一つ発見した日。
気が付いたら眠っていたらしく、目が覚めるともう朝になっていた。
昨日と同じベッドの上で目覚めて伸びをしていると、また同じように部屋のドアがノックされてアルが入ってきた。
「おはよう、シェリル」
「アル。おはよう、私いつから寝てたの?」
「あの後すぐくらいかな。よく寝れた?」
「うん、ありがとう」
「そういえばまだお風呂入ってなかったよね? 入ってくる?」
「いいの? ……あ、でも服が……」
「大丈夫だよ。もう準備してあるから」
「え?」
「お風呂の前に置いてあるから」
「あ、ありがとう」
……本当に置いてあった。
どこから調達してきたのかは分からないけれど、真っ白なワンピースが奇麗に畳まれていた。ついでになぜか下着まで置いてあったのには敢えて何も突っ込まないでおこう……。
(早いとこ街に行って服を買ってこないと……)
ちょっと複雑な気分にはなったけれど、久々の入浴は本当に気持ちよくて、うっかりお風呂の中で眠ってしまいそうになるほどだった。
用意されていた服を身に着け部屋に戻ると、アルが何かをしていた。
「あ、お帰り……って、髪びしょびしょのまま来たの? ちょっと待ってて、すぐに戻ってくるから」
「……?」
よく分からなかったけれど気が付いたらアルは部屋を出ていて、数十秒で戻ってきた。
「シェリル、この椅子に座って」
「え?」
「ほら早く。風邪引いちゃうといけないし」
訳が分からないままアルの言う通りに椅子に座ると、急に頭にタオルをかけられた。
「……これ、すごいふわふわ……」
町にいたときでも使ったことがないぐらいに肌触りが良くて、なんだかお花みたいないい匂いまでする。
「ふふ、君に使ってもらいたくて用意してたんだ」
「そ、そうなんだ。ありがとう」
「……髪、すごく奇麗だね」
「え? あ、ありがとう」
町のキラキラしている女の子達の中には髪を染めたりしている子もいたりするけど、私は一度もしたことがない。その代わりという訳ではないけれど、私は髪を大事にしてきた。母さんや村のおばあちゃん達がそういうのを大事にしていたというのもあって、手足は傷だらけでも髪だけはいつも奇麗にしていた。だから、アルが髪を褒めてくれてとても嬉しかった。
「? シェリル、どうしたの?」
「何でもないよ」
「そう? ならいいけど。そうだ、シェリルに見せたいものがあるんだ」
「見せたいもの?」
「うん。ちょっとこっち向いて」
アルが何をしようとしているのか分からないまま後ろを振り返ると、
「……!」
そこには、もちろんアルがいた。
__指に火を灯したアルが。
「……それって、何?」
「やっぱり、シェリルは知らなかったか。これは魔術といって、悪魔は使えるものなんだよ」
「魔術……何かの物語で読んだことはあるような気がするけれど、本当にあったのね」
「悪魔以外は魔術って全然使えないんだよね? 僕達はかなり頻繁に使うから魔術が無い生活って想像できないなぁ」
「たとえばどんなときに使うの?」
「うーんそうだなぁ……あ、シェリル、ちょっと後ろ向いて?」
「え? あ、うん」
急にアルがキラキラした目をし出すからそのまま前に戻ってしまったけれど、大丈夫なのかな……?
そう思っていると、いきなり後ろから温風が吹き付けてきました。
「!?」
「あ、ごめんね。ちょっと勢い強すぎたかな……」
「えっと、さっきのは……?」
「風の魔術と火の魔術を組み合わせて温風が出るようにしてみたんだ」
「あ、もしかして……」
「これでシェリルの髪を乾かしていこうと思ったんだ」
「すごい……」
「ありがとう。じゃあ乾かしていこうか」
魔術ってすごいのね。いつもなら髪を乾かすのに数十分かかるところを、10分ぐらいで済んでしまった。
「すごい! サラサラになってる……!」
「元が良かったからだよ。気に入ってもらえたかな?」
「もちろん! ありがとう」
「よかった。そうだ、一つ聞きたいんだけどいい?」
「どうしたの?」
「今日これから、よかったら散歩に行かないかな~なんて……」
「散歩? 行きたい!」
「本当に?」
「? うん」
「分かった、ちょっと支度するから待っててね」
「はーい」
急な話ではあるが、アルに出会って初めてお出かけすることになった。
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