土龍王
中央広場につくと、中央に噴水があり、その噴水に向かって、7つの大通りが広がっている。そこに、7匹の土竜が、のしのしとやって来た。ジャスミンが言うには、こっちのデューン山に土竜は7匹しかいないそうだ。オレにはこの七大竜が神聖な龍に見える。ジャスミンに言わせれば、極つぶしだそうだ。みんな、寝るのが好きだと言っていた。
ガブが、一匹の土竜に、「噴水を浄化してくれ」と、言っている。
「イオ頼んだぞ」
ギャオーーーン「キュア」
すると、水が、噴水を浄化。ドワーフが、その水を排水した。
「ファング、樽を噴水においてくれ。みんなファングだ。ワインを持ってきた。ハイネの旦那になる。後で祝杯をあげよう」
やっぱりファングは、ハイネの婿養子に入ったような雰囲気になっている。二人ともその辺は、かまわないらしい。雰囲気を合わせている。でかいファングが頭を下げ、ハイネが手を振った。
二人は、もうすぐ結婚する。ラヴィは、ハイネの嬉しそうな顔やドワーフへの対応を一生懸命見た。羨ましかったし、自分もああするのかなと見に焼き付けた。
「さあ、土竜たちよ。頼んますぞー」
七匹の竜たちが、一斉に「ドランゴ」を唱えだした。ドワーフたちも最近トンと聞かない長い詠唱。物凄い魔法のはずなのだが、みんなワインを飲みたい一心だというのが、チープすぎる。
ヒロは、飲んだのは、ガブだけなのに、なんで、みんな、こんなに熱心になるんだろうと頭をひねる。浮かぶのは、水竜のテレパシーによる情報共有能力なのだが、ドワーフであるハイネを見る限りそんな感じもしない。
七匹とも同時に詠唱が終わった。
ギャオーーーン「ドワンゴ」
ワイン樽からワインがあふれ出し、地下の給水タンクに溜まっていく。そして噴水となって甘く香しい匂いを中央広場に振りまいた。
ひょっとラヴィを見ると真っ赤な顔をしている。
匂いだけで酔ったな
「ラヴィ、1杯ぐらい飲んでもいいけど、広場の端に行け。顔が真っ赤だぞ」
「なんだかくらくらする」
酔うの早っ
ガブが宣言した。
「みんな飲めーーーーー」
こうなると七大龍もドワーフもない。みんな、噴水に殺到した。ある所では歌が始まり、その近くでダンスが始まった。ヒロは、キャンプ道具のカップを出してワインをすくい、広場の端にホップと居るラヴィの所に行った。メイドたちはみんないける口らしい。
「ごくろうさん。ホップも飲んでいいぞ」
ガオーーーン
「甘いからって、一挙に飲むなよ。悪酔いするぞ」
そう言って、ラヴィにワインを渡す。
「おいしい!」
「悪いけど、ここで大人しくしていてくれ。おれはちょっと、ジャスミンさんに聞きたいことがあるんだ」
「すぐ戻ってくる?」
「ジャスミンさんが、デューン山の土竜は七匹だって言っていただろ。ということは、この中に、土龍王がいるってことだ。見つかったら呼びに来るよ。アギラスと戦わなくて済むんじゃないか」
ラヴィは、ぼーっとしながらヒロに手を振った。なんだか気持ちいい。寝ちゃいそう。
それを見たヒロが、マーナに言ってラヴィについてもらった。カエラは、ガブガブやっていたし、サファイは、珍しい土竜を観察してきょろきょろしていたからだ。
ジャスミンは、ホップのビロードの毛並みが気に入ったみたいだ。一緒に噴水のたもとで飲んでいた。
「ジャスミンさん、土龍王と話したいです」
「嬉しいこと言ってくれるね。うちの大きいだろ。呼ぶと、みんなに迷惑かかるから、こっちから行こうかね」
ちらっとラヴィを見ると、もう、寝ていた。マーナが付き添っているから心配ないかと、置いて行くことにした。
「ホップも行こう。ヒロ、乗せておくれ」
ぐわん
ホップが、ジャスミンのボディランゲージを理解している。他のドワーフも、ホップに話しかけている。今は、飲んだくれにしか見えないけど、ドワーフって文化の進んだ種族かもしれない。
結局ガブと、たぶん若手かな、ドワーフの年齢は、分かりにくい。ディックもホップに乗って土龍王の所に行くことになった。ディックは、腕っこきの鍛冶屋だとガブが自慢していた。
「ガブさんは、腕っこきの、建築士なんですか。龍王城建設の監督をしていたんでしょう」
「違う、あれは趣味。本業は、酒作りだ。ワインか。本当にうまい酒だな」
それで、みんな、目の色を変えたんだ。
ガブが、ホップに乗れて上機嫌になった。
「ワハハハ、楽しい。そういえば、エドガーの奴、起きとったぞ。珍しいこともあるもんだな」
「今日は、お客さんが来るって言ってたからね。もしかしたら、ヒロのことかねぇ」
?・・・・さっき、うちのって言ってたし
ジャスミンに、エドガーのことを聞こうと思ったが、ディックに話しかけられてしまった。
「エンジニアのディックです。エルフに頼まれて、船を試作しておるのですが、不評で。それは、試乗していないからなのです。後で、ヒロさんに乗船していただいて、エルフに感想を言って貰いたいです。ここに来てもらえないので、何とも話が進まなくて」
「ほら、あの人達って、ふわふわしていて、足が地についていないじゃない」
どっちも出張したがらないんだ。
「あそこに、エルフのサファイがいます。おれが、見に行ってくれと言っていたと言えばそうしてくれると思いますよ」
「本当ですか。ありがとうございます」
ディックは、ここで、ホップから降りて、サファイの所に向かった。
土龍王は、立派な角が2本生えている。カギ爪が太く、いくらでもトンネルが掘れそうな大きな手の平をしている。足も健脚、二足歩行できる土竜だ。
「エドガー」
「あんた、ヒロを連れて来たよ」
やっぱり、ジャスミンさんは、土龍王の王妃だ。話し方が、あけっぴろげだから、近所のおばさんかと思った。
グオーーーン 「見つかったか」
いやいや、初めから隠れていないから
「ヒロです。ラヴィは、ワインを飲んで寝てしまいました。起こしてきましょうか」
「かまわんよ。・・。30分ぐらいで、目を覚ますじゃろ。ふむ、創世時代の人族か、珍しい」
「そうなのかい」
「ぶったまげた」
「ジャスミンさん、ちょっと話しましたよね」
「ラヴィ達と婚約したんだろ」
女の人って・・・
「これなんですが」
ヒロは、サンプルというか、いっぱい持ってきたウラヌスシェルをアイテムボックスから出した。
「すごいね。ナヤ様の貝かい」
「そんなすごいお宝じゃないだろ。大体白くないじゃないか」
「しかし、癒しの波動を感じる」
「ナヤ様って、甲殻族の始祖様ですよね。白いウラヌスシェルでしたら、一枚発見されています」
「もし本物なら、回復効果だけじゃなく、浄化作用もあるはずだよ」
「エルフに調べてもらっています。浄化作用の話をしておきます」
「わしらの所に持って来たら、一発だったな」
「シンじゃったかなヒロ。仁人から話は聞いとる」
仁人とは水竜王の名前。土竜王と水竜王のテレパシーは強い。よい話し相手。
「水竜王と話ができるんですか!」
「わしらならな。じゃが、こういうのは、関係者に直接会うのが、実感持てるじゃろ」
頷くヒロ
土龍王は、意識を広げて、地上を見た。
「南のシシガーの森と、北の摩周湖が騒がしい。確かにおるの」
「摩周湖も・・・・水中戦!!!!」
シン化対策は進んでいるが、討伐準備はこれから。転生者を育てるのが早道。
「エドガー、なんの話だ」
そこで、シンの話になった。シンは、生き物の悪の心を増大する。身近なものに感染し、最後は、惑星を滅ぼそうとする。厄介な現象だ。
「結晶光に当たると、結晶化するのは知っておろう。一度に強い結晶光に当たると、白い砂のような結晶になって死ぬ。ところが、弱い結晶光じゃったらどうじゃ。生きたまま結晶化して、生物でなくなる。生き物としたら、それに抵抗する。じゃから、結晶核ができる。結晶核ができたと言っても、同じじゃろ。奴らは、生き物でなくなる。そうなると、生き物を羨むようになる。それが、時に激しい怒りや恨みになるんじゃ。仁人と話し合ったシンの正体とは、こんなところじゃろう。我がパグーも、結晶光の影響を受けだしたということじゃ」
「やばいじゃないか」
「ウラヌスシェルが、対策なんだろ」
「シンは、癒しの波動で霧散します。竜族は聖なる生き物ですから、シンにかかりにくい。ですが、抵抗力がない人形の時に、シンに侵されると、とんでもない化け物が育つかもしれないんです。ですから、これをみんなに掛けてもらいたいです」
「了解したぞ。ガブ、地中で眠っている子供たちは、何人いる」
「22人だ」
本当に少ないな。持ってきたので足りそうだ。
「竜宮城の子供たちには、もう、配ったんです。後は、地中の子たちだけです。ここに22個あります」
「親に、掛けさせるようにしよう」
「そうじゃな」
「さっき言ってた、転生者の子には、掛けさせたんだね」
「ハイネもその一人です。みんな、ウラヌスシェルのネックレスを首にかけています」
「ところでじゃ。本当は、100階層で待っているつもりだったのじゃが、ワインが出たじゃろ。それに免じて、すぐBOS戦をさせてやるがどうじゃ」
げーーー。100階層もあったんだ。もう用事は、終わったんだけどな。アリーシャにも、ノーマにも声かけちゃったし、やるか
「お願いします」
「よく言った。ラヴィが回復したら言いなさい。わし専用の道を通ることを許可する」
「縦穴なんだけど、飛べるかい」
「何とか」




