8・訓練場と種族特徴
遅くなってすいません!早くするって言っていたのに……
やっぱり学校始まるとダメですね。
これからもこんな感じになってしまうと思うのですが、読んでくださるとありがたいです。
視界の白さが収まると、もうそこは先程の空間ではなく、別の場所でした。
見た目としては、板張りの床の大きな空間で、剣道場などを連想させる感じです。しかし、FPFのファンタジーな世界観で剣道とかがあるのかは分からないので、私の中の呼称は無難に訓練場にしときましょう。
しかし、誰もいませんし、何もありませんね……。
私の部下が導くとか女神様が言っていましたので、女神の部下――天使辺りでしょうか?――がいて案内してくれると思ったのですが……って、おお?
周りを見渡す私の視界の端を、見慣れぬ色の何かが横切りました。
それは、山奥で見る夜空の様な藍色のサラサラとした細いものが集まって出来ていて……あ、これ、私の髪ですか?
そういえば、キャラメイクで髪をこんな色にした様な気も……種族と職業のインパクトが強すぎた事もあって、すっかり忘れてました。
女神様も、新しい姿が~、って言っていましたし、ここから姿が変わるんですねー。
ということは――。
ある程度の確信を持って手を頭や額を探すと……やっぱりありました。
額の中心から天へ向かって伸びている、“角”が。
まあ、「鬼人族」ですからね。やっぱりありますよね、角。
最初のキャラメイクで自分の姿をある程度好きに変えられるFPFですが、プレイヤーの思惑通りにいかない部分が一つだけあります。
それが“種族ごとに設定されている外見特徴”です。
FPFでは、キャラメイクの時に設定した姿に、自動的に種族ごとの特徴が付与されます。
ドワーフであったら低身長に。犬の獣人であったら犬耳に、など。
しかも、その程度や種類が、個人個人でまったく違うのです。
低身長になると言っても、平均よりも少し小さいぐらいになるのか、それとも幼子と間違われるくらいまでになるのか。犬耳にしても、柴犬のものになるのか、ポメラニアンのものになるのか、はたまたドーベルマンのものになるか。それは誰にも分かりません。いえ、それを決めているシステムは知っていると思いますけど。
βテストの時の検証班が行った統計によれば、一定数の被りはあったそうですが、その種類は膨大だったとか。
これは、その種族を選んでいる限り避けられないことです。
唯一そういうのが無いのが人族なので、自分の思い通りの見た目にするため自分のなりたいステータスを犠牲に人族にした人もいたそうです。
またβテストの時は、その付け加えられた特徴が気に入らなくてもやり直しがきかず、新しいアカウントで新しく始めたくてもテスト用のアカウントは一つしか持てなかったので、テスト終了までは泣く泣く我慢して、本サービス開始時には何回アカウントを作り直してでも自分の好きな姿形にしてみせる!と息巻いている人達を、FPF関連の情報をネットで漁っていた時に掲示板でそこそこ見かけました。
でも、一つのソフトでは一つのアカウントしか作れないので、新しいアカウントを作るにはもう一つ新しいソフトを買わなければいけなく……。
ソフトもそう安いものではないので出費もヤバそうですが、第一次生産版をβテスターということで貰えても、新しいソフトを買うには次に生産されて発売されるまで待たなくてはいけないわけで。
サービス開始から同時に出来るというアドバンテージをわざわざ捨ててまでやるとは……いつの時代でも、オシャレ(?)に命を賭ける人はすごいですよねー。
まあ、それはどうでも良いです。
やっぱり、鬼人族の種族特徴は、この角でいいんでしょうか?
しかしこの角、節分の時に普通思い浮かべる鬼の角の様な円錐形ではないんですね。
額から生えている私の角は、基本的には角錐の様に角張っていて、根元の方が太く、先に行くにつれて細くなっています。そして、額を0度とした場合、大体斜め45度くらい上に向かって伸びていってます。
と言っても、これ全部触って想像しただけのものなので、実際どんな形や色をしているのか、私の顔や体とどんな風に組み合わさっていて、どんな印象を与えるのか、みたいなことはさっぱり分からないんですよねー。
額から上に向かって生えているので、このまま目で見るのは確実に無理ですし。
どっかに鏡とかありませんかね?
けれど、もう一度周りを見渡しても、この訓練場内には何も見当たりませ……って、あ、何かありました。
それは……縦に長い楕円形をしている、光の膜でした。
それがある位置や形的に、ぱっと見は姿見の様にも見えますが、表面が鏡面ではなく、様々な色の光が混じり合い常に変化し続けていて、綺麗な様な、気味が悪い様な……。
そして次の瞬間――
「あーもー、アスティア様の話長すぎ!久しぶりに色々な人に会えたからって、興奮し過ぎだよー!仕事場に来るのが遅くなっちゃったじゃんか、もー。まあ、当分誰も来ないと思う……け……ど……」
そんなことを叫びながら、光の膜から少女が現れました。
そして、こちらに視線が来た途端に、静かになっていきます。
一拍後。
「……い、いたーーーーー!?」
訓練場内に、少女の叫びが響き渡りました。




