさんの言った通り、アイリスは化石として今もこの地に残っていましたよ」
あの時アルバさんが言った化石の言葉から、カイトはアイリスを結びつける事が出来た。
「良かったなお前さん達。それでもうここを出るのか?」
私達の顔を見てアルバさんにはもう別れが近いことが分かっていた。
久々に人に会えて嬉しかった反面、セットで別れが来ることも分かってただけに、アルバさんはどうも手放しには喜べなかった。
しかしアルバさんもその時がこんなにも早く訪れるとは思っても見なかった。
「はい、そのつもりです。アルバさんはずっとここで暮らすおつもりですか?」
私は少しアルバさんの事が気掛かりになり聞いてみた。
「今までもずっとそうしてきたように、これからもそうするつもりでいるがーー」
「気が変わったらそのうちにグレースの村が来てみるつもりはないですか?
花に埋め尽くされた村でアルバさんもびっくりするかと思いますよ」
私に言われアルバさんは少し考え込んだ末に「その時はそちらの竜さんの背中に乗せてもらうことは出来ないだろうかね?」っとぎこちなく照れくさそうに言った。
どうやらアルバさんは竜の背中に一度乗って空を飛んでみたかったようだ。
「ええ勿論いいですよ。アイリスを取りに何度か訪れることもあるでしょうし」
「そうかその時は頼むよ」
その言葉を受けてかアルバさんは何だか嬉しそうだった。
「それじゃ私達は村に戻ります」
私達がアルバさんに背中を向けるとアルバさんは思い出したかのように、私達を引き止めた。
「ちょっと待った、お前ら名前は?」
そういえばまだ名前もおじさんに伝えてなかった。それが可笑しくて3人でその場で大笑いしてしまった。
アルバさんに私の名前とカイト、そしてリップの名前も教えて、私達はお世話になったアルバさんに別れを告げて、日が暮れる前にグレース村にむけて飛び立った。
無事にグレース村にアイリスの結晶を持ち帰り、それが後に正式にアイリスであることが分かった。
長い間冷凍されていたために本来期待されていたアイリスの組織が痛み、薬としての効能は期待出来なかったが、あの山で見つけたアイリスの群生の中には種を持った個体もおり、そちらの種子は解凍後にグレースの土で芽を開かせることに成功した。
それからというものグレースでは大掛かりなアイリス栽培のプロジェクトがはじまり、当初色とりどりの花が咲いていたグレース村は今では一面蒼いアイリスで咲き乱れる村になり、その噂は瞬く間に広がり、いつしかその村はグレースからアイリスと呼ばれる村になっていた。
蔓延っていた病気もアイリスの特効薬によって、みな回復に向かっていった。
そしてメイちゃんの夢でもあったおばさんの脚もリハビリの末、一人で歩けるまでに回復し、アイリスの花道をメイちゃんと一緒に歩く夢を叶える事が出来た。
私はこんな素晴らしく感動的な瞬間に立ち会えた事を嬉しく思った。
そして……ある快晴の朝、私は1つ決断をした。
この日私はカイトとリップと共に村長の家を訪ねていた。そこでみんなに今の私の気持ち打ち明けた。
「私このアイリスの村が大好きです。みんなのことも。だからこの村を旅の拠点にしたいと考えています。みなさんどうでしょうか?」
「アサさん勿論歓迎しますよ」
セドリック村長は満面の笑みで私にこたえてくれた。メイちゃん、メイちゃんの両親、ニベラおばさんも表情もとても温かいもので私を歓迎してるようだった。
「メイ、アサ姉もカイト兄もリップのことも大大大好きだよ」
メイちゃんが私に抱きつき私に愛情を表現をしてくれた。
そしてニベラおばさんも私への溢れる想いを口にした。
「アサさん本当にありがとうございました。まさかこの年で夢を叶えられる日が本当にくるとは思っても見ませんでした。アイリスはいつでもあなた方を歓迎致します。だから心置きなく旅に出掛けてらっしゃい」
「はい、ありがとうございます」
私はみんなが受けた入れてくれた嬉しさから目から涙が溢れ出してしまった。




