月島光司、28歳
給料日まで残り3日。
手持ちのお金は1,800円。
楽勝だ。節約術を駆使し続けた10年間。高校卒業からここまで、俺はずっと続けてきた。
就職ならいつかしてやる。慌てるときではない。
今は目の前の生活を何とかすることに全集中を預ける。
俺の名前は月島光司。28歳のフリーターだ。
俺1人が及ぼす影響なんて、たかが知れてる。
選挙を見ればよく分かる。
1人の票が起こす奇跡なんて想像してはいけない。
大事なのは、投票する事実なんかよりも結果だ。
俺が投票しようがしまいが、今日日1票差で勝ち負けが決まるだなんてことはあり得ない。
それならばいっそ、傍観しつつ決まった政策にぶつくさ文句垂れている方が些か楽だ。
政策だって、俺1人が嫌だといったところで何か変わるわけではない。
ましてや、その政策が今までと遥かに変わるかというと、これまたそういうわけでもない。
従っておけばそれなりの生活は成り立つし、野垂れ死ぬこともない。
つまりは平和だ。つまらないとすら思える平和加減だ。
平和からの脱却を求めても、特に変わることもない。
俺が求めた変化は、俺1人の努力じゃ変わらない。結局、そうやって無気力が正当化されていってしまう。
世界は、楽なもんだ。このままでも過ごしやすい。
平和からの脱却を求め、決まってやることといえば、寝る前の祈りくらいだ。
祈りでもしていないと、忘れてしまいそうで。
退屈に、飲まれてしまいそうで。
【神様がいるのなら、俺にタイムリープを起こしてくれ。
そうだな。やり直せるなら、成人式あたりでいい。今から約8年前だ。】
こんなことを毎日祈って寝るようにしている。
厨二病なのはもはや仕方ないことだ。
誰だってやるだろう?この記憶のままやり直せれば、だなんて皆が一度は考えちまうよな。
ー 突如消えちまった親友を失ってから、この世界に価値なんて失くなっちまったんだ。 ー