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ロードオブ召喚獣  作者: 星村直樹
バベルの塔
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水竜王の裁定

 翌日、ヒロは龍王の居城に来ていた。今回は、ワイバーンに挨拶しまくってゆっくり世界樹を登った。ワイバーンの対応は、節度あるものだったが、いい顔をしているように見えなかった。ビーが途中から一緒に空中を飛んでくれた時はホッとした。


「Webに、自分たちの失態が流されたんだ。仕方ないだろ」

 そう言って肩をたたかれた。


「オレが来た性なのか? 物々しいな」


「今回の話は、パグー全体にかかわる話だ。要人がいっぱい来ている。ヒロだけの性じゃないさ。ゼオ様は、どうした。ずっとタオ草原で一緒だったんだろ」


「フォブさんが、創生時代を思い出したんだ。その話をしたら、急に呼びに行くと言って飛んでった。たぶんフォブさん、今頃、涙目になっているんじゃないか」


「そうか、フォブさんには悪いが、その方が早い。今日は、知識人も随行して来ている」



 ビーのおかげで、無難に居城に着いたヒロは、ノーマの作った軽い戦闘服に戻った。その内、正装も作ってもらわないといけない。大勢の人、特にエルフ族を見てそう思った。


 まあ、龍族が、戦闘服だからいいか


 そこに、ガイガイオウが、シャーンとゴングを連れてやってきた。シャーンとゴングは、将軍職ではないので、場違いだと思っていたが、タオ草原の戦いには、興味がある。その、興味に負けて付いて来てしまった。


「婿殿、海王も来ているぞ。大丈夫か」

「ガイガイオウ、公の場で、その呼び方は、するなよ」

 ヒロが牽制する。

「それぐらい、わきまえているさ。ラヴィ達は?」

「ノーマとアリーシャは、海中の転生者の街だよ。ラヴィは、ポップと戦闘しているんじゃないかな」

「転生者の街だがな、名前がなかっただろ。ジオイドに決まったそうだ」

「タガメ族は、町に入れたのか」

「昨日な。最初は、おっかなびっくりという感じだったが、コミュニケーションできると分かってから、対応がぐんと良くなった」 

「わるかったな。タガメ族によろしく言っといてくれ」


 ヒロは、ゴングの金色の角を見て、ゴングにお願いがあったことを思い出した。

「ゴング、お願いがあるんだ。ラヴィ達と、たまに通信してくれ。特にラヴィかな。戦闘しているのはいいが、何やってるかたまに話を聞いてやってくれ。あいつら、絶対突っ走ると思うんだ」

「わかったぞ」


「そろそろ時間だ。王の間に行こう。ビー、付き添ってやれよ」

 シャーンが時間を見た。


 王の間の大扉が全開になった。奥には、龍王、エルフ王、海王、水竜王がいる。ムシキングは、さらに奥に控えていた。そこにドーーンと雷龍王が降り立った。ゼオは、相変わらずである。フォブ爺はふらふらしながら、魚人族がいる枠に向かう。鱗魚族のマイアと甲殻族のガイが慌てて、フォブ爺の手を引く。フォブ爺は、ブツブツ言っている様だった。ゼオに愚痴の一つも言いたいが、もう、みんな居るので、我慢しているといった感じだ。


 全員勢ぞろいしている中にヒロが入っていった。ビーに、一番前に行って膝まづいたら、龍王が話しかけるまで顔を上げるなと言われている。ビーがヒロに同行し、斜め後ろに膝まづいた。


「ヒロ殿、そなたの訴えを協議する。まず、話してくれ」

 龍王に、婿殿と言われなくてホッとする。


「ありがとうございます。惑星パグーに転生した創生時代の転生者は、自分も含めて20465でした。現在は、それより3名少なくなっています。その3名は、自分のレベルを急激にあげようとして命を落とした者達です。転生者は、とてもか弱い。私達がパグーに転生した時、悪い者もパグーに来てしまいました。シンは、その人の悪の心を増大するとても危険なものです。2日前、創生時代を思い出したフォブさんから、自分たちがやっていたゲーム世界。ロードオブ召喚獣が実在すると教えられました。後で詳細を聞いてください。我々は、シンに対抗できる術を持っています。転生者が作った服は、シン予防になります。お守りでもいい。しかし、それをパグーの人たちに行渡らせるには、作業をするための操作盤が必要です。その操作盤、ライトボードが今は機能していない状態です。自分は、ライトボードを復旧するためにバベルの塔に一昨日向かいました。そこのメインコンピューターにアクセス出来れば、ライトボードを復旧できます。ところが、今は、タオ草原に出現した怪物を閉じこめる結界の依代となっており機能しません。どうか私たちを助けてください」


「うむ、エルフ族が、パグーに転居した後。惑星ジュウムに残した生体ロボットたちが戦争状態になったのは聞いておる。シンは、確かに危険なものであろう。シンの結晶核の除去に、癒しの結晶、世界樹の樹液を使っていたのも、娘の記憶を見せてもらって知っている。シンの件については、これから話し合うとする。今回の件だが、なぜ、バベルの塔のメインコンピューターを解放すると、ライトボードが復旧するのかな」


「自分たちのゲームの世界では、バベルの塔は、100階までありました。転生者が使っていたライトボートは、新しいバージョンで、塔の高いところに設置されていたコンピュータで動いていました。現在は、3階までしかありません。自分は、人族です。他のプレーヤーの様にエルフ族、龍族、魚人族のどれにも転生しませんでした。自分のライトボードは、旧バージョンです。自分のは機能しています。メインコンピューターのAIに、NEWバージョンのライトボードの不具合を訴え、旧バージョンに戻してもらったなら、転生者全員、ライトボードが使えるようになります」


 この様に、しばらくの間は、龍王とヒロの間で、1問1答が繰り返された。フォブ爺に答弁してもらい。他の氏族の質問に答える。思った以上に、会議が長引く。



 パグーに来てから、今日までのことを全部話した気がするよ

 ヒロが、そう思った頃に、やっと、ずっと黙っていた水竜王が前に出た。


「婿殿の話は、もう、ええじゃろ。いずれは、対決せんといかん相手じゃ。ウラヌスのアルテミス王宮の内部調査もこれをきっかけにやりたいというんじゃ。それに異論のある者は、おるまい」


 珍しく黙っていたゼオも声を上げた。


「龍王よ。裁定を受けるか」


「是非もない」


「親父!」


「裁定じゃ。10匹の怪物討伐を許可しよう。皆も婿殿を助けよ」


 ガイガイオウが、「オー」と、声を上げた。それをきっかけに、王の間に歓声が響く。ヒロには意外だったが、龍族の声が一番大きかった。


「討伐の詳細は、龍王に任す。ゼオ良いな」

「意見は言っていいんだろ。わしが以前の司令官だ」

「龍王を助けろ」

「了解した」


「魚人族も戦闘に加わるぞ。婿殿を助ける」

 海王も加わる。裁定も終わり、水竜王が、婿殿などというものだから、アギトのタガが緩んだ。ムッとする龍王。エルフ王は涼しい顔をしている。


「ヒロ君は、2日後にベロニカ様に会う。ベロニカ様の答えを待ってもらいたい。こちらは、アリーシャを連れて行って良いと申し送っているから、準備をするのは構わない」


 始祖様に意見を言える者は、宇宙全体でも、そう、多くはいない。しかし、エルフ王の物言いに、戦闘は必至だと、ここにいる全員が感じた。


「いざ、ことが起こったら、全員団結する。これでよいか」


 ここにいる全員が賛同した。


 将軍たちが、側近と顔を突き合わせて話し合い出した。場がざわつく。そこで、龍王が閉会を宣言した。


「各自、準備を怠るでないぞ。この話は、ここまでとする」


 ヒロは、ビーに肩をたたかれ、やっと肩の力を抜いた。

「お疲れ」

「蜂蜜ドリンクくれよ。休憩したい」

「まかせろ。その前にもう一仕事みたいだぞ」

 そう言って、龍王の方を見た。龍王は、さらに突っ込んだ話がしたいようだった。そう言う意味では、フォブ爺か引っ張りだこで、創生時代の詳細が聞きたいと、取り合いになっていた。海王が見かねてそちらに行く。


「婿殿、話がある。ビー、謁見者の控室に婿殿を連れて行ってくれ。その後は、入室禁止にしてくれ」

「心得ました」


 謁見者の控室に一人にされたヒロだったが、ビーが蜂蜜ドリンクを置いて行ってくれたので、とりあえず一心地ついていた。


 そこに、高貴そうな男性が入って来た。話しに聞いていた、龍王の擬態だ。ガタンと立ち上がるヒロ。


「そのままで良い。この姿は、初めてだったかな」

「よほどの人か、側近でないと見れないと聞いています」

「感情が顔に出るから、そうしている。もっとも、メイドたちはみんな見ているがな。実際は、この姿が好きなのだ。それでは、話をしよう。呼んだのは、あれの母親のことを少し話しておきたいと思ってな。ベロニカ様に会うのだろう。エルフの知識は、有った方が良い」


「ラヴィ達には、話すなということですよね」

「そうだ。ベロニカ様の能力は聞いたか」

「フォブさんから聞きました。ワールドのことも」

「婿殿は、良い出会いをしているようだ」

 少し、間が空く。龍王は、虚空を見てじっとした。


「幻想の具現化。ラヴィの母親も、その能力を持っていた。ナーシャは、ラヴィを産むためにその能力を使い結晶化して死んだ。ところが、死んでから、私の夢にナーシャが現れるようになった。復活するから、それまで、娘を見守ってほしいという。それも、ある時期など、毎晩のように夢に現れた。それからしばらくして、娘は、ロードオブ召喚獣にログインするようになった。そして、今回の事件。婿殿が、どうしてこの世界に来たのか考えさせられる」


「自分も知りたいです」


「ナーシャは、婿殿に、ラヴィを任せたかったのではないか。そう、思えてならないのだ。ラヴィが思い切ったことをしたとき、救い出せるのは、結晶光耐性がある婿殿だけだ。今では、そう、思っている」


「ラヴィが、結晶化するような無茶を・・」


「無茶をすること自体は、私の取り越し苦労であろう。婿殿がいれば、そんなことはしない。だから、任せたい。それは、アリーシャにも、ノーマにも言える」


「自分から見れば、今でも無茶しているように見えます」


「3人には、手を焼くぞ。だが、3人は、婿殿を頼っている。今回我々を動かしたのは、あの3人だ。さて、ワールドの話だ。彼女は存在する」


「フォブさんは、次元の狭間に消えたと言っていました」


「それは、魔法時代の話だ。ゲームの具現化など、ベロニカ様でもできない。他にできる者がいないのだ。頭の隅に憶えておきなさい。それに、ナーシャもかかわっているというのが、デビット(ムシキング)と出した答えだ。確証はない。だが、これが推測通りなら、婿殿のこともパグーに答えがあるはずだ」


「パグーに答えが・・覚えておきます」


「話は終わりだ。ところで、この飲み物は何かな」


「ビー達に伝わる兵糧です。パンは、辛いですけど、これは、蜂蜜ドリンクです。疲れが取れますよ」


 そう言われて、海王が、蜂蜜ドリンクを飲んだ。


「ちょっと甘すぎるが、疲れが取れたよ」


 ヒロは、ラヴィがどのようにゲームをしていたのか、龍王に教えてもらうのであった。擬人化した龍王は、感情豊かで、人と変わらない。おおざっぱな性格は、お母さん譲りなのだろうと思った。

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