3・当選と交換
「ただいまー」
高校の授業が終わり、私は家に帰ってきていました。
私も一応部活に所属しているのですが、活動がある日は不定期、というか部長の気分が乗った時に開催されます。
今日の気分は特に良くも悪くもなく、開催されなかったので、授業が終わったらそのまま帰ってきました。
「いえ。そんな事よりも、パソコンの確認です!」
靴を少し乱暴に脱ぎ捨てると、階段を上り、二階にある自室に急ぎます。
彩ちゃんから応募を頼まれてから、今日でちょうど二週間が経ちました。
今日は、その応募の結果が届く日。
つまり、私がウィードのCDを手に入れられるかが決まる日です!
鞄を置くと、パソコンを立ち上げ、メールの受信欄を開きます。
そこには――確かに『FPFβテスト当選のお知らせ』と題されたメールがありました。
「やりました!!」
思わず叫んでしました。
これで私が彩ちゃんに送られて来たゲームを渡せば、CDが貰えます!
ふふっ。嬉しすぎて顔がにやけて来ちゃいます。
ああ、早く送られて来ないでしょうか!
それから五日後。
郵送でFPFのソフトとゲーム機本体(ハードと言うらしいです)が送られてきました。
βテストに応募する人達は、大抵がVRゲームに興味がある人(例外はあります。私とか)で、そんな人達の大半は今までもVRゲームを遊んだ事がある人です。
つまりはほとんどの人がハードも持っているという事なのに、わざわざゲーム機も合わせて送ってくるのは何で?と思ったのですが、彩ちゃん曰く、システムを従来の物から大幅に進化させた為に、ハードも進化したものを使用しなければならない、とか何とか。
まあ、そんな事はどうでも良いのです。私が使う訳じゃないですし。
「あとは、彩ちゃんに連絡して、っと」
LINEで彩ちゃんに居場所を聞くと、家にいるらしいので、届けに行きましょう。
「という訳で、来ちゃいました」
「それは良いが……今、何時か分かっているか?」
「二十三時ですよね?」
「ああ、分かっているなら良い」
……?また彩ちゃんが不思議ちゃんになっています。
「それで、彩ちゃん!!CDは!?」
「ほら、分かった。分かったから。ドウドウ」
「はっ……ごめんなさい、彩ちゃん。興奮しちゃって」
「まあ、別に大丈夫だ。お前のウィード狂いは今に始まった事じゃないんだから……ちょっと嫉妬するけど……」
「ん?彩ちゃん、後半何て言いました?」
「何でも無い、気にするな。ほら、CDだ」
「おおー!彩ちゃん、ありがとうございます!」
念願の欲しかったCDとのご対面で思わずにへらぁ、と緩んだままの顔で彩ちゃんにお礼を言います。変な顔になってしまっているかもしれないですが、この嬉しさを止められません!
「……っ!あ、ああ。ど、どういたしまして」
「あれ?彩ちゃん顔赤くないですか?そんなに暖房効いていますか?」
「な、何でも無い!それより、ゲームは!?」
「……?これですけど」
彩ちゃんが挙動不審です。何故でしょう?
はっ!まさかさっきの顔が、挙動不審になるくらいに笑える程変だったのでしょうか?
「おお、確かに!よし、βテスト開始は三日後だったよな。それまでにキャラのステータスをどんな風にするのか考えないと……!」
うんうん、彩ちゃん楽しそうですね。その顔を見ているだけこっちも幸せになれそうです。
「それじゃあ私は、早速CDを聞くために家に帰りますね!おやすみなさい!」
「ああ。おやすみ……って、速っ!もういない!」
ああ、楽しみ過ぎて困っちゃいます!
あと一話でゲームを始める、はずです。もう少しだけお待ち下さい。