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#1 - 2.ログアウト機能を失ったゲーム

意外と早く更新出来ました。

GWと投稿するとは限りません。

 五回目となる大型アップデート『永遠に住みたい人々へ』。機能を確認しようと、ヘルプ画面を開く────



 ────しかし、開かない。様々な機能を試すが、どれも駄目だった。自由に動ける事からもサーバーダウンでは無いと分かる。この世界はオルタナティヴなのか?そう思って辺りを見渡すが、確かに昨日と同じ街だ。ただ、賑わっている事を除けば。恐らく、NPCがさらに感情が発達している。ゲーム内のNPCがこれだけ感情が発達している事自体がおかしいのだが、確かに感情豊かなのだ。


 市場にいるおじさんやおばさんが客寄せをしていた。たまに売り子のお姉さんもいる。まさに街だ。さらに現実味が増しているのだ。ここまで行くとありえないという一言に限る。どこまでこのゲームの開発者は人間離れしているのだ。


 さらに街には今までいなかった別種族が住んでいる。斧を持った筋骨隆々な男性が尻尾と獣耳が生えている。あれは……犬なのだろう。違うと思いたい。


 取り敢えず、まずはホームに行く。前回、ログアウトした場所がホームで無かったために一度、ホームに戻る必要があった。そこからの情報収集だろう。大家さんとも話をしよう。大家さんはプレイヤーだった筈だ。


 市場から数キロメートルほど歩いた所にホームはある。その二階に部屋を借りている。部屋に入り、自分の部屋のままであると確認が取れたところで大家さんの部屋へ。


「すみません……。」


 コンコンとドアをノックする。すると部屋の中からドタバタという音が聞こえ、すぐにドアが開けられた。


「……あ!」


 中から青年からが出てきた。大家さんだ。青年はこちらを見ると、一気に顔を輝かせた。


「シルアさんもアップデートしたんですか!」


 仲間を見つけたような顔。明らかにアップデートをして混乱をしている。目が少し赤くなっていて、顔には泣いた後が残っている。もう気付いたのだろう────ログアウトが出来ないことに。


「大家さんもアップデートしたんだね。」


 大家さんが頷く。やはり仲間か。という事はMMOであることに変わりないようだ。VRであるのかどうかは既にはっきりしないが。この世界は異世界と言ってもおかしく無いと思う。


「多分、ログアウトできないのはバグではないみたいだ。」


「うん……そうみたい。ヘルプ機能も使えないみたいだから。」


 大家さんが泣いていた理由はそれだろう。少し視線が下がり、悲しそうな表情をした。更新名称が『永遠に住みたい人々へ』といつ名前であれ、前の世界には未練がない訳では無い。


「取り敢えず、情報収集をしよう。」


 大家さんを誘った。一人でするよりは複数人で情報収集をした方が良いだろう。そうして街へ戻ってきた。


 街を見た感じ、明らかに打ちひしがれているような人はいない。そのような見分け方をするのもおかしいが、一番分かりやすいのだ。打ちひしがれていなくても、アップデートによる突然の機能変化に戸惑っている人はいるだろう。そんな人を探していく。


 だが、そう簡単に見つかるわけが無い。この『オルタナティヴ』は、地球よりも広い土地を誇り、プレイヤーがどこにいるかは全く分からないのだ。今まではマップのような機能も存在していたが、今は無い。チートのようなスキルは使えなくなっているのだ。こうしているとまるで自分がNPCになったようだ。


 大家さんも必死に同じ仲間(プレイヤー)を探しているようだ。やはりこういう時には仲間が多い方が安心出来るというものなのだろう。アップデートをして、後悔するものも少なくない筈だ。今までも他のゲームでアップデートをしたら面白くなくなった、などと言う話はネットで目にしていた。今回に限ってそれが無い、などというのは都合が良すぎる。ゲームをするのは機械ではなく、感情を持つ人間なのだから。


「大家さん、見つかった?」


「全くいない。アップデート以前は普通にプレイヤーが歩いていたような街なんだけどな……。アップデートした人が少ないという可能性はあるけど……。」


 確かにその可能性もあるが、偶然にもこの街を訪れるプレイヤーでアップデートしたのが二人だけ、というパターンは無いだろう。もしかすればあるのかもしれないが、多くのプレイヤーを所有する『オルタナティヴ』においては有り得ない。


「街の外にも行ってみる?」


 大家さんがそう提案してくる。ボクもその案については少し考えたが、却下していた。理由は勿論ある。だから大家さんの言葉も却下する。


「それは駄目だよ。」


「どうして?」


「更新内容がはっきりしない状態で街の外に出れば、何が起こるか全く想像がつかない。危険が多すぎるよ。少なくとも人が増えるまでは街から出ない方が良い。大変だけど、街で人を探すことに専念しよう。」


「……確かにそうだね。浅はかだった、ごめん。」


「大丈夫だよ。」


 正直、シルアも街の外にはとても出たい。街の外に出るのは危険だが、逆に何かを得られる可能性があるのだ。新しいアイテムや新しい情報。その他にも色々あるだろう。街の外には魅力が多すぎる。……しかし、それでも外に行くという考えは封印した。死んだら元も子もない。何がどうあれ、命が大切だからだ。今の命の重みをボク達は知らない。

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オルタナティヴ

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