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ロードオブ召喚獣  作者: 星村直樹
火海牛ムロ
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バウンティクラブ

 バウンティクラブの足が一本折れた。攻め時だと思ったバロンが、ガイの所に増援を送る。折れた足の傷口には、電撃が通るようになる。しかし、関節への攻撃が有効か試すのが先だ。まず、ガイが、自前の爪で、関節を攻撃してみた。関節も、硬いのだが、攻撃が通る。


「いいぞ、総攻撃だ」

 ガイの号令で、全員が波状攻撃を仕掛けだした。関節を狙えるものは、そこを中心に攻撃する。電撃を撃てる者は、傷口を狙う。


 バウンティクラブが、この攻撃で意識を戻した。足を一本おられているのに、全く戦意を消失していない。大きな鉤爪で、纏わりつく敵を払う。兵士たちは、カギ爪につかまらない様にするので精一杯で、何人か倒されていく。救護の者が、負傷兵を拾いワイバーンの後ろに控えているエルフの所に運ぶ。救護は、エルフの役割だ。


 エルフ十賢人の中で一番若いジェイドは、このバウンティクラブと、相対している戦場に一番近い東側にいる。ジェイドは、弓矢の名手だ。ジェイドの所に、負傷兵が多く運ばれてくる。ジェイドには、ヒロが、弓をクラフトしている。ジェイドは、この弓を試したいのだが、ここを動くわけにはいかない。時間の経過とともに、負傷兵は増え、仕事も増えて行った。



 ガイは、甲殻族で、最も強い蟹族だ。バウンティクラブも蟹。だから、行動パタンや、弱点が良くわかる。できれば、仲よくしたいが、相手は、そう思っていない。バウンティクラブの知能は低く、生存競争のことしか頭にないと言った感じだ。バウンティクラブが、たまに爪をこすり合わせるのを見て、何かを感じるのだが、思い出せない。ここに、フォブ爺を呼ぶわけにもいかない。今、惑星を1/4回ったところにいるフォブ爺と話すことは、難しい。


 ガイの仕事は、はっきりしていて、全員が脅威に思っている大きなカギ爪を切り落とすことだ。ガイは、カギ爪の関節の柔らかい部分を壊していく。ガイの体は、薄く光っており、バリヤーが張られていることが分かる。側近の者も、何人かそうなっており、彼らが主戦攻者になる。ガイは、側近の者と、カギ爪に波状攻撃を仕掛けて、関節の強度を削いでいった。


 バウンティクラブが、ガバッと起き上がった。次のターゲットを見つけたのだ。それは、ゴングのライトセーバーだった。ゴングの角だったライトセーバーの持ち手は、元々光属性。それを基に作られたゴングのライトセーバーは、ひときわ輝いていた。


「ゴング、ターゲットされたぞ」

 古参の雷竜兵が叫ぶ。


 ゴングが、ライトセーバーを持ち直した。待ちの構えだ。


 バウンティクラブが、周りの兵士を振り払って、ゴングに向かう。いきなりスピードが上がり、全員振り落とされた。


 ガツンと、バウンティクラブとゴングがぶつかる音。今度は、ゴングが、打倒された。ジャストガードのタイミングを外された。


「ゴング!!」

 やっと起き上がれるようになったディフェンス組の3人が、倒れたゴングの救出に向かう。ゴングの手から離されたライトセーバーは、セーフティが掛かり、光剣が消える。バウンティクラブは、ゴングを踏みつけた。


 ゴングが、頭を踏みつけられそうになった時、かろうじて3人の救助の手が届いた。こんな状況になったのに、服が破れていないことに、3人は気付いたが、今は、それどころではない。ゴングを担いで東に逃げた。


 気を失っていたゴングが意識を取り戻した。あれだけの目にあったのに、ゴングは、軽傷だった。ゴングの服は、打撃耐性に特化した服だ。頭を踏みつけられなかったのは、幸いだった。


「ゴング、大丈夫か?」


「大丈夫だ。オレの剣はー」


「ここだ。自分の角なんだろ」


「ありがとう、助かった」

 そう言って、角を元に戻した。エネルギーを補充して、反撃のチャンスを待つ。


「その服丈夫なんだな」

「ノーマの服だ。ラヴィ達にもらった」

「オレ達も欲しいぞ」

「みんな、オレを助けてくれた。頼んでみる」


「お前ら、バウンティクラブを見ろ」

 ホッとしたのもつかの間、もう、ライトセーバーが光っていないのに、バウンティクラブの攻撃衝動が収まらない。バウンティクラブは、次の攻撃の為に、体を低くしていた。


「やばい!」


 ディフェンス4人の中で一番体の大きなワイバーンが、バウンティクラブに突っ込み、目くらましの役目をする。残った甲殻と雷竜の二人が、まだ動けないゴングを担いで、バウンティクラブの攻撃をかわした。


 そこに、バロンの指示が入って来た。

「飛べる者は、ゴングを空中に連れて行け。ゴング、悪いが、エサになってもらう」


「オレ、餌かー」

 がっくりするゴング。


「空中で休め。次は期待しているぞ」


 雷竜の飛べる者が、3人がかりでゴングを空中に浮かべる。バウンティクラブは、そのゴングから目を離さなくなった。


 戦線は膠着したが、被害も出なくなった。バウンティクラブに関しては、今までの戦闘を分析する時間ができた。そこで、ゴングが、アリーシャに通信した。今なら、アリーシャでも、安全にバウンティクラブの弱点を分析できる。


 まだ起き上がっていないBOSのムロをしり目にアリーシャが、ゴングの所にやってきた。アリーシャの分析は、意外なものだった。


「バウンティクラブの属性は、光よ。だから、毒攻撃に弱いと思うのだけど。攻撃衝動は感じない」


「そうなのかー じゃあ、なんで、あんなに暴れる?」


「たぶん、求愛行動なんじゃないかな」


「なんだーそれ」

 周りも驚く。


「ゴングも、光属性よ。それに、さっきライトセーバー光らせていたよね。雌の求愛と同じ行動だったんじゃないかな。ヒロから聞いたわ。この子たち、みんな深海生物だったんでしょ。海底は暗いわ。メスは、光ることで、雄に自分の居場所を教えていたのよ」


 ガイが、水龍の丹人に言って、フォブ爺に、真相を問い合わせる。爪をこすったり、ゴングの上に乗ったりしたことも詳細に話していた。今のアリーシャは、ウォッチレベル72の召喚獣だ。ハイエルフと変わらない。あてずっぽうを言っていると思は、えなかった。


「だって、怒っていたら、あぶくを出すよね。このバウンティクラブは、そんなことない」


 戦場で、フリーズする戦士たち。


 フォブ爺が、アリーシャの説を認めた。しかし、バロンが、水竜王に裁定を求めたところ、「可愛そうだが、駆逐するしかない。巨大化したバウンティクラブの住処はない。地上を走れる奇形になったのだ。深海で、おとなしくしてくれる気がしない」と、答えが返ってきた。龍王が、これを受けた。


 真相が分かったところで、作戦に変更はない。しかし、戦士たちの気が重くなった。早い決着は毒殺だと分かり、ヒロが呼ばれることになった。ノーマがポイズンの魔法を持っているが、ムロから離れられない。ヒロのブラックソードは、毒属性。ポイズン結晶をはめることで、ポイズンが発動する。


 ヒロは、バウンティクラブに出撃する前に、バロンに謝まられた。


「屠畜は嫌いだと言っていたのに、すまんな」

「シンとの戦いは、これよりきつくなります。経験するしかありません」


 ヒロは、ブラックソードの結晶孔3つすべてに、ポイズン結晶をはめ込んだ。



 バウンティクラブは、ゴングを見上げて、全く動かなくなった。自分の足を折るぐらい強い雌だ。絶対捕まえるぞと目を離さない。ゴングは、いい気がしないが、餌の役割を享受していた。


 そこに、ヒロがやってきた。本当は、ムロに使うはずだった、オーバーブレイドをここで使う。次のリキャストタイムまでムロが、大人しくしていると思えないが、仕方ない。みんな早い決着を望んでいた。



 バウンティクラブは、その固い甲羅を背景に、周りを恐れていない。雷竜より小さな人間のヒロが、近づいても、全く反応しなかった。今は、それより、上空の雌だ。


 ヒロは、ゴングが折った一番目の足を見ている。ここに剣が通る。位置的にも、この中に剣を突っ込んで、オーバーブレイドさせたら、脳に剣が届く位置だ。


 一瞬だった。


「ダイブブレイク」

 ヒロは、滑るようにバウンティクラブに接近した。

「オーバーブレイド」

 折れた足の中に、剣を突っ込んで、剣をオーバーブレイドさせた。


「キッ!!!!!!!」

 バウンティクラブには、何が起きたのか分からなかった。毒が、神経を麻痺させていた。

 ドウンと、その場に倒れる。


 ヒロは、すぐには剣を抜かないで、毒が全部回るのを待った。龍王に蟹の脳が、一カ所とは限らないと警告されていたからだ。


 バウンティクラブは動かなくなった。死骸は、エルフによって解剖され詳細な生態が記録される。反重力が使えるものは少数で、それも、戦場を自由に行き来できるゼオとアギトは、ムロから離れることができない。龍王も、水龍の丹人もバベルの塔を防衛している。そこで、人海戦術になった。東のワイバーン隊がこれに当たる。大勢のワイバーンが、この亡骸を運んで戦場から遠ざけた。

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