円卓会議
12人のギルマスや代表が、ギルド会館に集まった。ヒロは、ラジオの後ろに椅子を持ってきて、人魚用の柔らかそうで幅の広いソファーに座ることになった。ギルマスについて来た人たちは、壁際に立ったままだったり水中に浮いている。
みんな暗い感じなのに、ラジオだけ嬉しそうな顔をしている。
全員椅子に座った。何人かは、ギルマスの後ろに寄り添ってサポートする。みんなヒロを見ていた。
ブルーブルのホーンが、ラジオにどうだったと聞いて来た。
「どうだった、パーティーは組めそうだったか?」
ラジオは、虚空を見て、ちょっとカクッとなった。
「すまん、ヒロから、別件の話を聞いて失念していた」
「みんな見ているんだぞ。いきなり、マイナスイメージから会議に入らないといけないじゃないか」
「オレは、リーダー向きじゃないんだよ。ユウトさん、ヒロも来たんだ。そろそろ替ってくれよ」
最初にできたギルド。ザ・サマーのギルドマスターのユウトが、仕方ないと、口を開いた。
「ここからは、私が仕切った方がいいですか」
みんな頷く。ラジオは、ほっとした。
「ヒロさん、ライトボードは出ますか?」
「はい」
「では、私たちをパーティに組み込めるか試していただけますか」
ああ、そういうことかと、思うヒロ。
「誰で試します?」
「ホーンさん、お願いします」
頷くホーン。
ヒロが、ホーンの所にやってきてライトボードを出した。ライトボードで、周囲プレーヤーサーチをして、ホーンを自分のパーティーにエントリーした。
「こちらは、エントリーできました」
良しと、ホーンが気張って声を出す。
「承認した」
ヒロが残念な顔をする。しかし、ホーンは、あきらめずに、何度か了解を試してみる。
「OKだ」
「了解した」
「YES!」
「・・・だめか?」
「ライトボードじゃないと、無理だ」
ユウトがため息をつく。
「はー、我々が、ヒロさんのパーティーに入れるのなら、参加しているだけで、レベルが一挙に上がるんですけど、残念です」
「現地の一般の人たちは、レベルが10から20ぐらいです。そこまでは、個人の努力で行けると思います」
暗い顔をしたイベンターのキートンが、重要事項を確認した。
「ここは、現実なんだろ。死んでも生き返らない」
ラジオは、こういうことに物おじしない。
「そうだが、回復アイテムは生きている。もう、シンが現れた。手をこまねいていると、それこそ終わりだぞ」
「そうなのか」
キートンが、目を見開いてヒロを見る。
「一昨日戦闘したワータイガは、レベル65だった。だけど、相手を倒しても、霧散しなかった。結晶核も、強回復アイテムを7個も使わないと霧散しなかった」
「キートンさん、やるしかないのよ」
レベレーションのレイカは、ギルマスのハルキの様に最前線でずっと戦っていた強者だ。
「そうだよな、みんなを盛り上げるのが、ぼくの役目さ。ちょっと時間が欲しい、かな」
吟遊詩人の鏡花が、話を進める。
「ヒロさんは、海洋パーティーに出ていたのよ。この世界のことを聞いているはずだわ。まず、それを聞きましょう」
「ヒロさん、ワイバーン飛翔隊の戦闘を見ましたよ。現地の人は、安全なのですか」
「ここに、蟲型のエネミーが来ましたか?」
「来たぞ」
「防衛するしかありませんでした」
「俺の見立てだと、レベル30は、あったな」と、ホーン。
「その蟲人間たちは味方です。それに、ワイバーン飛翔隊は、ラヴィの所の兵士です。和解すれば、彼らも味方になってくれると思います」
「ぎゃう」
更にヒロが話す。
「分かったことは、ゲーム設定と、ここの現実が、ほぼ同じだと言うことです」
「では、エルフもいるんですね」
頷くヒロ。
「エルフ転生者の街には、行ったんです。彼らは、現地のエルフが住む浮き島に現れました。異世界に来たばかりの時でしたから、パニクッてました」
「すいません、うちのギルマスは、神経細いんです」
エヤーウイングの昭二が謝る。
「おい、700万円から話せよ」
「700万年だ。長くなりますけどいいですか?」
みんな承知した。
長い話なので要約すると、
サーバーがあるバベルの塔は、自分が、レベル100を達成したと同時に崩壊した。しかし、3階部分まで残っておりベースシステムは生きていると思われる。
それと同時に、この現実世界に飛ばされた。そこで初めて、自分の召喚獣たちが、プレーヤだと知る。ここは、彼女たちの世界だ。エルフ転生者がいる浮き島でそうなり、現地の人に会いに行く途中で、エルフの街に寄ることができた。彼らは、ライトボードが出なくなっていた。
自分の召喚獣の一人、アリーシャの母親スーザンは、観測者だ。彼女に現状を聞いた。惑星パグーで人族は、自分だけだと言われた。そこに来た、エルフ10賢人に、エルフ転生者を託した。
次に、召喚獣のラヴィの所に行くことになった。惑星パグーの代表は、ラヴィの父親の龍王だ。ここで、ワイバーン飛翔隊と戦闘になり善戦したが、飛翔石が無くなり世界樹に逃げ込むことになった。
この世界の住人は、人間を先祖に持つ進化した人たちで、銀河の10万の惑星に入植している。パグーは、センターコアに位置する。重力は、地球の1/2.面積は1/3になる。この10万の惑星に一つづつ世界樹がある。これを守っているのが、蟲族たちだ。彼ら聖戦士は、世界樹の中に住む。
ここで、もう一度戦闘になり、何とか勝利して、龍王に会うことになった。そこで、3召喚獣のラヴィ、ノーマ、アリーシャと婚約することになった。
「700万年というのは?」
「地球周期で我々の時代からどれぐらいたったか、甲殻族の族長に教えてもらったんです。フォブさんは、歴史を覚えていました」
ガクガッカイの博司が手を上げた。ユウトが、どうぞと手を出す。
「ヒロさんのライトボードが出たんだ。ベースシステムが生きているんです。なら、我々は、自分のレベルにあったアイテムを作れる。サブ職業の方は、ほとんど音声システムですから」
「そう思うぞ。うちの連中は、もう試した」
「ドロップアイテムも、アイテムバックが、いっぱいになれば、ギルド会館の倉庫に転送される。NPCがロボットのような感じにはなっていますが、引き出すのも、音声システムです」
みんな頷く。
「自分は、クラフターです。現地の強力な味方に武器と防具を供給できます」
何人かが、ボフンと、その場で浮上した。
鍛冶屋ギルド、ライカの、み鈴がつぶやいた。
「6人目だわ」
ホーンが怒る。
「ラジオ、なんで隠していた」
「クラフターのアイテムは、どうせ、高レベルにならないと使えないだろ。うちには、アリーシャがいたんだ。今まで秘密にしていたんだぞ。話せるか」
召喚獣のみならず、ヒロも強いはずだと納得する面々。
「ラジオさん、情報は、全て開示してください」
「すいません」
「あの、どういうことですか」
レイカが説明する。
「クラフターは、超希少職種よ。いままで、100万プレーヤーに、5例しかない」
「ラジオ!」
「すまん。だからって、使ったことないだろ」
「ヒロ君のことがばれるからでしょ」
「はははははは・・」
「こいつが、ずっと、オレを最前線にけしかけていたんです」
「ぎゃう」
「今回の異変が、アリーシャ達の性じゃないって、みんなを納得させたんだぞ。それでかんべんしてくれ」
「エルフ10賢人に説明してもらったらどうせそうなったさ。ラジオは、どこにいても変わらないな」
ラジオが、苦笑いしながら自分の頭の後ろをたたく。こういうことがばれても、物おじしないのがラジオの良いところだ。
「クラフター素材は、無償でヒロさんに供給する。ラジオさん、いいですね」
「問題ないです」
どうも、ラジオは、ユウトに弱いようだ。ユウトをリーダーだと認めている。
「ヒロ、その、なんだ。シン化したエネミーと戦ったんだろ。詳しく話せよ。アイテムのことも」
ヒロが肩の力を抜いて話しだした。
「レベル65のエネミーと戦ったんですけど。体感レベルは、80近くありました。最初、世界樹にいる聖戦士の斥候隊がレベル25のワーウルフと接触しました。彼らは、蜂人間です。自前のニードルで戦ったのですが、急所であるはずの結晶核の方が、体より硬かったそうです。我々の武器は、初めから、シン対策がされていると気付きました。防具の中には、弱いが回復効果のあるものがあるでしょう。我々が防具やアイテムを作ると、我々や現地の人の浸食を予防できると思いました」
「シン対策に、服の配布をしたいんだ」
「シン化の予防、我々も! そう感じたんですね」
「はい、現地の人も」
「なんてこと・・・・」
み鈴が険しい顔になる。
ガクガッカイの博司がユウトをちらっと見た。ユウトも同じことを考えていたようだった。
ユウトが、とても厳しい顔をした。
「まずいことになりましたね。竜に転生した人たちの中で、地竜人になる人は、裸のまま地中で、龍化するのを待ちます。龍がいくら聖獣だと言っても、最初は、人間です。ここが現実なら、シンに浸食される者が出るかもしれない」
博司が引き継ぐ。
「クラフターは、その人に合ったように武器や防具をクラフトするでしょう。無意識に、相手の詳細を判断しているんです」
「では、我々も、シン化する可能性があると言うことですね」
キートンが、小さい声ながら、マスメディアの役割を何とか果たす。
「早急に手を打たねば」
「量が必要ということですね。お守りの様なアイテムでもいいんじゃないですか」
薬と雑貨しか売っていないガクガッカイの博司が提案する。
うっ、いらんことを
ラジオがつまる。それでも、デザイン次第で、服も売れるだろう。ヒロ&ノーマ対ワイバーン飛翔隊のアクセス数が2000万を超えたんだ。どう見ても、人口は、億を超えている。気を取り直して提案した。
「ボーグもそうだろうが、うちは、全力で、服を提供するぞ」
ボーグのテラが頷く。




