第1話 はじまりの朝
私の住む地域は、自然が多く(悪く言えば田舎)生きてく上で不便な事も多くある。
電気は通っていてもガスは通ってないし、その電気だって水車小屋で蓄えられたエネルギーを使っているものだからそもそも水辺がないと成立しない。
電話機はあるにはあるが、携帯電話なんていう大層便利な物はなく、共用品の備え式が村に一台あればいいほう。
更に上の贅沢品の車なんて物はもっての他で、この時代ではみな車体を馬で引く馬車が主流となっている。主流といっても馬車を所有できるのは、セレブな富豪くらいなもので、庶民が遠出を強いられる際は馬車の運び屋を利用するのが一般的だろう。
私はユーレン大陸南東に位置するアルカヘルム地区に分類される辺境の村、エルモ村に住んでいる。
この地では古くから伝わる伝承があり、幻の存在といわれる竜が実在するとまことしやかに信じられてきた。
私も小さい時そう教えられたような気がする。
それは私がまだ17だった頃、春を迎えたばかりのとある朝の日だった。
「ねぇお父さんアサは?」
朝日が差し込むキッチンで、お母さんがスープを煮立てて、朝食の支度をしている。お母さんはスープを味見しながら横目にお父さんに尋ねた。
「またいつもの場所じゃないのか?」
お父さんはというと、いつものようにリビングのテーブルの椅子に腰掛け、なにやら気難しい面持ちで新聞を広げている。
「じゃ、呼んでできてくれませんか?もうじきご飯の用意が済みますから」
お母さんの言葉にお父さんは新聞を下げて顔を覗かせるといかにも嫌そうな顔をした。
「俺がか?」
「私は今手が離せないんですよ」
そんなお父さんの態度に『そんなことも分からないの』と嫌味たっぷりに一言一句強調してお母さんが言った。
「俺だって今新聞を読みはじめたばかりなんだ。せめてこの記事だけでも読んでからにしてくれ」
自信なさげにボソボソといい、お父さんはお母さんの視線から逃れるように新聞で顔を覆って隠れてしまった。
お父さんのこれまた煮え切らない態度に、お母さんは呆れ返り早々にさじを投げた。
「じゃ私が行ってきますから、火だけは見てて下さいよ」
「あー分かった」
「ふぅーん」
お母さんは不満たっぷりにお父さんにも聞こえるように大きな溜め息をついた。
いつもの場所そこは私が毎朝行く特別な場所、村の小高い丘。ここでみた朝日の感動が今でも忘れられずに、気付くと足を運んでしまう。それともう一つーー
私は木にハシゴを掛け群がる小鳥にエサを与えていた。巣から親鳥が帰ってこなくなり、私が子供達に毎日エサを持ってきてあげてるのだ。
「アサ今日もここにいたのね」
「お母さん!」
私は大きく振り返った。
「もうじき朝ご飯できるわよ、一緒に帰りましょ」
「うん分かった」
颯爽とハシゴを降りお母さんのもとへ駆け寄った。私はお母さんに会うなり、伝えたいことが溢れるように出てきた。
「お母さん、小鳥さんこんなにおっきくなったのよ。それにあそこから見える朝日が最高なの」
「はいはい、その続きは食事の時にしましょう」
興奮する私を尻目に、お母さんはいつものように私を上手にあしらって、あっという間に家につれ戻されてしまった。
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○ワイハム(作者)雑談コーナー
ワイルドハムスターです。祝1話目ですが特に中身のある話じゃなかったですね汗。母ちゃんスープ煮込んで、父ちゃん新聞広げ、娘脱走ですからねw
次回ではそれなりに内容あるものになってるかと思います。ここでは物語の区切りのいい所で雑談やキャラ紹介できたらと思います。
それではそれでは〜(๑¯◡¯๑)