みくまり様のゆうつ
水晶洞は、ミラ湖の北東のその先にある。ヒロが、みくまり様に事情を話して謝ることになった。ついでに、ラヴィを水竜たちに紹介しようということになり、朝早く出かけることになった。
ミラ湖に行くと、老水竜が、西のターナ山を恨めしそうに見て、ため息ついていた。カエラが、ヒロに耳打ちする。
「あの人が、みくまり様です。変ね、いつもは、南のクコの森や、その先のヘスティア海を眺めているんだけど」
「カエラが話しかけて、知り合いなんでしょ」
「ハチと一緒に、クコの実を盗んで怒られてた方なんですけど」
カエラが、ラヴィに言われて、渋々、みくまり様に声をかけた。
「みくまり様、おはようございます」
「なんじゃ、カエラか。メイド学校はどうした。あそこにしか、女の戦闘科がないからなどと、不謹慎な動機で入りよって」
「えっと、卒業しました。今は、ラヴィさまのメイドをしています」
「本当か。よくやった」
ラヴィが、カエラの後ろからひょっこり顔を出した。
「ラヴィです」
「なんですと。顔を良く見せてくだされ」
ラヴィが、みくまり様の前に立った。淡水の水竜は、それほど大きくない。でも、みくまり様は、別格で、頭全体の大きさが、人の身長ほどあり、体長が、37メートルある。
「火竜を思わせるぞ。確か、15才のはずじゃ。なのに人形のままなんか」
「はい」
嬉し、恥ずかしそうにいう。
「ちょっとヒロも、挨拶して」
「白井広人です」
「婚約したんです」
「なんと!人間とか」
ラヴィが、そうだと頭を縦に振る。
「えーー、人魚のノーマと、エルフのアリーシャともそうなりました」
「そうなんか!」
ここで、全員が、あいさつした。ホップは、寝そべって大人しくしていた、たまたま、ターナ盆地のシシガーの森が見えるので、懐かしい。ぼーっとそっちを見ていた。ホップは、まだ、実力不足、故郷には帰れない。
「みくまり様。この話って有名ですよ。どうしたんですか、みくまり様らしくないです」
カエラが、やっぱり、みくまり様が変だと、首をかしげる。
「はーーーー、竜玉を盗まれてしもうてのう。時世が入ってこんから不便しとるんじゃ。盗んだのは、多分シシガーじゃろ」
竜玉を使って水竜同士通信している。テレパシーの発進や受信振器のような役目や、空を飛ぶのにも竜玉を使っている。
「ターナ盆地の?」
「違う、ターナ盆地のシシガーが、そんなことするか。太郎が、しきっとるんじゃぞ。ターナ山の山猿どもじゃ。竜玉は、自分の一部でな。自分から離れても、いつの間にか手元にあるもんじゃ。ところが、一向に帰ってこん。たぶん木の中にでも隠しておるのじゃろ。透明な玉じゃから、宝物だと思っとるに違いない」
シシガーとは、サルと人の合いの子。猿人類で、猩々ともいわれている。
「聖戦士の斥侯隊か雷竜隊に捜索を頼まないんですか。おれ、斥侯隊のハチを知ってます」
「ハチだと。あのガラッパチか。ガキの頃からここらに来ては、クコの実ばっかり食っとる。ハチとシシガーを比べたらシシガーに、手加減しそうだわい」
ラヴィが、ヒロをつつく。カエラなどは、2歩ぐらい引いている。
「オレたち、このメンバーで、これから水晶洞に挑むんですが、昨日ハチが、非常食だって、クコの実を持ってきたんです。今度、何かお礼をしますから、使わせていただけませんか」
「ハチの奴、わしが弱っとるときにやってくれたわい。いや、都合がええのか。・・・・・・・・・・・・・・。すまんが、ヒロ殿。竜玉を取り返してもらえんか。そのお礼に、クコの実をいっぱいとってもええぞ」
「本当ですか!」
ファングが割り込んできた。カエラは微妙な顔をしていたが、ファングとハイネは乗り気だ。クコの実は、低レベルなら、一挙にHPを回復する。
「ヒロ、まだ時間はあるんだろ」
「わしがターナ山で暴れたら、まあ、いろいろとなんでな。竜玉がないと、ラヴィのことを知らんかったように不便じゃろ。どうするかなと思って、ため息ついとったんじゃ」
「ヒロ、そうしよう」ラヴィが、ヒロの服の裾を引っ張る。
「でも、どうやって探す」
「それでしたら、ライトボードで、みくまり様をスキャンしてみたらいかがですか。個々の水竜の生体反応と竜玉はリンクしています」
エルフのサファイが、竜玉の性質を言い当てる。
「みくまり様、スキャンさせてもらっていいですか」
「かまわんよ」
みくまり様をスキャンして、サーチ範囲を広げると、確かにターナ山に反応がある。
「ターナ山に反応。この依頼、引き受けます」
「やってくれるか」
ここで、ライトボードが反応した。イベント欄に「水竜のゆうつ」というイベントが発生した。
これを見た、ファングとハイネが大喜びした。このイベントには、レベル制限がない。自分たちにもこのイベントがフラッシュしていたからだ。
「ファング、ヒロやったわ、イベントよ」
ハイネが、大喜びした。
「Lv104のヒロが受けたんだぞ。こりゃあ、おれたち、一挙にレビルが上がるんじゃないか」
「ええ」
「こりゃ、人の不幸を」
「すいません」
「ごめんなさい」
しかし、戦闘の危険が少なく、かつ、一挙にレベルが上がるチャンスなどめったにない。二人は、やる気満々になった。
「みくまり様、人魚のマーナです。私、カエラ、サファイと、ここにいますワータイガのホップは、ラヴィ様のレベル上げを仰せつかってパーティを組んでいます。私たちも、クコの実をいただいてもいいですか」
「ワータイガも仲間なんか。すごいの。ええよ、人魚の頼みは断れん」
「ありがとうございます。ラヴィさま。私たちは、クコの実を採取しています。ね、カエラ、サファイ。私たちには、ライトボードは、無いのだから、別のことをしましょう」
「賛成」
「ラヴィさま、行ってらっしゃいませ」
カエラが手を挙げて賛成し、サファイがラヴィを送り出す。
「わかった。非常食の方、よろしくね。ホップは、マーナを手伝って」
ガオン
ホップは、残念そうに、故郷のシシガーの森を見た。早く実力をあげなければと思う。




