バベルの塔
バベルの塔は、3階部分までしかない。塔と言うよりコロシアムのように見える。1階は、玄関ホールで、だっだっ広い。2階に初心者用のアクセスカウンターがいくつも設置されている。ここで、簡単に初期設定ができる。ここには、大きなモニターが中央にあり、そこに、CMなどが流される。そして、3階にクエストカウンターがあり、ここから、自分がやっているクエストに飛べる。ここは、イベントのクエストカウンターでもあるので、多くのプレーヤーがひしめく場所になる。
「とりあえず、3階まで上がってみるか。ここのクエスト情報も知りたいし」
そう言って3階に上がって愕然とした。確かに3階は残っているが、天井は無くホールは、瓦礫で、見るも無残だった。
ラヴィ達も、このホールには、ヒロと良く居たので、3年前の記憶より、ゲームの記憶の方が鮮明で、がっかりする。
「キエラさんやマシュウさん、居ないね」
キエラとマシュウは、クエストカウンターのNPC。
「クエストゲートはあるね」
「外が見えるよ。機能してないんじゃない」
「ここは、死んでるな。2階のアクセスカウンターにアクセスしてみるか」
しかし、アクセスカウンターは、応答しない。
「ここもか」
4人とも想定内だと思う。3人が以前来た時もそうだったからだ。
そして、また、1階に降りた。
「ノバさんもいないし、やっぱり地下だよ」
「階段」
ラヴィが指さす。3人は、ここから地下に降りた。
「ずっと階段だったよね」
地下3階ぐらいの距離を下りてやっと地下1階。
「マジカルタクトと光結晶だ。みんな一つずつ持つか」
そう言って、マジカルタクトに光結晶をセットした。中は、真っ暗だ。
「よく怖くなかったな」
「怖かったよ」
「おじさんが変なこと言って脅すしね」
「ライトは、持ってたし、壁がすべすべしてたから、触りながら降りた」
「バロンさん、わるい人じゃなかったぞ」
「だから、変な人よ」
ヒロは、これ以上バロンをかばうのは、無理だとあきらめた。
地下3階、普通の階で考えると地下10階ぐらい降りたところで、やっと広いところに出た。
4人が、このホールに入ると明かりがつき、ホールの全様が分かる。真っ白で、何もないところだった。
「明かりがついてよかった。お父さんがね。私の話を聞いて、この部屋を調査させたんだけど、明かりもつかなかったし、私達が見つけた部屋に行っても、アクセスできる台なんかなかったんだって」
「3人がログインした部屋は、あそこか?」
このホールには、小さい部屋が2つある。ヒロが、その一つを指した。
「よくわかるね」
「ここから近いからさ。後で、遠い方も行ってみよう」
4人で、その、小さな部屋に入ると、ライトボードタイプの触れるホログラムが3つ中央に現れた。その3つのアクセスカウンターの中央に球状のホロモニターもあり、映像も映るようになっていた。
3人は、自分がアクセスしたカウンターを触って動くか確認する。すると、名前を打ち込んでくださいと出た。名前を打ち込むと、球状の大きなボタンが現れ、3人は、最初にそうしたようにその玉に手を置いた。
「承認」
中央のモニター画面には、ヒロが現れ、ステータスやゲームのやり込み内容が次々と映される。自分たちのボードには、自分たちのステータスや、やり込み内容を見ることができた。
「オレだな」
ヒロが腕組みして、中央のホロ映像を見る。
「メインコンピューターに要望のようなものを出せる項目はないか」
「見つからない。ヒロのことだったら、出るけど」
ノーマが、ヒロの項目を見つけた。
「オレのこと?」
「コンボ技とか出てるよ。これ、この間の三連コンボのパワー数値じゃない。すごい、7万ポイントも行ってる」
「過去最高ってわけじゃないか。あの時は剣じゃなかったからな」
「ごめん、メインコンピューターにアクセスできない」
ラヴィは、ライトボードを使い出したばかりだ。「ボードに慣れない」と、頭をひねる。
「仕方ないか、アリーシャは?」
「こっちも駄目」
「こっちも」
一番慣れているノーマも駄目だった。
ノーマが、残念そうにヒロの方を向いた。
「これは、プレーヤーを召喚獣にするっていう試作品かな。多機能じゃあなさそう」
「どうかな、ラヴィのお父さんが調べさせた時は、このカウンターも出なかったんだろ」
「そうだったって」
「アリーシャ、どう思う。ずっと勘がさえてたじゃない」
「わからない。召喚されると、もう少し見通せると思うけど」
「そうか、アリーシャ、バトル召還するぞ。第三の目で見てくれ」
「了解」
「アリーシャ、バトル召還」
「あっ、ヒロ、待って」
アリーシャが、そう言うが早いか、着ている服がスポーンと無くなった。代わりに、華やかな緑の葉っぱが舞う。その中で、ほっとするアリーシャ。アリーシャは、さっきと、ほとんど変わらない状態で召喚された。
「ヒロったら、びっくりしたじゃない」
「ごめん。同じ場所だし、どうせ同じ服で出てくると、思ったんだ。一瞬、スポンと裸になったな」
「見えた?」
「すぐ葉っぱが舞ったから、大丈夫だと思うよ」
ノーマはそう言ったが、フラッシュが炊かれた時の様に一瞬だけ、見てしまったヒロだった。
「それよりどうだ」
話題を変えるヒロ。
「すごい、光の線がいっぱい。部屋中にはりめぐらされてる」
「いいぞ、ラインだよな。その線が集中しているところはないか」
「ここ」
アリーシャが指さしたのは、この小部屋の中央にある3つのコンソールだった。
「そうか、この部屋は、ここまでだ。ホールに出てみるか」
アリーシャにとって、ホールは、光の線がいくつも見えるきれいな部屋に代わっていた。
「きれい」
光玉でできた第三の目がきょろきょろ動く。
「ヒロあそこ」
そう言って、ヒロ達を部屋の中央手前に連れて行った。
「ここに、光の線が集中してるよ」
「右手だとライトボードだよな」
そう、言いながら、左手でドラッグしてみた。
ウ――――――――――――――ン
ガシュン ポーーーー
4人の目の前に、メインコンピュータのホログラムが現れた。天辺が、天井に届きそうなぐらい大きなコンピューターだ。天井が、10階分いるわけだ。形は、卵型に近い円筒形で、計器の塊のような外観をしている。
「うわー、まるで、戦艦のメインコンピューターみたいだな」
「やったね。ヒロ」
「アクセスして」
ラヴィとノーマは喜んだが、アリーシャは、大きな力を感じて怯んでしまった。ヒロ達は、アリーシャの表情に気付かず、大きな操作盤を触って見る。
「反応しないね」
「アクセスコードがいるのかな」
「だったら、そう言ってくるさ。アリーシャ、どう思う」
3人でアリーシャに振り返ると、アリーシャが、メインコンピューターを仰いでフリーズしていた。
「どうしたアリーシャ」
「大丈夫?」
「アリーシャ」
みんなに、そう、言われて、アリーシャの金縛りが解けた。
「ごめん、これ、たぶん結界ね」
「結界!」
ヒロには心当たりがある。
「コンピューターを動かなくしているの?」
「ううん、そんな規模じゃない。次元結界よ。図書館で読んだことある。たぶん、このコンピューターを拠り所にしたんじゃないかな。そうか、この規模なら、永続結界が可能なんだわ」
「アリーシャ、よくわからない」
「何で結界だってわかるの」
「だって、この感じ。私たち種族のだもん。ラヴィ、もっと集中して。ハーフなんだから感じるはずよ」
「次元って、次元門ってことか?」
「ちょっと違うかな。次元門は、出入りできるでしょう。これは、空間を閉じていると思う」
ヒロは、それだけ聞いて理解した。結界とは、ウラヌス王宮の怪物達を閉じ込めるために張った結界だ。よりによって、メインコンピューターを拠り所にしたんだ。いや、当時だと、幸運にも、ということになるか。
これは、・・・これは、ラヴィ達に気を使っている場合ではない。いや、ラヴィの祖父母の話は、しなくても話せるか
3人への対応を決めるのに、ヒロまでフリーズしてしまった。
「ヒロ」
「ヒロどうしたの」
「ごめんなさい。私、変なこと言った?」
アリーシャが謝っているのを聞いて、ヒロが決断した。
「みんな聞いてくれ。バロンさんが教えてくれた。このタオ草原は、昔戦場だったそうだ。化物の話も本当だ。怪物が強すぎたから、エルフに頼んで、閉じ込めてもらったそうだ」
「私達も聞いたけど、おじさんのほら話じゃないの」
「でも結界」
「これを見せられちゃったしね。本当だと思う」
「メインコンピューターを復旧させようと思ったら、結界を解いてもらわないといけない。だけど、強い怪物が10匹出てくるそうだ。ラヴィ、アリーシャ、ノーマも聞いてくれ。メインコンピューターを復旧させるのが、シンを倒す一番の早道だ。ライトボードが復活すれば、転生者たちに、みんなを守ってもらう服も、今よりずっと多く作れるようになる。結界を解いてもらって、怪物を倒そう」
三人は、ヒロの言葉に、ビビッとしている。こういう真剣なヒロに、3人は弱い。
「お父さんに頼んでみる。ワイバーン千竜隊を借りようよ」
「私も、お父さんに相談する」
「結界のことは、お母さんに聞く。お母さん、イルマ様に相談すると思う。お母さん仲がいいの」
「たぶん、水竜王に裁定してもらわないといけないだろうな。みんな、今日は、ここまでだ。バロンさんの所に帰ろう」
ヒロは、もう一度、左ドラッグで、メインコンピュータのホログラムを消した。




