7・職業とまたも無作為
次に表示されたのは、数多くの項目。
『剣』『片手武器』『両手武器』『長柄武器』『中距離』『遠距離』『魔法』『生産』『腕力』『体力』『敏捷』などなど。
武器が項目となっているのは、その武器に補正が掛かるスキルを覚えられる職業。ステータスが項目となっているのは、そのステータスに補正が掛かる職業です。
その項目の数は、ざっと百以上。一つの項目の中に内包されている職業は平均して三十ぐらいずつなので、単純に考えて全職業の数はなんと三千個です!
まあ、重複しているものが結構あるので、本当はだいたい二百個ぐらいですけど。
しかも、その内の五十ぐらいは完全なネタ職なので、実質は百五十ぐらいです。
それでも十分に多いと思いますけど。
その数の多さのせいで、一から探し始めると膨大な時間がかかってしまいますので、こんな風にキーワードごとに項目が分かれており、時間を短縮出来る様になっています。
本当だったら、『腕力』の項目から探したい所ですが……恐らく……あ、やっぱりありました。
私が見つけたのは、項目『シークレット』。
シークレットのランダム種族があった様に、職業にもシークレット、ランダム職業というモノが存在しています。
こちらは種族の方ほど確率は低くないですが、それでも百人に一人程度の確率ですし、その職業効果の高さはランダム種族とほとんど変わらないレベルです。
もし本当にランダム種族が選択肢に現れたのが、貰った称号の効果だとしたら、こちらもあるかなー、と思ったんですけど……やっぱりありましたね。
それでは、こっちもこの中から選ぶ事にしましょうか。
えっと、あるのは――【死霊術師】【腐食術師】【酸術師】【呪術師】って、何ですかこの物騒なラインナップ!
まあ、これらはなしですかね。腕力関係なさそうだし。
次は――【殺人鬼】【毒殺者】って、だから何で物騒な奴しかないんですか!?
【引き籠もり】【警備員】【教師】。やっとまともそうなのが来ました……いや、引き籠もりってまともですかね?それに、警備員と教師って……確かに現実世界ではまともですけど、ゲーム世界ではどうなんでしょうか?これらで戦えますかね?
えっと、【引き籠もり】はステータスに補正がない代わりに、《ガチャ》という色々な景品(アイテムやスキル、BP――レベルアップ時に貰える、ステータスへ割り振って上昇させたり、スキルを習得したりする事が出来るポイント――など)を取れるスキルが習得出来る。【警備員】は、警戒や感知系のスキルの効果と獲得経験値が大幅に上がる。【教師】はパーティーメンバーからスキルを《学習》し、パーティーメンバーへスキルを《教授》する事が出来る、と。
うわー。結構どれも反則級の奴ですねー。
引き籠もりは、本来だったら手に入れられない様なレアアイテムや、職業的に習得出来ない様なスキルが出る場合もあるそうですし、警備員はとても優秀なスカウトになれそうです。教師なんか、習得し辛いレアスキルを仲間から貰って、他の仲間に渡す事が出来るという事じゃないですか。
さすが、シークレットと言われるだけはありますね。
でも……なかなか、これ!っていう奴が見つからないですね……。
一応、私が求めている様な、腕力重視の職業はあるんですけど……。
【喧嘩屋】とか、【砕拳士】とか。
けど、どこかピンと来ないんです。肌に合わない、みたいな感じですかね?
「これは、少し妥協しきゃいけないですかねぇ……うん?」
これは、【砲術士】……?
砲術士……個人で大砲を扱う者。補正が腕力・器用に特化している上に、大砲の攻撃補正は全武器中最大級であり、一撃一撃の威力の大きさは攻城魔法と変わらない。
職業補正率
HP:+20 MP:+0 SP:+50
腕力:+9 体力:+2 敏捷:+3
知力:±0 精神:±0 器用:+6
職業固有スキル 〈砲術〉
おお!これ、良いですね!これにしましょう!
腕力特化ってなっていますし、何より、個人で大砲を扱うという事は、大砲を持って歩いたりとか、振り回したりとかをするという事で。そんなの、ものすっごく、腕力自慢っぽいじゃないですか!
それでは、これで決定ですね。
ウィンドウを操作して、っと。
予定通り、というには少し時間がかかりましたが、これで職業も選択終了です。
あとは初期スキル、ですね。
FPFでは、初期スキルとしてスキルを最初に3つ選んで習得する事が出来ます。
こちらも、選べるスキルの数は多いですが……職業が決まっている以上、選べるのは結構決まってきますよね。
戦闘職ならば、職業で補正される武器スキルを一つと、戦闘を補助出来るスキルか、採取、感知系のスキルのどれかを二つ。生産職ならば、職業で補正される生産スキルを一つと、生産を補助するスキルを二つ、みたいな感じで。
私の場合は、職業固有スキルであり、補正が入る〈砲術〉スキルは確実で、後は補助と感知系のスキルにでもしましょうか。
私は戦闘に関してド素人なので、やっぱり補助は必要でしょうし、感知系があれば死ににくくなりますから。何事にも、死なないのが一番です!
いや、鬼人族もランダム種族なので、特殊スキルを習得出来ます。
だったらやっぱり、どちらかをなくして、それを習得した方が良いでしょうかね?
うーん……やっぱりそうしましょうか。
《闘鬼化》Lv1:鬼人族特殊スキル。物理系ステータスを3倍に引き上げる。発動により次に発動可能になるまでインターバルが発生する。インターバルは発動時間により変化する。最大発動時間10分。最大インターバル10時間。
SPとかを消費しない代わりに、時間制限とインターバルがある強化スキルってところですか。
これがあるなら、補助系のスキルはなくていいですかね。
だったら感知系は……《索敵》。これにしましょうか。
索敵は、普通だったら視界に入らないと表示されないカーソル(キャラクターの頭上に浮いている逆三角錐型の立体。プレイヤー、NPC、モンスターを色によって判別する役割を持つ)が遠くからでも見える様になったり、カーソルがマップに映る範囲が広がったりするスキルです。
その本来の効果通り、敵を見つけるのに使うのと、遠くから敵を狙い撃ちに出来ないかなー、とか、考えて選んでみました。物騒ですかね?
ともかく、これでキャラメイクは終了です!
結構長い間悩んでいたからか、やり切った感がすごいです。
そんな風に悩み通して決定したステータスがこちら。
名前:タマモ 種族:鬼人族 種族LV1
職業:砲術士 職業Lv1
HP:90/90 MP:5/5 SP:100/100
腕力:24 体力:15 敏捷:14
知力:1 精神:3 器用:13
スキル:砲術Lv1・闘鬼化Lv1・索敵Lv1
称号:異界の旅人・原初の旅人
いやー、腕力と知力の差がヤバ過ぎですね!
まあ、これこそが私の望んだ姿、と言われればそう何ですけど。
それでは、最終確認ボタンをポチッとなっと。
「どうやら、選び終わったようですね」
ボタンを押すとウィンドウが消え、もう一度女神様が現れました。
「これで、あなたを我が世界へと招く準備は整いました。あなたが望むのならば、世界を渡る前に、新しき姿と能力や道具、それにあちらでの生活について慣れるための場を用意しますが、どうしますか?」
ほう。つまりはチュートリアルですね!
「お願いします!」
VRゲームに慣れている人だったらスルーするんでしょうけど、もちろん私はやります!
ずぶの素人なんですから、こういう説明はきちんと聞かないと、ですよね!
「分かりました。それでは、これで私とはお別れです。あとは、私の部下たちが導いてくれるでしょう。あなたが、私の望む変化を齎してくれることを祈ります」
そう言って女神様が手を翳すと、そこから光が溢れ、その光に私は飲み込まれ、視界が白く塗りつぶされました。
やっと次でゲームを始められます!
今後は、もうちょっとハイペースで行きたい……