クリスタルソード
水竜のみくまりは、心配していた。あれからずいぶん経つ。竜玉を取ってくるだけなのに、四人とも帰ってこない。それで、いつも眺めている海を見ないで、ターナ山を心配そうに見ていた。遠くにヒロ達を見つけた時は、ほっとした。
「遅かったの」
「すいません。ジャイアントコッコのお腹の下が気持ちよくって、つい寝てしまいました」
ぎゃぎゃう(きもちよかったー)
「なんと、のんきな」
「それで、これでしょうか」
ヒロが、ライトボードから、竜玉を取り出した。
「竜玉って、すっごく大きいんですね」
ぎゃう
「おおこれだ。わしのは特別かのう。みんなのは、この半分もないぞ」
「ちょうど、ジャイアントコッコの卵の大きさと同じぐらいだったです。これをきっかけに卵を産んで、温めていました」
ファングが解説する。
「まあ、役に立ったんならええか。そうだ、お礼をせんといかんの。ラヴィ、ヒロ、ハイネ、ファング。湖の中に行くか」
竜玉を持ち主に返したのにイベントが終わらない。みんな、みくまり様について行くことになった。
人形に進化しても、竜は、竜。ハイネも、ファングも、アイテムを使わなくても入水できる。そうでないヒロは、ラヴィを召喚したまま、風の結晶石(エアーを発生する)を輪っかが連なったような潜水具にセットして入水した。ラヴィがいると水の中でも、ラヴィを通して水中の種族と話ができる。
みんな、ミラ湖に入水した。ヒロは、頭部に有るエアーフィールドを使って息をする。たまに、ぷくんと気泡が頭から離れる。火竜は水中で活動できないが、ラヴィもファングたち同様、水中もOKなひと。そのまま湖の中に。
みくまり様が、強力なテレパシーで、ミラ湖中の水竜にラヴィが来たと告げる。ラヴィは、新参のファングとハイネを連れて、いろいろな人に挨拶しまくった。こっちが、ミラ湖中を回る必要はない。水竜は、テレパシーで、つながれるものだから、向こうから来てくれる。だから、水竜が集まる、集まる。
「みんな、ラヴィだ。挨拶に来てくれたぞ」
「まあ、こんな田舎に」
「かわいいわ」
「とんでもない波動だぞ」
「こんなに小っちゃいのに」
ヒロは、みくまり様を通して、ラヴィの召喚獣形態のことを説明した。それに、ファングとハイネのことも紹介する。それを聞きながら、水竜たちは、ラヴィと、じかに挨拶する。ヒロは、水竜の情報共有能力の高さを改めて実感した。
成体ではないので、遅まきながら、幼体で人形の水竜も続々やってくる。地元の水竜たちから見たらベビーブーム状態。ほとんどが、転生者で、エルフたちからもらった、ウラヌスシェルのペンダントをしている。彼らは、ロードオブ召喚獣の有名人。ギルド、ブルーブルのギルマスの所に集まった。ヒロも有名人なのだが、大人しくプレイしていた人なので、目立ちたくない。それで、こそこそしていた。
ファングさんがいてくれて助かるよと、思っていたのもつかの間。水竜のテレパシーによる情報共有能力のおかげで、すぐばれて、苦笑いした。
ラヴィが延々と、水竜たちに挨拶している。ファングとハイネも竜族。ラヴィに引っ張られる。それで、結局一番暇なヒロが、転生者たちに囲まれた。
「ヒロ、おれ等は、ラヴィの所に行くよ。グランとミラ湖は近いからな。ちゃんと挨拶しないと」
「みんなをよろしくね」
「おれも・・」
置いて行かれた。
「ヒロ君、ラヴィたちと婚約したんですって」
「おれ等の中で一番の玉の輿じゃないか」
「やっぱりラヴィと結婚するんだろ。火龍王だもんな」
火龍王とは、オレの二つ名。それにしても、みんな言いたい放題だな。
「皆さん、瞳が、深いブルーなんですね」
「水竜の特徴よ」
「テレパシーが強い証拠さ」
「でも、空を飛べる人は、少ないそうだよ」
「海には、行かないんですか。オレ、水竜王を知っていますけど」
「ラヴィの曾おじい様だもんね」
そこに話を戻すか!
「川を下ると行けるけど、当分無理さ。俺は、ここで、伏龍になる」
「おれは、海かな。海だと冒険できそうなんだ。でも、ここで、みんなの知恵を詰め込んでからかな」
「私は、ずっとここでもいいかも。みんな優しいし。知識を探求している人は、みんなここにいるのよ」
みんな好き好きに話すが、なぜか全部わかる。水竜の能力なのだろう。
「いざとなったら、知恵を借りに来ます」
「水竜は、魔法に詳しいよ」
「生命の成り立ちとかもそうよ」
「宇宙のことは、エルフの方が詳しいかな」
「宇宙に行けるんですか」
「行けるわよ。どれぐらい未来に来たと思っているの?」
「ですよねー」
これは、スーザンに、詳しく聞かねば。
アリーシャの母、スーザンは、観測者。
そう言えば、観測所には、宇宙空間が映し出されていた。
ラヴィ達が、みくまり様と白銀の美しい水竜と共に戻ってきた。
「ヒロ殿、エドゥルじゃ。わしゃ、水神竜とか言われておってのう。まあ、その、巫女ちゅうことじゃ」
「みくまり様は、雨を降らすことができる方ですよ。もっと威厳を持ってください」
なんだか、巫女さんの方が神様より威厳がありそうだ。
「それで、これなんですけど・・」
エドゥルが、剣の柄をヒロに差し出した。
「ヒロは、剣士なんだろ。水竜が祭っているご神体が、光剣だって聞いてちょっと見たいと、みくまり様に話したら、あるにはあるが、誰も起動したことが無いというんだよ。起動したところを見たいじゃないか。おれは、バーサーカーだから光剣は扱えない。ちょっと起動させてみてくれないか」
「ほら、水竜は、みんな剣士じゃあ、ないじゃない」
ハイネがヒロに耳打ちする。
なるほど
「柄にスロットが4つありますよね。何もついてない」
ぎゃう
ラヴィがヒロの肩にとまって、ご神体をのぞき込む。
「ごめんなさい。これはオリジナルじゃないんです。たしか、光と、水。風と、浮遊石が付くはずです」
「どれがメインなんですか。全部持っていますけど」
「本当か!」
「ほんとうですか。これは、クリスタルソードと言います。光と水の結晶石でお願いします」
これを聞きつけた水竜たちが、再度、ここに集まりだした。
ぎゃう、がっ、ぎゃうぎゃう(抜刀したのを見るのは、水竜さん達の悲願だって)
「やってみるか」
ヒロが光と水の結晶石をスロットにはめ込んだ。
クリスタルソードの柄は、刀部分がへこんでいて、穴になっている。ヒロが、気合を入れると、そこから光刃が大きく出てきた。大きく膨らんだ光刃が、落ち着きだすと、60センチぐらいの光るクリスタルになった。光刀は、青く透明で、中に水が流動するレリーフが浮かんでいる。
「クリスタルソードだわ」
「初めてじゃ、初めて見た。ラヴィもよく見ろ。わしら最初のご先祖様が持っていた武器じゃぞ」
ぎゃうーーーー
ラヴィは、ヒロの肩にとまっているから、かぶりつき状態。
ファング達もそうだが、多くの水竜が、みくまり様の強い念を受けて、クリスタルソードを見た。みんな目に焼き付けている。
【コンクラッチレーション】
この時、ヒロ、ラヴィ、ファング、ハイネは、コングラッチレーションの光文字を見ていた。結果、みくまり様のゆうつは、竜玉もそうだが、クリスタルソードを一目見たいということだった。
4人は、この難解なイベントをやり切った。
ヒロとラヴィのレベルは上がらなかったが、水の結晶石が大量にドロップ。ラヴィは、ジャイアントフレアーという技が使えるようになった。これは、大きな火の玉を天から落とす技。これで、広範囲攻撃ができるようになった。ジャイアントコッコは、火属性。
ハイネは、レベルが、8に上がった。そして、ジャイアントフローラと言う腕輪のアイテムがドロップした。これで、ファイヤーボムという技が使えるようになった。ファイヤーボムは、大きな火の玉を投げるわざ。但し、レベル30にならないと使えない。しかし、微量ながら、火の攻撃を軽減してくれる。ジャイアントフローラは、コッコが集めたガラクタの中に有った宝。腕輪には、赤いキラキラするルビーがついている。
ハイネは、真っ赤な顔をして喜んだ。
ファングは、Lv11になった。レベル10を超え、人から見ると斧使いの達人の域に到達した。斧のみで、攻撃を受けるアックス陣というスキルが使えるようになった。斧を回転させながら敵の攻撃を受ける。常人の腕力ではできない剛の技。
「よし、斧だけで、攻防ができるようになったぞ」
ハイネの心配を他所に、ファングは、水晶洞で、戦闘に参戦する気満々になった。二人にも水の結晶石が大量にドロップした。
今回、大したものがドロップしなかったヒロだったが、クラフトレベルが異常に上がっていた。クラフトレベルは、ムロ討伐前後に、散々主要戦士に武器や防具を作っていたので、Lv100になっていた。今回、Lv104になり、クリスタルソード作成のスキルが加わっていた。これで、クリスタルソードのオリジナルを作れるようになった。
「は~、ええもん見た。エドゥル、4人を案内するんじゃ。マナ藻を3人に食べさせてあげなさい。ええか、3人とも、これは、特例じゃぞ。皆には言わないように」
「美味しいわよーー」
マナ藻は、竜族の最高食材。これだけ食べていても、成人できる。完全補完食。
「みくまりさん。おれ、クリスタルソードをクラフトできるようになりました。多分オリジナルが作れるんじゃないかなと思います」
「本当か!!! すまんが作ってくれんか。レプリカは、いつかは、壊れるでな」
「了解です。素材に水晶がいるみたいなんで、ちょっと待ってください。多分、水晶洞で、ドロップするんじゃないかな」
「皆の衆、聞いたか」
ヒロに、水竜たちからのお礼が聞こえた。物凄い量のお礼が押し寄せているのに、個別にお礼を言っているのが分かる。ラヴィが誇らしげにヒロの肩にとまって、頭をヒロに摺り寄せた。




