我狼(ガロウ)のリーダー ワンダ
ラヴィ達の前には3匹のガロウが、立ちはだかっている。その中の1匹が精悍で、一回り大きい。色も少しどす黒い茶色で、強そうに見える。多分、群れのリーダーだ。
「他をお願い。あいつは別格よ」
カエラが、そのリーダーに立ちはだかる。
「ホップ!」
グルルルルル
ラヴィとホップがペアになった。二人は、リーダー以外の2匹に突っ込んだ。ラヴィがホップの背中に乗りぎゅっとビロードのような毛並みの毛を握る。
ガオッ
ギャフン
ホップが、BOSの右にいたガロウに飛びかかる。相手は、それを地面にはいつくばって流そうとする。ホップは、簡単に空中で反転して前足で、このガロウを捕まえた。ホップは大きいので標的になりやすい。案の定BOSの左にいたガロウが、ホップの首を噛もうと突進してきた。ラヴィがそれを許さない。ホップの背中から飛んで、肩辺りを蹴った。そこはガロウにとって体の芯のような場所。大きく吹っ飛んだ。しかし、ダメージが小さい。すぐ着地してラヴィめがけて突進を開始した。
ラヴィは、蹴りやタックル主体な人なので、おおざっぱな攻撃に見えるが、とても正確だ。戦闘経験が長いのは、マスコットのような竜形召喚獣で、とても小さかった。だから、相手が良く見える。今のは、わざと肩を蹴って2体を引き離し1対1に、ホップも1対1になるよう持ち込んだ。格上の相手だ。だが、カナン山のワーウルフもそうだが、オオカミタイプは、相性が良い相手。ワーウルフは、レベル上げのために、ここのところ、ずっと戦っていた相手。
カエラの本来のスタイルは、ストロングタイプ。武器を使わない。普段、雷玉丈を使っているのは、その方が、女の子らしく見えるので、愛用している。それに雷玉丈は、電磁力を使うと、敵を引き寄せてくれる。雑魚を集めてせん滅するには、重宝する武器。今回は、そうはいっていられない。従来の戦闘スタイルになった。
カエラの金色の髪がキラキラし、額や頬骨、肩や腕、腰や足の部分が黒く高質化する。ゼオは、これが全身に及ぶ。カエラも、そう、できるのだが、これでは、もはや男と言われても反論できないので、ここまでで止めている。幸い、ノーマが、防御力の高いチョッキを作ってくれたので、ここを高質化させなくてよい。だから、胸がある。これで、男だとは言わせない。
もし、全身を鎧化したら、黒ずくめの武者のようになる。そうなると全身が帯電しやすくなり、着ている服など、焼け落ちてしまう。周りから男に見られるのは嫌だし、裸になるのはもっと嫌だ。だから、本来は、すごい実力者なのだが、それを出すのを嫌っている。
カエラの拳や踝が、放電現象をおこしだした。拳圧もスピードも、普段を凌駕する。
ワオーーーーーン
ロウガのリーダーは、カエラのこの姿を見ても、まったく怯まない。雄たけびを上げた。
「あなた、ワンダね。こんなところに住処があったのね」
カナン山は、気象が激変する。南側は穏やかなのだが、それでもごくたまに飢饉になる。その時、この山のすそ野にあるグランの畑は、カナン山のエネミーに荒らされる。そんな時は、畑の山側に芋をいっぱい植えて、ちょっとは、エネミーたちを助ける。しかし、基本、居座られても困るので、追い返す。猩々は、その辺がうまくて、猩々のリーダー太郎が、食料をねだりに来る。
基本、追い返すので、罠を仕掛けたり、最終的には討伐するのだが、どうしても討伐できなかった賢いオオカミが、ワンダ率いるガロウ達だった。ガロウは、罠をすり抜けて、畑を荒らす。討伐しようとしても、先に逃げられてしまう。そしてガロウのリーダーが、必ず討伐隊に向かって、ワオーーーーーンと雄たけびを上げるので、ワンダと呼ばれていた。
ガルルルルル
ワンダは、すぐに攻撃しないで、左右に八の字を描き。攻撃しあぐねているという仕草をする。
見え見えよ
ワンダは、カエラに対する殺気を隠しきれない。
両者は、同時に飛びかかった。ワンダが、カエラの柔らかそうな胸をひっかこうとした。カエラは、これを嫌って立った状態のまま、全身を反転させた。頭がワンダ側になり両者が一瞬睨み合う。
「雷撃拳」
雷の宿った拳がワンダの頭上を襲う。これをかわしたワンダが、反転ジャンプをして、空中のカエラを襲う。カエラは、更に全身を反転させて両足で、これを防いだ。
サファイとマーナは、カエラを助けたいが、三匹のガロウが、リーダーを援護せんとカエラだけを狙っているので、遠距離攻撃で牽制するしかない。マーナなどは、手前の2体がヒロの所に行かなかったら、それとも戦う気でいた。その2体をあっさり倒したヒロが、マーナに指示した。
「マーナ、三匹の所に行っていいぞ」
これを聞いたマーナが、剣を抜いて前衛に躍り出た。マーナは、海王の剣術道場に通っていた人。団子になっていた二匹に上段で飛びかかる。サファイは、もう一体がマーナに横撃しないようザンで、けん制する。
ガチの勝負になったと、戦況を見たヒロが、腕組みして、観戦状態になった。よほどのことが無いかぎり、今後は、手を出さない事に決めた。ヒロは、自分を興味津々で見ているワンダの嫁の方を見て、にやりとした。
ヒロは、カエラが、ガロウのリーダーを名前で呼んでいるし、みんなもリーダーを殺すなと言っている。何体か殺しちゃったけど、よかったのかな。
などと考えている。
戦闘を見ている分には、カエラとワンダの攻防が激しい。
剣技自体は、オレよりマーナの方がきれいだな。それに、ホップとタメ張るなんて、あの小っこいのすごいや。と、ラヴィやホップの攻防を腕組みして見た。
白っぽいガロウが、ファングもハイネもサファイまで無視して、自分の近くにやって来た。びっくりするほど素早い。
こいつ、ワンダの嫁じゃないのか。なんだか、キラキラした目でオレを見ている
手を差し出すとペロッと舐めて来る。なんだか可愛い
ワフン
手を伸ばして、ウラヌスシェルを触る仕草をする。
「これか?」
実は、ウラヌスシェルの首輪をしたままだった。水竜の所で、転生者か幼体に足りない人がいたらあげようと思って首にかけていた。ウラヌスシェルは、パールの貝殻で、ちょっと黒みがかっていて、そんなにキラキラしていない。でも、パールの光沢がきれいな、貝殻の首飾りとしたら立派なものだ。
「やるよ。仲間をいっぱい倒して悪かったな」
そう言って、ウラヌスシェルを首にかけてやった。紐を調節してぴったりにした。
わふん
ワンダの嫁は、嬉しそうに吠えた。そして、定位置に帰ってうずくまった。
サファイは、戦っている最中で、それどころでなかったが、これを見たファングとハイネがヒロの所に来た。ファングが敬遠していたのは、その白みがかったガロウだったので、後ろに敵は、もう、居ない。
「今のは何だったの?」
「あいつは、敵じゃないのか」
「さあ・・、ウラヌスシェルが、欲しかった見たいだったからあげました」
「それはわかるけど・・・」
「さっき、ハイネさんも言ってたじゃないですか。リーダーの奥さんなんでしょ。だから、リーダーの言うことを聞かないで、おれ等を攻撃しなくてもいいし、結構好きにしているんじゃないですかね」
「カエラに、リーダー・・ワンダだったかしら。彼も殺さないように言って」
「それはみんな心得ているみたいです。実際、いい勝負をしていますよ。みんな」
3人は、双方の戦いを観戦した。
ワンダに胸ばかり狙われたカエラが、ブチ切れた。全身を鎧化し、両手の拳をガシンと合わせて、電撃を最大にした。カエラの拳を中心に電気の球が広がっていく。
「雷撃掌」
急近接して、手をガバンと広げて、思いっきりワンダに電撃を打ち込んだ。
ギャイン
「あーあ、やっちゃった」
サファイが、あきれる。
ノーマのチョッキ以外は、全部燃えてしまった。カエラが止めを刺そうとする。
「止めはダメよ。ガロウたちに恨まれる」
サファイが大声をあげた。
いつの間にか、白っぽいガロウが、ワンダの前にいた。カエラはこれを見て、分かったわという顔をした。
他のガロウたちは戦意を消失。ここでの戦いが決着した。戦況は、というと実際は、ホップとラヴィをヒロが救出に行かなければならない場面だった。もしヒロがいなくて、カエラが切れなかったら、逃げて、隠れて、救出待ちという状態になっていた。
カエラが、ゼオみたいになって、元に戻れなくなった。元に戻ると、ほとんど全裸になる。
「ハイネさん、ガロウを回復してやってください。こいつにも、ウラヌスシェルをやるか。カップルだもんな」
そう言って、ワンダにもウラヌスシェルをかけてやった。ワンダの嫁が、おれをなめて喜んだ。ハイネだと少ししか回復できないが、再戦されても面倒なので、こんなところだろう。
ラヴィがカエラに服をあげてとやって来た。
「カエラにワンダーをあげて。あれだとズボンも袖も調節できるでしょ」
「お願いします」
カエラが恥ずかしそうにラヴィの後ろからやって来た。
ワンダーは、砂漠用で、さすらい人の服。砂が入らないよう、裾などにひもがついていて、ぎゅっと絞めることができる。
「錦糸が、まだ残ってないかな。カエラにも必要だよ」
錦糸は、錦綿で紡いだ糸。金糸、銀糸、赤糸がある。これは、超希少アイテム。元々、火と高重力耐性がある。竜の髭で、裁縫して、ヒロがクラフトすれば、雷耐性もある服になる。ゼオで大丈夫なのだ。カエラがこうなっても問題ない。
ずいぶん遠くの陰で着替えて、カエラが戻ってきた。
カエラは、雷竜人なので身長が高い。ヒロと同じ、身長180あるので、ぴったりだった。
ものすごくカッコいい。
ファングが唸った。
「カッコいいな。男よりカッコいいんじゃないか。いや、むしろ男だよ。うん」
「ナンデスッテーーー」
「カエラ、ダメ!」
カエラの目が金色の攻撃色に変わる。
ドン、バリバリバリ
さっきのワンダよりきつい雷撃が、ファングに決まった。
ファングは、水晶洞に入って随分レベルが上がったと言っても、まだLv18だ。
「キャー、ファング」
ファングは虫の息だ。ワンダよりひどい重症。慌てて、ハイネが、ホイを打つが間に合わない。ヒロが、ハイポーションをハイネに渡した。
「すいません。カエラは、自分のことを男だと言われると切れるんです」
マーナも、サファイも、ホイが打てる。一緒に治療に加わった。
「カエラ、カエラ」
ガウン、ガウン
「何!」
「チョッキは、胸を強調するタイプでしょう、あれも着て」
「あれ?ラヴィさま?」
全員、この人は、危険だと思った。
ファングも雷竜人だったので雷には多少耐性があったから、虫の息で済んだ。そして、雨降って地固まるというか、死にそうになったのと引き換えにファングに雷の強耐性が付いた。。




