燐魚族族長マイア
4人は、合流して、燐魚族族長のマイアの家を目指した。ここに、ミリアも、この後ウラヌスの町を案内してくれるアマゾネスたちもいる。
現在ウラヌスは、多くの魚人たちが出入りするようになった。そのためマイアは、海底都市ウラヌスの南側に居を構えた。南がエリシウム島。ウラヌスの最南端が、廃墟となったアルテミス城。南に行くほど、危険度が増す。
ウラヌスの北端も、ブルーシャークや海うつぼなど、危険な生物が出没する。しかし、燐魚族にとっては、敵ではない。むしろ、転生者や、それに準ずる弱い魚人達をここにいることで守っている。ブルーシャーク(Lv30前後)ぐらいなら、警告するだけで、何とか彼らだけで、対処できるだろうが、それより強力なエネミーが来たときは、燐魚族が、全力で排除している。
マイアの住まいに向かう途中、アリーシャが、アルテミス城の隠し通路の詳細を眠眠に教わったと、興奮して教えてくれた。
吟遊詩人ギルド、柴火のギルマス、詩音は、メンバー以外は、ほとんど心を開かない人だと言われていたが、なんと、眠眠と友達だった。詩音は、入ってくる情報を瞬時に整理する能力を持っている。だから、あまり、ごみ情報を貰いたくないだけだった。人前で歌うのが好きなのだ。本当は、おしゃべりで、そういう相手を欲しがっている。詩音は、エルフの転生者。アリーシャは、眠眠に、「情報の代わりに、詩音の所に遊びに行ってね」と、言われている。
エルフは、話だけで、隠し通路まで案内できる人。しかし、後の3人は、ついていけない。
「ごめん、口で言われただけだと良く分からない」
「MSIのコウさんに、地図を貰ったよ。ここに書き込んで」
ノーマがアリーシャに地図を渡して、やっと話が進んだ。既存の城の奥に向かう通路は、西側で、魚鱗族たちが言うには、地上に向かっていることが分かっている。しかし、アリーシャが示した場所は、中央の東寄り。如何にも、秘密通路といった感じだ。
「入り口は、壁じゃないの?」
「床ってことは、地下に向かっているかもしれないね」
「う~ん、ここを開けたら、ダンジョンに水が流れ込みそうだ。ちょっと、保留かな」
「残念、でも場所を確認するでしょう」
「そうだな」
「せっかくだもんね。秘密の部屋が、近くにあるかもしれないし」
「お宝ってこと!」
ラヴィは、光物が大好きだ。そうこうしているうちに、アマゾネスが迎えに来てくれた。
マイアの住まいは、巨大な巻貝。暗い色だが、真珠の様に薄っすらと虹がかかった住まいだった。
貝殻の中は、地上の空気で満たされている。貝の中から迎えに来てくれたミリアが、その説明をしてくれた。
「いらっしゃい。マイア様が待っているわ」
「ここは、空気があるんですね。オレの生活圏は地上だけなので嬉しいです」
「私たちは、ノーマと同じで、水陸両棲でしょう。でも、伝統的に海底に住むのね。だからと言って、両棲というのを維持したいじゃない。だから、家の中は、海上と同じ環境にしているのよ。じゃあ、地下に降りるわよ。まだ建設中だけど、お客様がいらしたから今日は、休日にしたわ」
貝殻の家は、門みたいなものらしい。
「ここは、ゲストハウスよ。ヒロ専用になりそうね。地下に降りたら、また、海に潜ることになるから、気をつけて」
燐魚族は、女ばかりなので、オスは、隔離される。始祖様は、別の始祖様と結婚していて、たまに女の子を産む。しかし、彼女たちは、相性の良い種族との出会いに恵まれておらず子を産まない。とても希少な一族なのだ。
貝殻の門から入った地下世界は明るく、とても広いところだった。
「バルゴの光を見ないでね」
コロニー用の照明だ。みんな、認識していた。ドワーフの町、アルテバロンで経験済み。
地下にはとんでもない大空洞が広がっていた。その中央に、大きな気泡。その中に何軒かの建物があった。全部貝殻の家で、貝の里の縮小版みたいだ。
「みんな飛べる?それとも地表から歩く?」
「ヒロ、浮遊石」
「私も」
「私は、風の魔法を試したいわ」
アリーシャだけ、自力で浮遊することになった。ノーマは、自前の蒼剣にスロットが2つ付いているので、片方に浮遊石をはめる。
「ラヴィもアイテムがほしくなったか」
「雷玉丈がいい」
「カエラのか、それなら手に入りそうだ。今度、スロットをつけてやるよ。今日は、レッドグローブな」
全員、大きなバブルの真上から、降下することになった。ヒロとノーマは、剣を握って降下する。ラヴィは、レッドグローブを床に押さえつけるようなポーズで降下。アリーシャは、大きな葉っぱのような雲。エアークラウドを発生させて、その上に乗って降下した。アリーシャは元々浮く。だが、長距離は無理。降下だけならと、頑張っている。一応、いざという時のために浮遊石を持たせている。
「みんなすごいのね」
「ミリアさんの方がすごい」
「飛べるなんて知らなかった」剣にぶら下がっているとしか見えないノーマが驚く。
「マイア様は、飛べるわよ。私は、ぷかぷか浮くだけ。よっぽど、海の中の方が早いわ」
ひときわ大きな巻貝の家の前に降りた。ここで、一族の会議もするのだろう。周りに比べてとても大きい。
マイアの家に入ると、側付きの人達に歓迎された。ミリアが約束通り、食事をおごってくれる。みんな、ヒロや、ノーマや、ラヴィや、アリーシャを見ようと集まっていた。
海底で、普通の食事ができるなんて思ってもみなかった。
それも、何でも旨い。
どこに行っていたのか、マイアが食事中に現れた。
「ヒロさん、皆さん、お口に合いました?」
「美味しいです」
「びっくり」
「これ、海大豆ですよね。なんで、お肉の味がするの。こんなの食べたことありません」
「ノーマさんには、そのうち、秘密のレシピを教えてあげましょう。ヒロさんはどうですか」
「旨いです。地上と変わらない生活をしているんですね」
「まだまだ、海中でしか生活できない姉妹か多いので、海底で暮らすしかありませんが、そのうち、地上で暮らすのが、私たちの夢です」
「そうでした。アマゾネスの人やミリアさんとムロ退治をしていた印象が強かったですから、忘れてました」
「現在一族は2000人余り。そのうち地上で暮らせる姉妹が、250人ほどですから」
「皆さんパグーですか?始祖様は、何処にいるんですか」
「私たちは、全員パグーですよ。龍王の庇護にあずかっています。始祖様の居場所は内緒です」
実は、マイアが始祖。一人で子供を産むことができるが、その秘密を知っているのは、ごく一部の人のみ。
「でも、私は、テレパシーで、始祖様とコンタクトできます。さっき、お話していたのですよ。始祖様から託宣をいただきました。私たち一族の面倒をヒロさんが見てくれるそうです」
「オレですか?」
「そうかも」
「始祖様に見込まれたのよ。ベロニカ様も打ち解けているって感じだったし」
「そうか?」
「ベロニカも苦労しているのよ。親が親だから」
「知っているんですか!」
「マーレでしょう。ちょっとだけ始祖様から聞かされました」
「本当! お父さんが一生懸命調べている人よ」
「やっぱりマーレ様って、ベロニカ様のお母様ですよね。私のお母さんとイルマ様の推察通りだわ。どんな人か聞きたいです」
「すごい話来たー」
三人がすごい食いつきを見せたので、マイアが引いた。
「おまえら」
「族長様に、失礼ですよ」
「少しぐらいならいいでしょう。始祖様から聞いた話だけですよ」
三人とも、分かりましたとか、うんうん、とか言って目をキラキラさせてマイアから離れようとしない。
「マーレは、人魚だそうですよ。でも、人魚の始祖様ではありません。一度、行方不明になった後、復活した姿が、人魚だったそうです。彼女は、世界を構築できる人。なんにでもなれる人なのです。でも、なぜ、人魚になって復活したのかは、分かりません」
「いつ復活したんですか」
「創世時代です。でも、それが分かったのは、ずっと後ですし、その後のことは、分からないそうです」
「ありがとうございます。始祖様の事が聞けてうれしいです」
「あの・・マイア様」
「ラヴィが聞きたいことは分かります。ナーシャのことですね。ナーシャも、マーレと一緒に居たそうです。美しいエルフの姿をしていたと聞きました。もう一人、黒髪の綺麗な人種の女の人とも一緒だったそうです。リサは、バハムートと言われていたそうです。私が知っているのは、これで全部です」
「私たちと一緒だ」
「そうだな、人魚、エルフ、火竜じゃないか」
「すごい収穫。リサさんの名前は、いままで分からなかったよね」
「ありがとうございます」
「お役に立ちました? でしたら、ヒロさん、私たちの姉妹をよろしくお願いしますね。ヒロさんが私たちを地上に導いてくれるそうです」
「ピンとこないです。多分ずっと未来の話ですよね。その時が来たら頑張ります」
「いい返事です」
この後は、和やかな話になった。ノーマは、ミリアに城の地図を見せて、隠し通路のことを報告していた。




