ダークウルフの群れ、街の脅威
「ウルフの群れ?」
「元来、ウルフは群れを持たず散々と放浪している種族だ。それ故に班を作り、適性に対処すれば職業持ちが居ない班でも問題なく狩猟出来ていたんだ。」
クレストが表情を暗くし、本題に入る。
「ここ最近ウルフが群れを成し、この街の周囲を彷徨いているんだ。」
魔物の専門家や歴史上の書物でも、ウルフが群れを成しているのはあり得ない姿だという。
さらに
「職業持ちで形成された班で、何とか群れの討伐は対処出来ていた。しかし、ウルフの個体の中から進化で上位種族のダークウルフになるものが現れた。」
「ダークウルフ?」
「個体の中から1体が進化を遂げた途端、周囲の群れを成しているウルフ全員が、ダークウルフに進化したのだ。」
異世界系の話は、俺も疎いわけではない。
退屈な毎日の中で、俺の暇を繋いでくれる楽しみの1つに異世界系の小説を読むことであった。
それでも
「個体全員の進化なんて、あり得るのか?」
「我々は聞いたこともない状況変化の連続に対抗する術なく、この街から出られなくなってしまったんだ。幸いハーミッドの外壁は分厚く高い設計になっているため、街内に侵入してくることはまずない。」
鎖国状態が続いているんだ。たかだか予言のために危険を犯し、俺の出現先まで30人の護衛団体制で来ていた状況が、ここに来て理解出来た。
「俺の職業頼り、ということか。」
「察しが早く助かる。そういうことだ。状況改善には、君の持つ職業が必要不可欠なんだ。」
「勇者や剣聖は?ここにはいないのか?」
「勇者は既にこの世には居ない。伝説は、遥か昔の話だ。剣聖は既にこの街を出て、4年となる。」
ふむ。益々状況が読めてきた。
ウルフ種族の突然変異により、街の機能が停滞。
対抗出来る戦力がなく、予言の俺を頼りに来界を待ったと。
さて、救ってやろうか。