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ロードオブ召喚獣  作者: 星村直樹
火海牛ムロ
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地上戦の行方

 海火牛ムロの左右に分かれて突撃していた雷竜兵と甲殻兵は、ムロではなく、一カ所に固まっているナマズクラゲに突進した。ナマズクラゲは、それを嫌がって、電撃を出すのだが、雷龍兵には効かない。そこでナマズクラゲは、電気をまき散らしながら、突進して反撃した。ナマズクラゲには、打撃も、斬撃も効かない。ナマズクラゲの各々の突進のせいで戦場が混乱した。以前もそうであったように、戦闘個所が広がっていく。この中を海火牛ムロに突進されては、100年前と同じ惨劇が起こる。


 バロンは、ゼオ、アギト、ヒロと相談して、ヒロが、ウラヌス探査で一緒だった鱗魚族のアマゾネスの能力を試すことにした。この作戦会議に、アギトが呼んだ甲殻族のガイも加わり鱗魚族の族長マイアからアマゾネスを6人借りることができた。


 鱗魚族は、電撃にも強かった。体を覆っている鱗が、電気を地上に逃がし、体内に到達させない。小さくて、薄い鱗は、触る分には、さらっとした感触だ。だが、その鱗一枚一枚は、オリハルコンや、逆鱗に匹敵するほど硬い。鱗魚族の戦士たちは、この鱗を利用して、手を尖らせた形にして、相手を貫く。このぬき手に貫かれた部分には、鱗が少し残ることになり、傷口が閉じにくくなる。今回、この傷口を足掛かりに、ナマズクラゲを倒そうというのである。鱗魚族は、希少種だ。彼女たちを守るために、多くの甲殻族も動員された。


 甲殻族には電撃が通るのだが、我慢できる頑強な人たちだ。彼らと雷竜が、ふわふわ浮いているナマズクラゲを囲んで、一瞬人垣を作り、アマゾネスが、それを刺すという人海戦術になった。アマゾネスが、ナマズクラゲを刺したら、彼女たちが狙われる。そこで、甲殻族は、アマゾネスの護衛。雷竜兵がナマズクラゲと相対する。雷竜兵は、ナマズクラゲにできたウィークポイントを槍やニードルで刺すという戦法になる。


 鱗魚族の戦士長、ミリアに率いられたアマゾネスは、黒真珠のような質感の鱗を持った暗緑色の戦士たちだ。ただ、族長のマイアもそうだが、ミリアは、光彩をにじませた青緑の鱗をしている。彼女には、始祖の血が色濃く出ており、中性子バリヤーを鱗に纏うことができる防御の固い人だ。テレパシーも強く、他の戦士たちとの連絡役にもなる。


「行きましょう」

 他のアマゾネスも含めて、全員、ナマズクラゲに突進した。雷竜人は、人形に近いが、甲殻族は雑多だ。その中で、防御の固い蟹型の亜人間が先陣を切った。バウンティクラブを任されているガイもそうだが、彼らの中にも、体に薄くバリヤーをまとえる者がおり、その者達と雷竜兵のパワー系の人たちがスクラムを組んだ。

 甲殻族には、跳躍力の長けたエビ形の亜人間もおり、彼らが、アマゾネスを守る。最終的には、その跳躍力を生かして、鱗魚族たちを戦場から離脱させる。


 海火牛ムロを迂回した彼らは、一カ所にいるナマズクラゲに接近した。あまりにも、6匹が密集していたので、引き離そうとした先方隊に、攻撃衝動を覚えたナマズクラゲが、電撃をまき散らせながら、体当たりをしてくる。ナマズクラゲたちは、戦士たちの想定範囲を超えて散らばった。この状態は、前回の戦いに参加していた古い兵士たちから見ると、以前と同じような光景に見える。


 まずい状態だ。


「しかたありません。各個撃破」

 ミリアの号令で、訓練通り6隊に別れた兵士たちが、ナマズクラゲ一体一体を囲む。


 幸い、後ろで、海火牛ムロが、ノーマのアイスウオールで転んだ。


 各々の場所で、雷竜や甲殻が、耐えろと、掛け声を掛けながら、電撃をまき散らしているナマズクラゲを囲む。


 アマゾネスたちの仕事は、早い。6体とも、ウィークポイントを作ることに成功した。中には、反撃された者もいるが、蟹型の甲殻兵が、身を呈してそれを守る。そうした者たちは、戦場離脱を余儀なくされた。さっそく、エビ型の亜人間が、アマゾネスたちを連れて戦場を離脱した。守りの固いミリアは、バロンの伝令役として、ここに留まる。


 そのアマゾネスを追おうとするナマズクラゲに雷竜の兵士が、傷口に槍を通して見た。有効打ではなかったが、傷口に槍が入った。


「いけるぞ、傷口が閉じていない」

 時間は、掛かるが、囲んで、ウィークポイントを責めれば、倒せると実感した。


 6隊は、色分けされており、赤、青、黄、茶、空色、オレンジに分かれている。ミリアが、黄色の部隊全員に伝令した。これは、ガイからの警告であった。


「黄部隊の方、バウンティクラブが、その中の雷竜の方を的にしています。一度ガイさんがいる東側に撤退してください。バウンティクラブを、ガイさんの方に誘うのです」


 それを聞いた、黄部隊の雷竜兵は、全員この場から離れる。しばらくは、甲殻兵だけで、戦線を維持しなくてはいけない。

「ここが、踏ん張りどころだ」と、黄部隊甲殻兵の隊長が声を張り上げる。甲殻兵の中で、ナマズクラゲを囲んでいた猛者が、逃げないよう簡易の凹陣形を作って踏ん張る。残った、攻撃型の兵が、自前のハサミや、ニードル状の剣で、ナマズクラゲに対応した。




 黄部隊が合流しようとしているガイたちは、バウンティクラブ討伐隊である。彼らは、海火牛ムロから見て右回り、東側にコマを進めていた。数も多く、先行していたナマズクラゲ討伐隊より少し遅れて戦場に到着した。

 その時には、もう、戦場は、混乱していた。


 ナマズクラゲ討伐をしている兵士たちは、全く、バウンティクラブに触っていなかったのだが、バウンティクラブは、ナマズクラゲの電撃に対して、電撃で反撃していた雷竜兵に興味を持った。なぜなら、ナマズクラゲと、その雷竜兵の電撃が火花の様にぶつかって、ひと際光って見えたからだ。


 ガイについている、古参の雷竜兵が、バウンティクラブの攻撃衝動のモーションを憶えていた。

 バウンティクラブは、まず、ターゲットに対して、真横になり、少し飛び出た目を、真っ直ぐ相手に向ける。そして、相手に向けた方の体をぐっと地面側に下げるのである。


「ガイ、バウンティクラブが、黄部隊の雷竜兵をターゲットしたぞ」


「なんで、雷竜兵だと解る?」


「バウンティークラブは、光る物や、キラキラする物に反応するんだ。見ろ、黄部隊の火花を」


 確かに、黄部隊の所だけ、やけに電撃がぶつかって火花が散っている。


「分かった。ミリア、黄部隊の雷竜兵をこちらに下がらせてくれ。黄部隊の雷竜兵の誰かに、バウンティクラブがターゲットした。あれに、戦場を走られても、戦場が混乱する。東側に移動させてくれ」


・了解


 雷竜人には、ゼオほどではないが飛べる者もおり、その兵たちが、飛べない兵を抱えて、戦場を離脱した。


 バウンティクラブの目が、飛んでいる雷竜兵を追って、移動しているのが良くわかる。彼らには、ガイの隊の後ろに下がってもらった。


 バウンティクラブが、ガイたちの隊の方に体を向けた。


「来るぞ!」


 ディフェンスに選ばれた4人が前に出た。あの、突進してくるバウンティクラブを受け止めようというのである。4人の中に、ゴングもいるのだが、残り3人は、ゴングにあまり期待していなかった。なぜなら、ゴングは、ラヴィ達を助けにカナン山に行くことが多かったので、あまり一緒に練習をしていなかったからだ。そこで、3人が、前に並び、ゴングは、その後ろに控える格好となった。


 ゴングは、ライトセーバーをディフェンス向で横幅の広い盾のような、ディープベースにしてバウンティクラブを待つ。ゴングのライトセーバーは、ゴングと同じ大きさになった。


 この四人は、力において拮抗している。ゴングが合わせられるのなら、一緒に並んでほしかったが、ゴングが、ジャストガードという技を試したいと提案してきた。ジャストガードは、相手の攻撃に対して、少し押し戻すようにガードする技で、タイミングが大事だ。居合いのような感じで、ほんの一瞬押し戻すだけなので、とても難しい。だから、タイミングが見たいと、3人に許可をもらった。ゴングは、シャーンたちと、ジャストガードの練習をしていたので、3人にはよくわからなかったが、ゴングの熱意に押された。「オレ達がだめなら、バウンティクラブは、止まらない。ゴングが最後の砦になるかもな」と、冗談を言って許してくれた。


 バウンティクラブは、小さく、「キィ」と鳴いて突進してきた。ガガガガと、走る様は、暴走した戦車の様だ。ゴングもそうだが、「こりゃ、きつそうだ」と、みんな思った。


 大きな爪は、上を向いているが、残りの6本の足を使って、高速移動している。バウンティクラブは、そうやって、獲物に追いつき、大きな爪で鋏む。この爪が、ゴングほどもあり、捕まったら、まず、助からないだろう。


 ガガガガガガガガ、ガガガガガガガ。ガガッ!!


 一足ごとに巨大さを増すバウンティクラブ。ゴングたちの所に来たときは、もう、巨大な壁だった。


 ゴングの前3人は、スターティングポーズをとっており、バウンティクラブに合わせてぶつかる気だ。全員、硬い防具でプロテクトしている。ところが、ゴングは、ラヴィ達から、そして、ヒロから、お礼だと言われて、ノーマが作った、軽めのバトルスーツを貰って着ている。これが、よけいゴングが、か弱く見える原因で、3人がゴングに期待していない理由にもなっている。


「行くぞ!」

「オウ」×2


 ガシャンと、ぶつかる3人。3人は、驚くほど遠くまでゴングの後ろに飛ばされた。


 ガガガッ!!!


「ジャストガード」


 ガブン


 ジャストガードには、吹き飛ばしのスキルも入っている。今度は、バウンティクラブの方が、吹き飛ばされた。それも、押し戻すとき、攻撃したような衝撃を相手に返すことができる。バウンティゥラブの移動に使っている足が1本折れた。


 これを見たガイが。「突撃」と、号令する。ゴングを中心に残し、バウンティクラブに押し寄せる兵士たち。ゴングは、後ろに振り返って、吹き飛ばされた仲間を心配した。


「みんな、だいじょうぶか?」


「なんとかな」

 丈夫が取り柄で選抜されたディフェンスだ。まだ、立てないが、3人とも、そこに座り込む。ゴングは、3人を守って、その場を動かなかった。

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