2.最適任者
「え!?異世界ですか???」
「うん、そうだよ。」
急な話の展開についていけない。というか、異世界があるなんて漫画や小説でしか読んだことが無い。
「めんどくさいからだいぶ端折って説明するけど、異世界にいって混乱してる世の中を一つにまとめてほしいんだよね。」
「えっと、僕にできますかね??」
「うーん、多分無理だと思うけど。」
「・・・・・。」
なんだこの謎会話は。サリエルはいったい何を言っているのだ。
出来もしないことを依頼するとは、いったいどういうことなんだ。
「正直君には荷が重いけどさ。他にこの狭間に来る人もいないし、早見君も行くところないし。だからもうさ、そうするしかないなっていう。まぁ消去法だよね。」
消去法。
人がいないから、やるひとがいないから、くじびきの結果等々なし崩し的に決まらざるを得ない方法だ。
僕自身もその流れで決まったことは過去にもある。
それは図書委員とテニス部の副部長だ。
その二つと異世界を救う担い手が同列なわけがない。
無理だ。無理すぎる。。。
「すいません。そんな異世界に行って魔王倒して平和にとか、無理ですよ・・・。」
「ん??魔王は倒さなくてもいいよ??ってか戦う必要は必ずしもないんじゃないかな?」
「どういうことですか??」
さすがに僕も小説などで異世界にいって魔法だなんだで魔王を倒して平和にというストーリーは読んできた。
その流れで聞いたが、どうやら違うらしい。
「ちゃんと説明するよ・・・。はぁ・・・。(めんどくさい)」
おい、めんどくさいは聞こえたぞ。
まぁぼんやりしていて死んでしまった僕に、抗議する権限はないだろうからここはスルーすることにしよう。
サリエルが話すにはこういうことらしい。
僕が飛ばされる異世界の名はプライムという惑星で、環境的には地球と大差がないらしい。
。
サイズは地球よりもだいぶ小さく、大陸で言えば地球のアジア大陸と同サイズとのこと。
文化レベルは地球よりだいぶ遅れており、陸路・水路はあるが電気などはまだ発明されていない。
人間以外にも魔族や獣族など、地球上に存在しない種族が多くいるが、種族毎に覇権争いを行っているわけではない模様。
一見すると平和に暮らしているように見えるのだが・・・。
「でもさ、地球でも一緒じゃない?そういう時にさ、よからぬことを考える奴もいるわけよ。」
なるほど。会社や議会などに起こる派閥争いは絶えない。その中で起こる権力誇示やそこにかかるハラスメントなど見るに堪えないものも多い。
「それで、そのよからぬ力が増えて来てさ。これからやばくなりそうなわけ。そこで早見君にはプライムに行って、そういった奴らを排除してきてほしいわけ」
「なんとなく理解しましたが・・・。でも、まずは誰が悪いかを見極めないといけないですよね??」
「おぉ!!するどい!!その通りだよ!!!」
最悪だ。。。
ゲームでも小説でも、戦うべき悪は分かり切っているケースがほとんどだ。
今回は誰が敵で誰が味方かは分からない。。。
魔族の王、魔王だって敵なのか味方なのかもわからないし、人間の国王もどっちなのか・・・。
「どうやって見極めれば・・・。」
「う~ん。でもそれは君が一番得意なことなんじゃないかい??」サリエルが言う。
「今まで何をやっても50:50で中間位置にいた君は、だれからも公平な立場で話が聞けるんじゃないかな?そこから君の思う様に動けばいいよ」
「な、なるほど・・・。」
「その一点だけでは君は今回の最適任者だと言えるよ!!」
最適任者。。。
今までそんな形で誰かに頼られたことはなかった。
なんだろう・・・、この感情は・・・。
サリエルの気持ちに応えたいという思いが強くなってきた。
それがこんな2mを超えるけだるそうな大男が相手だとしても。
僕は高まる感情を保ちながらサリエルに伝えた。
「わかりました。やってみます。」
「うん。てか他に選択肢無いから、断るとかそもそも無理なんだけどね。」
「・・・・・。」
僕は一瞬でサリエルが嫌いになった。