バトル召喚
パオーーーン、ガーーーー
雄叫びだ。ムロに変化があった。そろそろ起き上がるのだ。ヒロは、急いで、ムロの所に引き返した。
ムロが、せっかく長いこと気絶してくれていたのに、ゼオは、ムロの蹄を一つも壊すことができなかった。それというのも、ヘタに壊すと、足の神経がむき出しになって、起き上がってしまうからだ。だから、樋爪の薄いところを見つけては、ヒビを入れて回った。
しかし、ムロが起き上がろうとしている。ゼオは、ラヴィと渾身の攻撃を右前足に仕掛けた。
「剛龍掌」
「ギャウ〈プロテクトアタック〉」
そこに、居合わせた雷竜兵たちが、電撃を流す。ムロの周りには、大勢の兵士で削ったムロの体組織がスポンジのように散乱していた。
「全員、いったん引け」
バロンの判断は、早い。足を責めていた兵士たちが、蜘蛛の子を散らすように散開した。
バリン、ガリ
足元の氷が壊されていく。思った通り、ノーマの氷では長いこと足止めできない。それでも、ノーマは、ゼオとラヴィが壊した右前脚に氷牙を打ち込む。
「氷牙」
「よし、ノーマ。我々も地上に降りるぞ。足を削ろう。チャンスがあったら、また、ムロを転がせてくれ」
「わかった」
利き足の右前足の蹄を壊されたムロの動きが鈍くなった。やはり固い部分は、簡単に再生できない。それでも、前方のバロンがいる一帯に向かって突進を始めた。
そこに帰ってきたヒロが、ノーマに指示した。
「ノーマ、氷牙をムロの背中に突き刺せ」
「氷牙」
ノーマが起こした、水の竜巻の先端がキンキンキンと氷り、巨大な氷柱になっていく。凍るまで空中に留まっていた氷柱は、3本とも、ムロの背中めがけて降下した。
ファウーーーン アーーー
ムロが仰け反った。ムロは、自分の鼻先にいるノーマを捕まえようと背伸びした。アギトが、ノーマを連れて、上空に逃げる。おかげで、ムロの進撃が止まった。アギトが、高度を上げないで、ムロを誘って旋回しだした。その間も、ノーマが、氷牙を撃ちまくる。
ムロが、背伸びして、ノーマを捕まえようと後ろ足立ちになった。
「ゼオ、ラヴィ。軸足を狙え」
そう言って、ヒロが先陣を切る。ヒロの攻撃は、弱い。ホップが、吹き飛ばしのスキルを使って、大きく戦場からジャンプした。ホップは、ムロが倒れると判断した。
「剛龍掌」
「ギャウ〈プロテクトアタック〉」
二人連携のコンボ技が、左後ろ足の蹄をとらえた。樋爪を見事粉砕。ムロは、自分の体重を支えられなくなって、そこで倒れた。散開した兵士たちが、歓声を上げる。
「今だ、総攻撃」
バロンが、突撃を指示。飛んで逃げることができる兵士たちは、ムロの胴体に飛び乗った。ゼオがこの機に後ろの右足樋爪も粉砕に行く。しかし、ムロが暴れた。後ろ足を蹴ってゼオを近づけさせない。
「おじいちゃん、前足」
ラヴィが、前足が動いていないことに気付いた。
「よし、左前足だ」
ゼオが、ムロの左前脚に飛ぶ。ラヴィは、そのゼオの肩から離れない。
「剛龍掌」
「ギャウ〈プロテクトアタック〉」
二人は、見事、前足の樋爪を粉砕した。樋爪の中側は、柔らかいが、巨体を支えることができる組織だ。ムロが起き上がろうとする。しかし、突進できる力は、もう、なかった。
樋爪をやられ、バウーーンと、いきり立ったムロは、残った角を振り回す。
ムロの動きを止めることに成功したゼオだったが、最後に残った右後ろ足の樋爪を破壊しようと動く。ムロは、その足を軸にして、角攻撃をしていたからだ。
この時ヒロは、龍王の指示を受けていた。ムロの攻略が決まったのだ。
「婿殿、ワーバーン千竜隊で、四方から、ムロに火流弾の攻撃をする。しかし、この距離だとナマズクラゲ討伐隊が巻き込まれる。だから、そちらを応援してほしい」
「行け、婿殿」
「任せろ、婿殿」
ゼオも、アギトも同じ意見だ。
ここが正念場だ。
そこで、魔力結晶を使ってMPを満タンにしたヒロが、ラヴィ達を全員をバトル召還した。
「ラヴィ、ノーマ、アリーシャ、バトル召還」
ラヴィに炎が舞い、ノーマにシャボンが、アリーシャに鮮やかな葉っぱが舞った。ラヴィは、古の巫女装束で、ノーマが、新作のバトルスタイルで、アリーシャが、同族に渡されたエルフのバトルスタイルで現れた。
「アリーシャ、上空の戦闘も気にかけてやってくれ」
「任せて」
「ノーマ、いざとなったら、オレ等ごと、ナマズクラゲを北に流せ」
「分かった」
「ラヴィ、シャイニングバーストは、ムロの真上からだぞ。じゃないと四方のどこかに被害が出る」
「気を付けるね」
ヒロは、ホップにお願いして、この場を離れることにした。
ナマズクラゲの戦場は、相変わらず混とんとしていた。バウンティクラブの囮になって、雷竜兵がその場からいなくなった黄部隊が特にひどく、西側にずいぶん逃げるように移動していて、負傷者も増え、戦線を維持するのが、やっとだった。
そこで、黄部隊に、西のワイバーン隊が増援に向かった。これは、龍王の指示やバロンのお願いがなくても、グワン将軍の独断で決めて良いと打ち合わせができている。
「傷口に槍が通るぞ、甲殻兵を助けてやれ」
グワン将軍に指示された槍部隊は、待っていましたとばかりに、西の陣を飛び出した。それを見た甲殻兵が、本来のディフェンスに戻れるとホッとした。だからと言って、ワイバーンは、電撃を防御できない。もう暫くは、甲殻兵が死に物狂いで、ワイバーン達を守ることになる。ワイバーンと雷竜兵の合同演習は、出来ているが、甲殻兵とワイバーンだけというのはできていない。ぶっつけ本番になった。
ワイバーンは、一体一体が大きく、体長が10メートルある。3メートルほどのナマズクラゲを捕まえ損ねてぶつけられると、被電してしまう。だから甲殻兵が、ナマズクラゲの動きを封じることになる。何体か、ワイバーンが、電気にやられた。甲殻兵たちは、決死の覚悟でナマズクラゲを捕まえるしかなかった。
「ギャオーーーン〈傷口はどこだ〉」
「ここだ」
甲殻兵が、ナマズクラゲを捕まえた。
ワイバーンの槍は、長い。傷口に入った槍は、ナマズクラゲを突き刺すことに成功した。しかし、槍を伝って、電気がワイバーンに通る。そのワイバーンは、しびれて動けなくなった。
槍は、深く、ナマズクラゲに刺さったままだ。甲殻兵の隊長が、「でかした」と、そのワイバーンをねぎらった。
ナマズクラゲの本体は、クラゲ組織に包まれている。まだ、本体まで槍が到達していないのだろう。ナマズクラゲは、平気な顔をしていた。
「もう、一押しだ。頑張れ」
甲殻兵が、槍を押し込む。ナマズクラゲが、キキッと、悲鳴を上げた。本体に槍が達したのだ。その、ナマズクラゲの最後は、あっけなかった。電気も出さなくなり、動かなくなる。一番苦戦していた黄部隊が、大金星を挙げた。ワイバーンにも多くの被害が出たが、犠牲者はいない。みんな笑顔になった。
「よくやった。負傷者を連れて一度引け」
「でかした。うちも、引け。他が、戦場から大きく外れないなら様子見だ」
バロンと、グワンが、黄部隊をねぎらう。




