フォブ爺の記憶
夕方のロパリは、美しい。
エリシウム島南岸は、夕日に、真っ赤になっていた。白い貝殻の家に明かりが灯っている。夕食時なのであろう、どこの家も、幸せそうに見える。街頭も灯ってロパリは、幻想的になっていた。
お昼にガイ先生の体術を見学したヒロたちは、長老の仕事を終えたフォブ爺の所に集合した。ノーマは、転生者の街に行って代表を父親の元に案内した関係で、素の状態でここにいる。代表たちは、ノーマの所に、一泊する。ラヴィも、ここまで来ていたから、素の状態に戻ってガイ先生に体術を教えてもらっていた。
フォブ爺が帰って来たので、ずっと、転生者の街にいたアリーシャをバトル召還で呼んだ。
「アリーシャ、バトル召還」
額に、第三の目を持ったアリーシャが召喚された。時差の関係で、アリーシャ、ヒロ、ラヴィは、もう、夜中になる。なので実は、元気がなくなっていた。今日は、いろいろあった。
ノーマが気を遣う。
「フォブ爺ごめんね。この時間だと、ヒロ達には、もう夜中なのね。ロードオブ召喚獣のことを中心に話してくれないかな」
「そうなんか。わしゃ元気いっぱいじゃがのう。いくらでも話してやるいうのに」
「そうだ、お願いがあるんですが。転生者の街の人魚で、コウさんって人が、フォブさんの話を聞きたがっていました。いろいろ面倒見てやってくれませんか」
「どんな子じゃ」
「惑星パグーのことを詳細に調べて、転生者に教える人です。フォブさんの話を真剣に聞くと思います」
「ええよ。真面目な生徒は好きじゃ。ラヴィもまた来るか」
「うーーーん」
「もう、ええ!」
「あっ、時間があったら、創生時代のことを詳しく聞きたいの」
「私も、ヒロに料理作れって言われた」
「私は、始祖様のことよ」
「ちゃんと聞くんじゃな」
「はーい」×3
こいつら、怪しいと、思いながらも、ちょっと嬉しくなるフォブ爺。
「ロードオブ召喚獣か。大きな事件じゃった。火星の地下世界で流行っとったんじゃが、プレーヤーが、大量に消える事件が起きての、ソフトも、アバターシステムも使用禁止になった。その時、ガイア人。わしらのことじゃな。わしらのご先祖様は、まだ、人の世界に入っておらんかったから、被害はなかったが、何人か能力者が、駆り出される騒ぎになったんじゃ」
「創生時代にも、ロードオブ召喚獣があったんですか」
「そうじゃ。2万人ぐらいが消えたんじゃったな。地球と、おんなじことが起きた。なのに、アバターシステムを作っとった会社に、実体がなかったんじゃ。捜査は、混迷しての。お蔵入りになった」
「始祖様たちがいっぱいいたのに?」
「海王様もでしょ」
「その時、ベロニカ様は、いたのかな」
「まだ宇宙の宝石だったが、居たの」
「すいません、宇宙の宝石のことを教えて下さい」
「ヒロは、創生時代より前の人なの」
ラヴィが、ヒロをフォローする。
「うむ、わしらは、始祖様から生まれた。始祖様は、宇宙の宝石と、人が合体して生まれた。じゃから、一族は、繁栄した。さて、宇宙の宝石じゃが、元は、火星や地球のようなガイアじゃった。創生時代では、宇宙の宝石も、始祖様も、わしらのことも、ガイア人と呼んでいたんじゃ」
「元惑星ですか。そんなものが、いっぱい火星に来たら、太陽系は無くなります」
「なかなかええ視点じゃ。その時、始祖様は、10人いなかった。宇宙の宝石は、500は、あったという。しかし、始祖様から生まれたガイア人は、10万人を下らなかったそうじゃ。火星の様な惑星が、同じところに、500もあったら、ヒロ殿が想像するように、太陽系が無くなっていたかもしれんの。じゃが、そうは、ならんかった。さて、なんでかなラヴィ」
「わたし?」
「教えたじゃろ」
「うーーんと。宇宙の宝石は、三つの能力を持っていたから」
「その三つは? ノーマが、答えなさい」
「うっ。反重力。放射線防御。異世界構築?」
「おしいのう。異世界構築は、三っ目の能力の応用じゃ。それじゃあ、アリーシャ」
「来ると思った。次元移動ね」
「正解じゃ。元々、これらの能力を持っていないと、人の世界に来れないし、入り込めない。これが、基礎能力じゃ。宇宙の宝石は、みんなこの能力を持っとる」
「基礎能力ですか。そうなると、他にも能力を持っていたんですね」
「さっきも言ったじゃろ、応用じゃよ。反重力ができるんなら、空を飛べるということじゃ。ヒロ殿は、ゼオにひどい目に合ったじゃろ。わしもやられたことがある」
「カナン山に送ってもらったんですが、あれは、惑星規模のジェットコースターです」
「ふぉふぉふぉふぉ、ゼオのは、反重力と、電磁波を使ってスピードを上げとる。じゃから、重さは関係ない」
「ひいおじいちゃんもひどい目に会ったって言ってた」
「水竜王もやられたか。ふぉふぉふぉふぉ」
「でも、ベロニカ様は、応用じゃあないでしょ。お母さんが、なかなか教えてくれないから、いろんな人に聞きまくったの」
「アリーシャ、冴えとるの。その通りじゃ。宇宙の宝石でも、特殊な能力を持っているもんがいる。ワールドもその一つじゃ」
「ベロニカ様の親ね。ワールド様っていうんだ」
「ワールドは、行方不明じゃ。いや、次元のはざまに消し飛んだのかもしれんな。この話は長い。魔法時代の話もせにゃならん。話を戻すぞ。ロードオブ召喚獣は、実在する。歴史にあるんじゃ。今でも、惑星サガと、惑星ジュウムは、存在しておるぞ。エルフ族は、ベロニカ様に連れられて、惑星ジュウムから3000年前に、この惑星パグーに来た」
「ロードオブ召喚獣のストーリーと一緒だ」
「でも、来たときには、もう、あの壊れたバベルの塔遺跡が有ったのよね」
「ラヴィも、少しは勉強してたか」
「惑星サガもあるの?」
「ノーマも、やっと勉強する気になったか。あるぞ、いまだに、モンスターが湧くそうじゃ。地上に上がった人魚族の楽園でもあるがの」
「興味湧いて来たー。じゃあ、地上の文化が、パグーより進んでいるのね」
「当り前じゃ。だいたい、海上で暮らしておらん。水球を作れるでの」
「わかる。私も、ちょっとだけできるよ。今度見せるね」
「できるんか! それを反重力で浮かせば、空中に生活拠点も築けるぞ」
「やりたい」
「レベル80になるとできるんじゃないか。ヘルプを読めよ。本当は、そのスキルで、スカルドラゴンを簡単に倒せたんだ」
「すごい」
ノーマに時差はない。元気いっぱいだ。
「それじゃあ、私、生体ロボット作れるの?」
「ベロニカ様がの。アリーシャにゃあできん」
「そうよねー」
惑星ジュウムの住人である生体ロボットは、エルフの僕だった。アリーシャのテンションは、下がり、ラヴィが、こっくり、こっくりしだした。
「こりゃ、ラヴィ。寝るんなら寝室に行け」
「そうするー」
一人脱落。
アリーシャが寝る前にどうしても聞きたいと頑張った。
「ワールド様の能力って、なにかな?」
「うーーん、すまん。そこまでは、思い出せん。もうちょっと待っとれ」
「分かった。私、帰るね。お母さんが12時までには帰るのよって、怒ってたから」
「そうしなさい。ノーマ、ラヴィを寝室に連れて行け。ここで、寝るなと言ったのに」
「ラヴィ、ここで、ねちゃダメ」
アリーシャが、葉っぱを舞い上がらせて家に帰った。ラヴィは、ノーマに連れられて寝室に。そこで、フォブ爺は、ヒロにだけに真実を語った。
「ヒロ殿、ええか。ワールドの能力は、ベロニカ様の能力と同じじゃ。これを、エルフがやると、ラヴィの母親のように結晶化する。危険な能力なんじゃ。じゃから、ワールドのことを聞かれたら、魔法時代の講釈を永遠と話す気でおる。アリーシャにも、この話は早い」
「結晶光ですか」
「誰から聞いた」
「ムシキングの奥さんからです。自分は、結晶光に耐性があるそうです」
「ウェンディか。ラヴィは知っとるのか」
「自分とロードオブ召喚獣をやっていたら、母親を救うことができると言われたそうです」
「うむーーー。その話し。わしには、答えがない。ベロニカ様の特殊能力は、幻想の実体化じゃ。それで、生体ロボットを作った。ワールドは、惑星規模で、それができるそうじゃ」
「じゃあ、ロードオブ召喚獣も」
「さっき言ったじゃろ。ワールドは行方不明じゃ。それは、ありえんことじゃ」
「でも、バベルの塔の遺跡がある」
「明日行くんじゃったな。もし、行っても答えが見つからんかったら、ベロニカ様を訪ねなされ。きっと何らかのヒントをくれる。ロードオブ召喚獣のストーリーと現実が、あまりにも一致しているのは、おかしいからの」
「ありがとうございます」
「それから、さっき言ったベロニカ様とワールドの能力の話は、三人には、内緒じゃ。まだ時期ではないと思うが、龍王が、ラヴィに母親のことを全部話したなら、かまわん」
「そうします。ウラヌス王宮の話も、聞きたかったです」
「またきなされ」
ヒロは、一人で抱えるには、大きすぎる秘密をフォブから聞かされた。自分たちが、ここに飛ばされた原因の一部を垣間見た気になってしまった。相談できるのが、龍王だと思うと気が重くなった。




