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10・チュートリアル前編

すごく遅くなってしまってすいません。

更新再開します。

「それじゃあチュートリアルを始めるけど……まずは、名前を聞いてもいいかな?」

「はい、いいですよ。私はタマモといいます。気軽にタマモって呼び捨てにしてください」


 犬耳ちゃん――改めステラちゃんとは良い関係を築きたいですからね。ここはフレンドリーに行きましょう!


「分かったよ、タマモ。それじゃあ、チュートリアルの選択方法を選んでもらおうかな」

「選択方法を選ぶ、ですか?」

「うん。チュートリアルで学べることはたくさんあって、その全部をやっていたら膨大な時間がかかっちゃうから必要なことを選んでもらうんだけど、その選び方にも種類があるから。

 選び方は4つあって、種族や初期選択スキルから、必要なことを僕が考えてそれをする方法、タマモが興味あることを聞いて、それに関連することを選ぶ方法。あと、あまりおすすめしないけど、全種類に目を通して興味を持ったことをする方法と、選ばずに全部のことを学ぶ方法かな」


なるほど。βテストの情報を見た限りでは、FPFで出来ることはとても多いです。その全部の基本や根底にあるものを学べるのだとしたら、かなりの数になりそうですし、それを選ぶ手間をなくすためにいくつかの方法があるというのも納得です。


「それだったら、うーん……あの、ステラちゃん」

「なに?」

「ステラちゃんに考えてもらった必要なことに加えて、私が興味あることに関連することもやる……って、出来ますか?」

「もちろん大丈夫だよ!」

「なら、それでお願いします」

「オッケー!じゃあ、必要なことは……デフォルトとしてメニュープレートの操作方法とスキル発動の基本方法、種族として必要なことなし、スキルとして個人での砲の扱い方練習、特殊スキル・索敵の体験、だね!あ、あと、ステータスの実感もした方がいいかな」

「え?」


 前半部分は分かりますが、ステータスの実感?何ですかそれ?


「必要なことはそれぐらい。タマモが興味あることは何かな?」

「え、えーと……それじゃあ、採取系を一通り教えてくれますか?」


 前述の通り、私は魔法が駄目だと思うので、そこを習っても多分無駄ですし、FPFの生産系は最低限のことはスキル頼りで出来ますが、それ以上のことをしようとすると手先の器用さが必要になるので、器用ではない私はパスです。

 しかし事前情報の通りであるならば、採取系はそこまで器用さは求められないはずです。

 戦闘を主として進めようとは思っているので初期スキルとしては採取系を取ってはいませんが、余裕が出来た場合は取ってみることも考えているので、ここでチュートリアルを受けといて損はないと思います。

 戦闘職のお金の稼ぎ方はモンスター素材の換金や討伐クエスト達成の報酬がメインですが、他の稼ぎ方があっても損はないですからね。


「分かったよ。他にはない?」

「あとは……大丈夫です」

「うん。それじゃあ早速始めようか。まずはメニュープレートの操作方法だね」


 そう言ってステラちゃんがまず教えてくれたのは、メニュープレートの出し方や使い方などです。

 メニュープレートは、自分のステータスを見たり、装備を切り替えたり、アイテムを収納したりするなど、様々な機能があります。ログアウトする時もここからです。

 これの使い方はネットにあったので知っていますが、実践するのは初めてなので、復習もかねてちゃんと話を聞きながらしていきます。


「大丈夫そうかな?それじゃあ次は、スキルの発動方法だよ。

 スキルを発動する方法は二つあって、心の中で思うのと、発動したい、という意思を持った上でスキル名を言うのと。これはどっちでも良い、という訳じゃなくて、スキルによって決まっているから、覚えたら自分で確認してみて。

 それと、スキルにはそれぞれ発動条件もあって、MPとかSP、特定のアイテムを消費しなきゃ発動しないもの、特定の動作や条件を達成しないと発動しないもの、発動後はクールタイムが発生して、それがなくならないと二回目の発動ができないもの、などなどいっぱい種類があるんだ。こういうのはメニュープレートの『スキル』項目の詳細から見れるからね。

 ここまでいいかな?」

「はい、大丈夫です」


 これも予習済みなので、特に問題ありませんね。


「じゃあ、今度は砲の扱いについて。メニュープレートの『アイテム』に初期配布の大砲が入っていると思うから、出してみて」

「分かりました」


 えっと、メニュープレートを開いて、『アイテム』の項目をタッチ……ああ、確かにありました。多分これですね。

『初心者の大砲』と表示されている項目をタップ。これで出てくるはずですが……。


「……って、うわ!?」


 確かに、大砲が出てきました。出てきましたが……


「これ、大き過ぎじゃないですか!?」


 ズドン!!という音を響かせて、砲身が全長3m、直径25㎝近くある、巨大な筒が現れていました。

これぞ大砲!と言わんばかりのその威容に、少し気後れします。


「……でもこれ、重量的に装備出来るのですかね?というか、持てますか……?」


 FPFでの武器の装備条件は、二種類あります。

 一つは、武器ごとに設定してある条件です。

 『○○というステータスの数値が〇以上』や『○○というスキルを習得している』、『職業のレベルが〇以上』など。

 これらを達成しなければシステム的に装備できません。

 もう一つが、重量によるものです。

 武器や防具にはそれぞれ重量が設定してあり、装備している物の重量の合計値が筋力+体力の合計値を超えると、敏捷と器用が下がる、装備に付いているスキルの効果が下がるなど、ペナルティが入ってしまいます。こちらはシステム的には装備できていますが、ぶっちゃけ装備しない方が強いので、“重量的に装備出来ていない”なんて言われます。

 また、そもそも筋力+体力の合計値と重量の差が大きすぎると、持つ事すら叶わず、装備する何て夢のまた夢状態になる事もあるそうです。

 そうならないのか、心配なんですけど……。


「大丈夫だよ、タマモ。それの説明見てごらん」

「説明、ですか?」


 FPFにおいてアイテムの説明を読む方法は二つです。

 一つは《鑑定》というスキルを習得すること。

 二つ目は自分のアイテムにすること、です。

 アイテムには所有者、というのが設定され、それらはその場の状況により変わっていきます。

 フィールドにある植物や鉱石などの素材は誰のものでもなく、それらが採取された時点でその人のモノになり、それはその人のアイテムボックスにしか入りません。

 しかし、それも変わることがあります。

 メニュープレートの機能の一つである『交換』をもって譲った場合は相手の所有物になりますし、『アイテム』の項目から廃棄した場合にはまた誰のモノでもなくなります。

 そんな感じでアイテムの所有者は変わっていくのですが、その所有者はアイテムの説明を読むことができます。

 前述の《鑑定》スキルがあれば他人のモノでも読むことはできますが、他人のモノの説明を知る必要があるのは普通対人戦ぐらいで、単にモンスター相手に戦ったり採取するだけだったら正直いらないので、βテストではそういうのを専門にしている人以外はあまり取らなかったそうです。

 えっと、この【初心者の大砲】の説明は……。


名称:初心者の大砲(砲術士用)

レア度:1 品質:1 耐久力:∞ 重量:300/装備時体感:30([砲術士]により10分の1)

効果:攻撃力+50

説明:女神から異界の旅人へと贈られた初心者砲術士用の大砲。初心者装備でありながら、他系統の通常の武器を遙かに凌駕する攻撃力を持つ。


 およ?装備時の重量が減っている……。

 これって……?


「【砲術士】には、大砲を装備した時に体感重量を10分の1にする効果があるんだよ。だから、他に砲を使う【砲使い】なんかと違って単独でも運用ができるんだ。他にも、発射時の反動を軽減する効果もあるよ」

「なるほど……」


 今の私の腕力は24、体力は15なので、合計は39。

 本来の重量には遠く届きませんが、【砲術士】の効果で減った重量は越しています。これなら大丈夫でしょう。

 では、早速持ってみましょうか。

 この【初心者の大砲】には、端から4分の1と3分の1部分の二つに取っ手らしき物が付いており、多分ここを持ち手にして持つのでしょう。

 ふんっ、って……意外と楽に持てました……。

 いくら数値上は大丈夫とはいえ、見た目が重そうなのでちょっと気合を入れて持ち上げようとしましたが、ぶっちゃけいらなかったです。

 まあ、楽とは言っても、それほど余裕が有り余ってはいないですけど。全身全霊で持ち上げなくてはいけない、という感じではないので楽とは言えますが、だからと言って軽々しく、という訳ではないです。多分、片手では持てませんね。

 メニュープレートの『装備』項目を開くと、ちゃんと装備されています。

 FPFでは自分のアイテムである装備品を身に着けると、自動的に装備されます。

 今みたいに武器を持ったりとか、他にも指輪なんかを付けたり、鎧を着たりしても装備されます。

 まあ、大概の人は面倒だから、とメニュープレートを操作して装備しますが。そうすればシステムが着せてくれるので、楽ですから。


「装備できたみたいだし、じゃあ早速砲を撃ってみようか。まずは、スキルの中の《砲術》をタップしてみて」

「《砲術》ですか?」


 ステラちゃんに言われた通り、〈砲術〉をタップして、詳細項目を開きます。


《砲術》Lv1:大砲での攻撃時に補正をかける。

発展スキル:《リロード》《ヘヴィショット》


 あ、発展スキルを覚えています!


 スキルには、基礎スキルと発展スキルがあります。

 基礎スキルは、習得可能にした上でレベルアップ時に貰えるBPを消費すれば覚えることができます。

 習得可能にするには、それぞれのスキルに設定してある条件――特定の職業に就く、特定の行動を一定回数以上行う、別のスキルをあるレベル以上にする、とあるアイテムを使用、あるいは入手する――などをクリアする必要があります。

 そうして覚えた基礎スキルのレベルを上げていけば覚えるのが発展スキルです。中には、基礎スキルのレベルを上げるだけではなく条件を満たさなければ覚えない強力なスキルもあるのだとか。

 と言っても、レベルを上げて発展スキルを上げるのは基礎スキルの内半分ぐらいで、そうして覚える発展スキルの大半は、《スラッシュ》や《ファイアーボール》みたいな『技』らしいですね。

 私の《リロード》と《ヘヴィショット》は……SPを1消費して、頭に思い描いたアイテムボックス内の砲弾を大砲に装填するスキルと、SPを5消費して撃った砲弾の威力を上げるスキルみたいです。

 両方とも、すごく基本的なスキル、って感じですね。

 でも、《リロード》はすごい助かりますね!

 砲弾の装填の仕方とか絶対大変そうなので、そこをスキルで補ってくれるのはうれしいです。運営は分かっていますね。


「[砲術士]の基本的な戦法は《リロード》で砲弾を装填して、撃つ。発展スキルは必要な時に使う、って感じ。もちろん、これに絶対沿わなきゃいけないわけじゃないから、タマモの好きな戦い方を考えていけばいいと思うよ」

「分かりました!」

「うん、じゃあ早速やってみようか。初期配布として砲弾は50個配られていると思うけど、今はこれを使ってね」


 そうステラちゃんが言うと、メニュープレートが開きました。

 えっとなになに……『 ステラ から 【チュートリアル用砲弾】×100 の譲渡申請が来ています。許可しますか? Yes/No』


「これって……」

「ここでしか使えない砲弾だよ。余っても、ここから出れば自然消滅するから、とりあえず貰っといて」

「じゃあ、遠慮なく」


 Yesを押すと、『アイテム』の中に【チュートリアル用砲弾】が加わりました。


名称:チュートリアル用砲弾

レア度:- 品質:- 耐久力:100 重量:5

効果:攻撃力+25(大砲発射時)

スキル:《チュートリアル専用》

説明;異界の旅人のチュートリアル用の砲弾。


 完全にチュートリアル専用、という感じですね。

 このスキルが多分ステラが言った自然消滅に関わっているんですかね?

 まあそれは置いといて早速!


「《リロード》!」


 チュートリアルチュートリアル、と思いながらスキルを宣言すると、手に持った大砲が重くなりました。多分、これで装填されたはずです。


「じゃあ、これを狙ってね」


 ステラちゃんが手を振ると、私たちがいるのとは反対側の訓練場の端に、木でできた等身大人形が出現しました。床からせり上がる感じで。

 ……この訓練場、どんな仕組みしているでしょうね?


「取っ手に付いてる引き金を引けば撃てるよ。誤射には気を付けてね!」


 えっと、取っ手……これですか。

 二つある取っ手の内、左手で掴んでいる後ろの方に、確かに引き金があります。

 では、砲口を人形に向けて――。


「ファイアー!」


 叫ぶとともに引き金を引きます。

 ドォオン!という轟音が響き、大砲を撃ったとしては小さい、しかし十分に大きい反動に襲われます。

 けれど、力を込めて態勢を崩さないようにし、砲弾の行方を見届けます。

 撃ち出された砲弾は真っ直ぐ人形に向かって飛んで行き……。


「……あれ?」


 当たらずに横を抜け、後ろの壁を見事に崩壊させました。

 あれー?ここって、人形に見事に当たって、うわぁ凄い!とかなる場面じゃないんですか?

 確かに威力は凄いですけど……。

 壁の直接当たった所は粉々ですし、余波で壁崩壊していますし。

 というか、壁の向こうがまるで宇宙のような、闇と光が混じり合った謎空間で、それが無限に続いていて……これ、間違って落ちてしまったら戻ってこれないような、そんな怖さを感じるんですけど……。

 って、崩壊した壁が一人でに浮かんで組み上がっていってます!?粉々になった部分は新しくどこからか材料が現れているし!?

 謎空間と合わせて、現実では絶対見れない光景です……本当にゲームなんですね……。まさかこんな所でゲームと凄く実感することになるとは。


「あー、やっぱり駄目かー」


 ステラちゃんが想像通りだなー、みたいな顔してます。


「ステラちゃんは無理だって分かってたんですか?」

「そりゃあそうだよ。だって、タマモって絶対大砲撃ったことないでしょ?」

「まあ、そうですけど」

「撃ったことないのに、一発目からなんて成功できる訳ないからね。それをできるようにするのがチュートリアルな訳だし」

「確かに……」


 ちょっと私の考えが甘かったみたいです。

 何事も努力の積み重ねですよね。それをしないで成功させようとするのはちょっと駄目でした。


「だから、ここでいっぱい撃って出来るようになろ、タマモ!」

「はい!」


 それでは上達のため、撃ちまくりましょうか!


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