ヒューガ将軍vs飛びムカデ
ヒューガ将軍は、ヒロから、弱点を指摘されていた。ヒューガ将軍の装備は、重すぎるのだ。武器のアックスは、仕方ないとしても、甲冑も、とても重い物だった。おかげで、剛健といえる体を手にしたのだが、今回、飛びムカデの口の鎌に挟まれたら、その甲冑が防御にならない。
そこで、ノーマに頼んで、軽い服を制作してもらった。
ヒューガは、最初、これを嫌がった。しかし、惑星ジュームで取れる鋼絹素材に、ジオイドにある高級素材の龍の鬚で、縫い目を補強した戦闘服を着て渋々戦闘訓練してから、考えが変わった。この戦闘服は、丈夫なだけでなく、打撃の衝撃が、ダイレクトに来ないのだ。耐性属性は、雷と、火。
この服のおかげで、ヒューガ将軍の戦闘スピードが、上がった。それも、ワイバーン中隊内で抜きんでて早い。スピードが上がれば、攻撃力も上がる。ワイバーン中隊の他の龍たちも、これを欲がったが、そんなにいっぱいある素材ではない。そこで、ヒューガ将軍の戦いを生かす戦闘訓練が、行われることになった。これを視察に来た、グワン将軍の推挙によって、現在、最前線にいる。
2匹いる飛びムカデは、どちらも赤茶けた色をしているが、目の色が違う。片方は、赤い目、もう片方は、暗い青緑。それで、ヒューガは、赤目、青目と呼んで、2匹を色分けした。
開戦前、空中で待機していたヒューガ将軍は、結界から解放される飛びムカデを見止めて、すぐ、急降下した。ヒューガには、腹心のバーダ兄弟が従った。この兄弟にシャーンとガイガイオウが乗っている。最初、この精鋭で飛びムカデの攻撃パタンを全員で見ようというのだ。
結界から出てきた飛びムカデは、頭こそ、ワイバーンぐらいしかないが、それに胴体が繋がっているのだ。これでは、並みの水龍より大きい。その胴体が、のたくるように頭についてくる。
「何だあの足、手みたいな触手だらけじゃないか」
ガイガイオウが、簡単に近づけると思っていた胴体の特徴を言い当てた。
「ホウ、ハイ、青目の足に攻撃してくれ。オレは、赤目の胴体を狙ってみる」
「ギャオ―――ン〈了解〉」×2
ホウとハイは、どちらも、やり使い。ホウが突っ込み、ハイが、守る。連携が取れている兄弟だ。ガイガイオウは、バリアを張れる。ホウにガイガイオウがついた。シャーンは、目が良く、バトルセンスが抜群だ。ハイに、警告を出す役目になる。
「あの頭に一番近い足、あれだけ長いな。後続部隊が来る前に何とかならんか」
「ギャウ〈そうだな〉」
ホウが狙う足が決まった。
「じゃあ俺たちは、中の足か。あの足も前後に届くぞ、気を付けろ」
「ギャウ」
ホウとハイは、青目を狙う。
ヒューガ将軍が、赤目を急襲した。巨大なアックスを軽々と振りかざし、胴を切り落としにいく。ところが、そのアックスの衝撃のせいで、飛びムカデの胴体が、勝手にひょいと避けてしまった。飛びムカデは、ヒューガをまだ意識していなかったはずだ。ヒューガは、これは、厄介だと思った。
「伝令、飛びムカデは、反重力生物だ。アックスを体が、かってに避けた」
これを受けたガイガイオウが、後続部隊のワイバーンと聖戦士にテレパシーで伝える。後続部隊にいる水龍が、族長の丹人に伝令。このことが、全体に伝わる。
その伝令に、ショウギ将軍が答える。
「胴体を、真っ二つにしようと思うな。縦に攻撃してみろ」
ショウギ将軍のアドバイスを受けたヒューガが、縦に攻撃した。軽く当てたのだが、ガインと当たり、赤目が仰け反った。
コォーーーーーーーーー
有効打だ。
飛びムカデの目が、更に赤く明るくなっていく。攻撃色だ。赤目は、ヒューガに頭を向けた。それも、ガギガギガギガギと、仲間を呼ぶような振動音を発しだした。青目がそれに反応する。
青目をヒューガ将軍の所に行かせるわけにはいかない。バーダ兄弟が青目に突っ込んだ。
ホウが、前足を切り落とそうとするが、ガギッと受け止められてしまう。足は、勝手に避けるわけではないが、とても硬かった。青目は、ホウの攻撃を無視してヒューガを追おうとする。
その、開いた胴の中間あたりの足をハイが攻撃した。中間にある足は、切り落とせた。
コォーーーーン
「いいぞ」
シャーンが、ハイを褒める。だが、青目は、それさえ無視してヒューガを追う。
「くそっ!」
シャーンが飛んだ。足を光らせて青目の胴体に爆発するキックをお見舞いした。青目の胴体が、驚くほど下に沈み全体をのけぞらせる。
「シャーン無茶するな」
地上に落ちて行くシャーンをガイガイオウが乗っているホウが拾う。
「次、もう行けるぞ」
ガイガイオウを信頼しているシャーンがニカッとする。それを見たハイが、もう一本足を落とそうとして、別の足に振り払われた。ハイは、軽傷だが青目から離されてしまった。ここまで攻撃されても、青目はヒューガに向かうのをやめない。
「ヒューガすまん。青目が止まらない」
ヒューガは、飛びムカデの習性を何となく察した。もし、これが、大量にいたら、本当に厄介な存在だ。赤目が司令塔に違いない。実際は、大量にいて、確実に、各個撃破するのだろう。しかし、2匹しかいないのは、幸いだ。ヒューガは、青目が格下なのではないかと、攻撃目標を変えた。
「青目を集中攻撃だ。細い足を狙え、力をそぐんだ」
これを受け、バーダ兄弟が青目に突進した。シャーンが、簡単に、ハイに飛び移る。ガイガイオウは、ヒューガの方針を後続部隊に伝令した。
「すまん、サポートに戻るよ」
「ギャウギャウ〈いいんだ〉」
戦闘方針は決まった。ヒューガ将軍の後続部隊が前進する。主要なワイバーンには、聖戦士が乗っている。
ビーたち斥候隊は飛べるので、上空から戦場全般の監視をしている。
ヒューガ将軍が、2匹を引き付ける。たまに赤目を攻撃しては、その場を離れて2匹を牽制する。その間に、青目が集中攻撃された。それを見た赤目が、グボーーーンと、低い音を発した。青目は、それを受け、頭をずっと狙っているバーダ兄弟のホウを長い前足で、つかもうとする。ヒューガ将軍は、赤目と差しの勝負ができるようになった。
後続部隊が参戦し、数で優位になったワイバーン達だったが、青目を攻略しあぐねていた。小さいほうの足は、ずいぶん落とせたが、青目は、それほど嫌がっていない。むしろいきり立ってぶつかってくる。そのうえ、青目は、たまに体液を吐いてくる。それにやられたワイバーンが、倒れることは無いのだが、匂いが異常に臭い。目も滲むので、撤退することになる。両者は、一進一退の攻防を繰り広げていた。
赤目から、青目を切り離すことに成功したヒューガ将軍は、自前のスピードを生かして胴体に何度もアタックしていた。赤目は、そのたびに仰け反ったり、いやな音を発したりするのだが、怯まない。そんな中、赤目の動きが急に良くなった。しっぽに、今まで認めることができなかった、大きなニードル状の固い槍と思える角を出し、体をくねらせ出した。
そして、しっぽが、ものすごい勢いで、ヒューガ将軍に襲い掛かった。
ヒューガは、これを何とか避けたが、くねらせた体が、壁のように迫り、ヒューガを打ち付ける。ヒューガは、アックスで、これをかろうじて防御した。自分でなかったら、パワー負けしていた攻防だった。ちらっと、青目を見たが、青目は、硬い尻尾を出していない。向こうは何とかなると思ってダース兄弟を呼ぶことにした。
「ダース兄弟、こっちを手伝え」
「ギャオーーーン、ガッ、ギャオーーーン」
ホウが、無理だと返答してきた。青目は、自分を狙っている。そちらに青目を連れて行くことになるぞと警告した。
「ぎゃう、ギャオーーーン(兄貴、オレが行く)」
ハイは、兄に青目を任せてヒューガ将軍の援助に向かった。




