5.コロポックル
雪山。。。
こんなに寒いとは。。。
いや、天具ロギットがある以上寒いと感じる事はないし、凍死する事はないだろう。
ただ目に見える風景が寒い。
一面雪で、山々に覆われている。
アックルと言う街に飛ばされた筈だが、街的なものはない。
いくら寒さを感じないとはいえ、限界があるだろう。
どうしたら良いのか。。。
「あんの〜。。。」
ん?誰かに呼ばれた気がする。
しかし目に見える範囲に人はいない。
「あんの〜。下におりますです。。。」
ん??下???
僕は自分の足元に目をやった。
小人だろうか??小さな小人が膝下にいた。
僕は屈んで目線を落とし、妖精を見た。
小人か……いや、これは……。
「君は、コロポックルか??」
「はい〜。そんです〜。アックルに住むコロポックルです〜。」
おお!!助かった。アックルはコロポックル達の街だったのか。ックルという部分は同じだし、間違いはないだろう。
当たり前だが、コロポックルは初めて見た。想像してたよりも可愛い。手のひらサイズよりちょっと大きい、そんな感じのサイズ感だ。凄い精巧なフィギュアを見る感じだ。
「人間さんは珍しいんで〜、声かけて見たんです〜。なにをしてんですかー??」
「ああ。アックルに行こうと思って。」
「はぁー。アックルさ、くんですかー?なしてですかー???」
何故か??しまった、理由は考えていなかった。
そういやこの世界の常識も知らない上、力関係もわからない。人間とコロポックルが仲良いのかもわからない。
「いや、実は僕は旅をしていてね。アックルという街がこの辺にあるって聞いて。コロポックル達のことは知らなかったんだけど来てみたんだ。」
「あー。そですかー。わかりましたー。」
何とかなったようだ。とりあえず人間として嫌われてはいない模様だ。
「ほんならー、あたすが案内さしましょうねー。」
「いいのか?助かるよ。」
「はいー。こっちですー。」
そういうとコロポックルは雪の間をズンズン進み出した。
雪に埋まってしまうのではと思ったが、コロポックルの周りに白いオーラが雪を溶かして道を作って歩いて行った。雪を溶かすという表現ではなく、コロポックルの周りの雪が一瞬消えているようだ。そして通ったあとへ普通に雪が残っていた。
僕はスキル可視化でコロポックルを見てみた。
名前:トゥトゥル・トゥリー・トゥトゥ
種族:コロポックル(妖精)
スキル:雪の妖精 (エスキル) 記憶力↑↑ (エスキル)
無警戒 (ウィキル)
【雪の妖精】
雪を自在に操ることができる。水を雪に変えることも可能。12時間以上雪から離れると死んでしまう。
【記憶力↑↑】
一度得た情報を忘れることはほぼない。常人の400倍の記憶力。
【無警戒】
警戒心がない。騙されやすい。
凄い能力のコロポックルと出会ってしまった。スキル雪の妖精はコロポックル特有なのかもしれない。それにしても記憶力のレベルがすごい。世界の全てを知るならこのくらいの記憶力が必要なのかもしれない。
しかしながら名前がすごい。
「トゥトゥトゥトゥー???」
つい口に出してしまった。
「あんれー??あたす、まだ名乗って無かったのんに、何で人間さん名前知とるのー??」
コロポックルが驚いたように聞いてくる。
しまった。このトゥトゥというコロポックルは無警戒だが記憶力が異常だ。この場合の正攻法は……。
「申し訳ない。僕のスキルで、君の情報を見させてもらったんだ。勝手にごめんな。」
正直に言うの一択だ!!
「ほんえー??人間さん、すんげぇースキル持っとるんねー。そんなこと出来んのねー。」
「ああ。でも勝手に見たのは悪かったよ。」
「いんやー。驚いたけんどー、分かったらいんだよー。」
セーフ!!無警戒で助かった。こーゆー純真無垢な相手には素直さで向き合う。これが鉄則だ。
「あ、人間さん。そういや、名前なんてんだー??」
名前か。。。早見翔のままでもいいが、異世界にきたんだし、いっそ変えるか。ただ母親がつけてくれたこの翔は気に入っている。そうだな。。。
「僕はショウ。ショウ・ロック・ホームズだ。ショウって呼んでくれ。」
「ほぇー。ショウさんですかー。わかりましたー。あたすもトゥトゥって呼んでくだせぇー。」
この世界の闇を暴きにきたんだ。かの有名な探偵の名前を拝借することにした。ただ名乗ってしまったあとでちょっとカッコ悪いのかなとも思った。まぁ仕方ない事だろう。
およそ10分ほど歩いただろうか。
岩と岩の間に小さな穴があった。だいたい1mあるかないかの高さの穴で、人間には見つけることも難しそうだった。トゥトゥが振り返り僕に言った。
「ここですー。ここがアックルの入り口ですぅー。」
「ここか。。。いやでも、俺は入れないな。。。」
穴が小さすぎて入ることは不可能だ。やっと着いたのに。
「あー。大丈夫ですー。人間さんはこのバンダナを巻いたらコロポックルになれますんでー。」
トゥトゥが僕にバンダナを手渡してきた。シンプルなデザインだが、雪の模様がポイントになっていてオシャレだ。もう異世界に来たんだ、戸惑うことはない。僕はバンダナを頭に巻いた。
すると僕の姿がコロポックルと同じサイズになった。こんなことができるなんて!!異世界は夢と魔法に満ちているなと実感した。
「ほんならー、案内しますだー。」
「ありがとう。トゥトゥ」
「いやいやー。」
僕はトゥトゥに連れられてアックルへ向かった。
同じ背丈になって見るトゥトゥは美少女で、凄くドキドキした。