4.旅立ち
「僕のスキルは何ですか?」
大事なのは他人よりもまず自分だ。僕のことを教えてほしい。
「ん??あぁ。ちょっと待って、スキルルーペで見てみるわ。」
と言うと天使サリエルは大きな虫眼鏡を取り出した。
虫眼鏡でわかるのか・・・。それを持ち、ぼくの額を凝視した。
「えっとね・・・。早見君のスキルはね・・・、エスキルが【審判】と【可視化】で、ウィキルが【灯台下暗し】だね」
【審判】
事件を審理し判決・判断すること。その結果は常に正しい。
【可視化】
全てを見ることが可能。他人のステータスやステータス、物質などの成分が分かる。
【灯台下暗し】
自分に関わるごく身近なことにうとい。
・・・異世界感が全くない。魔法は使えないだろうと思っていたが、ここまでとは・・・。
「あの~これはサリエル様的にどうなんでしょうか?」
「かなりレアだと思うよ!!」
まず【可視化】だが、異世界<プライム>において、自分のステータスやスキルは確認することが可能だが、他人のスキルを見ることは基本的にはできないらしい。
その時点でレアスキルと言っていい。サリエルのスキルルーペも不要だ。
【審判】は現時点では未知数だが、今回のミッションでは役に立ちそうだ。
またサリエル曰く、ウィキル自体も大きく影響するようなレベルのものではないらしい。
「うーんとね、例えば家の鍵とか財布なくしがちだったり、ちょっとした段差につまづきやすかったりしそうだね・・・。」
言いたくないが、異世界にこれから行こうとしている中ではかなりしょぼい。
しかし向こうの世界での生活で、気を付けなければいけないことが多そうだ。
財布など異世界に行ったら交番などなさそうだ。
・・・にしても不満だ。いや不満ではないが、異世界感がない。
こんなスキルで異世界を満喫・・・もとい平和に導くことが出来るのか??
「もういいかな?・・・ん?なんで早見君落ち込んでるの???」
訝しげにサリエルが訪ねてくる。
「すいません。なんかスキルに納得が・・・。」
「レアスキルなのに納得してないなんて!!!はぁ・・・分かった。じゃあ特別に一つスキルつけてあげるよ。」
「え!?いいんですか??」
「1個だけね。どんなのがいいの??」
どんなスキルがいいだろうか・・・。
魔法や剣術が使えても一人で世の中を正しい方向へ導くのは難しい。。。
時空魔法や空間魔法は便利そうだがリスクもありそうだ。
となれば・・・。
「えっとですね・・・、優秀な仲間が欲しいんですけど、それを叶えるスキルないでしょうか?」
「仲間か・・・。自分にプラスするんじゃないんだね。面白い。じゃあこれなんかどう??」
サリエルは僕の額に手のひらを押し当て眩い光を放った。
何かが体の中にすっと入り込んでくる。
そんな感じだった。
「よし、大丈夫。追加スキルはね、【雇用主】にしたよ。」
【雇用主】
自分が望んだ相手を雇用し仲間にしやすい。相手との同意が必要。
同意する際は雇用条件を一つ必ず作る。雇用条件が解除されない限り、関係が途切れることはない。
「雇用って言っても、別にお金だけじゃなくて、信頼関係とか目的の共有でも大丈夫だから。雇用主って名前だけど、パーティーのリーダーって思ってよ!」
「あ、ありがとうございます。」
これはいいスキルかもしれない。
誰でも、何が何でも仲間にしていたら、仲間割れや反乱がおきてもおかしくはない。
この条件下ではそういった問題は気にしなくていい。
僕は優秀な仲間を集め、異世界<プライム>を立て直した後、天国へ行くんだ!!!!
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旅立ちの時はきた。
「次の異世界では後悔しないように、自分が正しいと思ったことを頑張りなさい。」
「はい。サリエル様。」
「あとせっかくだから、異世界祝いにこれをあげよう。」
サリエルは青いロングコートを手渡してきた。
「これは全天候対応型ジャケット、ロギット。防寒・耐熱両方兼ね備えていて、どこでも大丈夫。天具という天使のグッズだから、神具の次くらいに優秀なものだよ。」
「すごい!!大切にします!!!」
「といってもステータスは大したことないから、死なない様に気を付けて。成長すればステータスも向上するから。」
「わかりました!」
危ない。テンションが上がって、大切なことが抜けていた。僕はあくまでも特になにもしてこなかった19歳の肉体はそのままで異世界に行くんだ。
早速ウィキル【灯台下暗し】が発動しているようだ。気を付けよう。
「よーし。そんじゃ異世界<プライム>へ出発だー。最初の街は・・・早見君、自分で決めな。」
サリエルが5枚のカードを僕に出してきた。
アックル・カートレイ・サバァー・タムリル・ナナリリア・・・。
街の名前だと思うが、何がどう違うのか全く分からない。
うーん。まぁでも悩んでも仕方ない。あいうえお順に並んでいるなら、アックルを選ぼう。
僕はアックルのカードを手に取った。
「おぉ!!アックルに行くとは!!これまた面白い!!!さっきまで早く行けよってめんどくさがってたけど、早見君おもしろいね!!」
「ど、どうも。」
「そりゃチャプター4までこの生死の狭間にいるなんて思わなかったもんなー。」
「・・・・・・。」
途中何を言っているかわからなかったが、とりあえず旅立ちの時は来たようだ。
「じゃあ早見君、名残惜しいが頑張ってね。たまにはこっちからも呼び掛けるからね。」
「はい。わかりました。お元気で。」
僕はサリエル・・・、いやここまでしたもらったのだ。サリエル様と握手をした。
「では異世界<プライム>アックルへ。早見翔、転送。」
僕は一瞬にして狭間から消えた。
「ふぅ・・・。やっと寝るわ・・・。あ、1個伝え忘れた。向こうで死んだら天国にも地獄にも行けなくなっちゃうんだった。。。・・・・ま、いっか!」
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本当に瞬間移動の様に目の前がガラッと変わった。
目の前は、一面の銀世界・・・。雪山だ。
えっ!?いきなり最初が雪山ですか!!!???