表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

魔眼の鍛冶屋 外伝 〜美を求めし者[オカマ]〜

作者: レッド


とある街の片隅にある鍛冶屋に私達は押し入り、そこの店長に抗議をした。


「ちょっとアルヴォア!!なんでちょっと私達が遠出してる間に引退してるのよ!!私達とパーティー組む予定だったでしょ!!」

「そうだよクマの人!裏切り者!」

「いや…このクマ人…その約束してない…」

「すいません!ほんとすいません!」


私達が旅から戻り、ギルドにクエスト完了の報告をしていた時に受付嬢からアルヴォアが引退した事を聞いた。

冒険者ギルドの方でもなんとか必死に止めたらしいが、鍛冶の腕も良いせいでこれ以上命を賭ける仕事は強要できなかったそうだ。


「おまえら、いきなり来てそれか?ヘイム、そんな約束はしてねぇし、昔から金貯まったら辞めるって言ってただろうが。」

「なによ、図体でかいのに器の小さい事言って。あんたならもっと稼げるでしょうが、もっと稼いで愛人の二人や三人孕ませなさいよ。」


「それとカージア、おまえもノリで話すな。約束なんてしてないって分かってて裏切り者呼ばわりするな。」

「相変わらずつれないねぇクマの人、会話に華を添えるのにノリは必要だよ?」


「…アルゴ、おまえさんこいつら止めれなかったのか?」

「リーダー…この時…止めるの…無理」


「レナ、お前は悪くない。だからそのすぐ謝る癖治せ。もうA級なんだから下の奴らの示しがつかん。」

「はいぃぃ!すいませんんん!!」


アルヴォアは律儀に一人一人に返答し、こちらの返答はスルーした。


「だいたいこの店閑古鳥鳴いてるじゃない、あんたが店番じゃあ客こないからやめとけって何回言ったとおもってるのよ。ほら、店なんて諦めて私たちと冒険しましょう!!」

「うっさいわ!!いま店番出来る奴を募集してる最中だ!!」


私が言った通りに店に来る客が逃げてる現状を打破しようとしているけど、この調子じゃ面接で来る子が全員逃げるわね。


「だいたいお前らのパーティーの主旨に合わんだろうが、なんでまだ勧誘してくるんだ?」

「バカね、私達のパーティーの主旨を本当に理解してないじゃない。私達『美しき獣』の募集要項を言ってごらんなさい。」


アルヴォアが私達のパーティーに参加することの意味を分かってないようなので説明する為、一度パーティーの募集要項を確認させる。


「そりゃ有名じゃねぇか、『美の追求』だろ? 俺のどこに美があるんだよ。」

「……ねぇアルヴォア、貴方お菓子には砂糖ぶち込めば美味いお菓子になると思ってる?」

「あまり菓子は食わんが、そんなもんじゃねえのか?砂糖多いほど高級じゃねえか。」


分かってない、このクマ分かってないわ。


「違うの、本当の甘味って言うのは砂糖だけじゃダメなの。砂糖の中にひとつまみの塩でさらに甘さが引き立つ、つまり美人だけのパーティーの中に野獣の様な奴が一人いる事により私達がより引き立つのよ!!」

「おう、おまえ俺を引き立て役にする気だったんか…なんでバランスのいいパーティーにわざわざ追加要員入れようとしてんのかよく分かったわ。」

「そう、本当の理解を得られて光栄だわ。さぁ、冒険者ギルドに行ってギルドカードの再発行に行きましょう?」

「いや、もう帰れよ……客じゃないならでてけ」


眼を赤く光らせたアルヴォアに、強引に店の外に追い出された。


「まったく…昔から頑固な所は変わらないわねぇ…アルヴォア」

「リーダー、あのクマの人の昔ってどんなのだったの?」

「あぁ…私も……気になる」

「昔からあんな怖かったんですか?」

「そうねぇ……」


そう言って私は昔を振り返った。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


あれはまだ[私]が[僕]だった頃の話。

アルヴォアとは幼馴染で、家が隣だったこともあり二人でよく遊んでいた。


「なんかしっくりこないんだよなぁ…こう剣術っての」

「一応親父に習ってる事教えてるんだがな、型は綺麗に出来ている。なにか不満か?」


僕の発言にアルヴォアが返答した。

アルヴォアの父は元冒険者で、剣を得意としていたらしく剣の振り方や剣技の型などを教えてもらっているらしい。


「いやな、分かってんだけど……どうにも感性に響かないっていうか……」

「ふむ…短剣の方がいいか?でも威力がなぁ…」


アルヴォアはこちらを見ながら提案をしてくるが、その提案もすぐ自身で否定した。


その時の僕はなにかが違う、こうじゃないと心の底にあるわだかまりが理解できなかった。


しばらくして村に面白い知らせが入った。

首都の方で武道大会が行われると言う知らせだ。


アルヴォアとアルヴォアの父はその知らせを聞いて喜び、母親は呆れながらも笑顔で二人の武道大会見学を許した。

その見学に僕も同行する事を願うと二つ返事で了承してくれた。


「アルもヘイムも三男だからなぁ、いつか自分で道を決めて歩いていかないと行けない。冒険者はそんな奴らの希望だからな、今のうちから良い剣技、魔法を観ておくのは将来の為になる。」

「いや、もっともらしい事言ってるけど親父も観たいだけだろ?お袋も呆れてたじゃないか…」

「おじさんの言い訳でもなんでも、僕は観れれば問題ないよ!」


アルヴォアの父親は少し目を遠くにやり、小声で何か言いながら誤魔化した。

そして馬車で一日、首都へやってきた。


「さぁ、ここが首都だ。迷子になるなよ?」

「人多いねぇ、ヘイム気をつけろよ。」

「いや、二人に言ってんだよ。」


アルヴォア親子の漫才はほって置いて、僕は首都を見渡した。

村とは違う建築、人、そして亜人、それぞれに色々な違いがあり美しいと感じた。


「いい街だなぁ…いつか僕もこう言う街で冒険者になって……」

「おう、そうだよそう言うのが夢って言うんだ!それなのにこいつときたら……」

「親父…平穏に生きるのがなにが悪い……」


僕の独り言に反応して、アルヴォアの父親はアルヴォアの頭をぐちゃぐちゃにしながら悲観した。


「アルヴォアは夢なさすぎ、なんだよ田舎の街でのんびりとか。ないわ。」

「うるさい、人の夢にケチつけんな。」


武道大会は明日から、僕らは宿に向かい明日の武道大会を待つ。


そして当日。


「さぁ、今年もこの時期がやってまいりました!第158回セルディウス杯開催です!」


響く歓声、予選を勝ち抜いてきた猛者たちが両手を上げ、歓声に応えた。


年に一度、建国の祝いとして武を愛したと言われる建国の父「セルディウス」様の名を冠した大会が開かれて長い年月が経つ。


「今年はまた楽しみだな!珍しく双剣使いがいるぞ!」

「お、本当だ!女性とかさらに珍しいねぇ。」

「わぁ!フードで見えないけどなんか強そう!!」


この大会、大体が片手剣に盾か両手武器での豪快な攻撃が多い。

その中に華奢な女性で双剣使いというのはなかなかにレアだ。


「アル、今年は誰が勝つと思う?」

「賭けするの?やめといた方がいいんじゃない?去年全部すってお袋に怒られてたじゃん。」

「うちにも響くほどの音量だったね。」


近場で賭けをしてる奴らに混じりたそうにしていたが、僕ら二人で止めた。


そして試合が始まった。


一試合目は片手剣 対 片手ハンマー。

死傷させるのはご法度なので、互いに手加減なり刃を潰した状態での戦闘になる。


「さて、始まるぞ。」


アルヴォアの父親がボソリといい、眼を光らせて観戦していた。


互いに間合いを取り、フェイントをかけながら隙を伺っている。

先に動いたのはハンマーの方。


大振りに上から振り下ろしを相手の盾に決める。

盾の一部が破損し、片手剣側が少しふらつくが大振りの攻撃、すぐさま体勢を整えられず隙を見せるハンマー側に対して袈裟斬りの攻撃を放つ。

それを前方に転がり避け、振り向き様ハンマーを横振り。

位置的に悪く盾も破損しているが、その盾で防ぐ…


そして片手剣側は威力を殺しきれず吹き飛び、ハンマー側の追い討ちで試合が終了した。


「ハンマーはこういう大会だと強いな、重量があるがそれを扱う筋力さえあれば刃を潰した剣などには負けないな。」

「刃が付いてるならあんなに不用意に突っ込めないだろうしね。盾破壊出来る威力もすごい。」

「なんかゴリ押しが強いのはなぁ…」


結局力が強いのが勝つのかなぁ…と少し落胆していると二試合目にあの双剣使いが出てきた。


「さて、お相手は…お、相性は悪くないな。両手剣使いだ。」

「そうだね、どこまで回避して攻撃を当てられるかが重要だね。」

「これは楽しみだ。」


相手の大剣使いも気を引き締めて、近寄られない様にある程度の間合いを確保した。

そして双剣使いは……


「……!」


立ち姿から剣の形、全てが僕に何かを訴えてきた。


双剣使いが構えると、勢いよく相手に向かって行った。

大剣使いも予想していたのか、すでに振りかぶっており横薙ぎに剣を振った。


その横薙ぎを双剣使いは


「ほう、上手いな」


アルヴォアの父親は呟いた。だが僕はそれどころではない。


横薙ぎに合わせ側転の宙返り、その攻撃が軌道修正できない様に自身の持つ武器で受け流しながらの回避。

その後着地し、大剣使いの懐に入ると武器を振った。


なにか少し見える武器からの光。その光が線を描き敵に向かっていく。

相手も振った大剣の勢いを利用し回避、そのまま蹴りを出して距離を取ろうとするが下に方向に回避される。

その蹴り合いを武器で跳ね上げ、相手を転倒させマウントを取ると武器を首に当てた。


歓声が上がる。回避からの反撃も見事、それをなお回避してからの締め。


その動きの見事さに僕は見惚れていた。

自身の内にある何かを見つけた気分だった。


「ありゃ見事だな!武器も魔力で補助して破損しない様にしてるのか。」

「双剣使いの人の反射神経なのかな?あれは予測して回避したのかな?」

「ありゃ予測だな、戦闘経験が豊富なんだろ。」


アルヴォア親子の会話も通り抜ける。

僕が目指すのは…あれだ。


その後、その双剣使いの人は片手剣を使っている人に負けてしまったが、町に戻るまで僕の興奮は収まることがなかった。


次の日、アルヴォアに告げた。


「アルヴォア、僕は双剣使いになるよ。」

「昨日の大会では見事だったからなぁ、だが本当に目指すのか?あれは茨の道だぞ?」

「あぁ、僕に足りない何かをあの試合で理解した。剣技の型や合理性じゃなくもっと必要な物を。」

「ほう? それはなんだ?」



「美しさだ。」



アルヴォアは絶句して、しばらく固まった。

僕自身、こんな風に思う日が来るとは思っていなかった。


「……それがお前の見つけた答えなら、いいんじゃないか?剣舞とも言うしな。」

「アルヴォアなら理解してくれると思ったよ。あと5年。成人するまでに僕は双剣の扱いと戦闘方法を模索する。付き合ってくれ。」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


その後、双剣使いとしての理想を追い求め15年。

時に無謀だと笑われて、時に気が狂ったと揶揄された。

だが夢を歩むのは楽しかった。

あいつは先に夢を叶えたいようだが。


「そんな感じであいつ昔っから夢がしょぼいのよ!親父さんも眼光るし……あぁ、でも昔はもうちょっと可愛げあったわよ」

「あんまり変わってないねぇークマの人」

「クマ人…夢叶ってるのに……リーダー……強引……」

「昔のまま育ってくれれば良かったのに…なんであんな強面に……」


まだ現役で動けるうちは、先に夢を叶えるなんて許さないわよアルヴォア。

私の美しさを追い求める旅はようやく軌道に乗ったばかりなんだから!!!

ふと思いついたので書き上げました。

その内このキャラも本編で出したいな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ