エリシウム島の海底遺跡
貝の里は、エリシウム島の南海上にある。エリシウム島は、国が一つできるぐらい面積がある円形の広い島だ。島の中央には、エリシウム山がある。休火山で、島で生活している人にとっては恵みの山だ。しかし、島の北の海岸側にあるヘカステ山は、とても怖い山だ。活火山で、いつ、また、噴火するかわからない。そのヘカステ山の更に北方の海中に、人魚転生者の街が出現した。
このヘカステ山の海底に、大きな町があった。人魚の都で、一時は、とても栄えていた。ところが、ヘカステ山の火山活動が活発になって、その町は放棄されている。その都の名前は、ウラヌス。全宇宙を統べた神々の王と同じ名前だ。
ライトボードに惑星パグーの地図は出るが、ほとんどの、町の名前がない中で、この放棄された都の名前が、記されていた。人魚転生者のお宝フィールドなのだろう。みんな、これを見て人魚に転生している。
ところが、ここは、転生者の初期フィールドとは程遠い所である。エネミーもそうだが、環境が劣悪で、通常では、訪れるのも困難な所である。海水温度が、45度もあり、そう長く、ここに留まっていられない。場所が悪いと、沸騰しているわけで、近づくこともできない。
この放棄された都、ウラヌスに行くことができる種族が、鱗魚族である。全身を覆っている鱗が、体内温度を一定に保ってくれるため、長時間ここで活動できる。
ノーマは、シンと戦うには、ここにあるお宝が必要ではないかと思っている。ロードオブ召喚獣が、バージョンアップされた時に、真っ先に話題になったフィールドだ。だから、人魚に転生した人が一番多い。父親にその話をすると、鱗魚族の許可を貰えと言う。今は、鱗魚族の土地になっていた。鱗魚族が、ここに住んでいるわけではないが、都を守っていると言う。許可と言われノーマは、増々この都、ウラヌスに興味を持った。ノーマは、ヒロと、ラヴィ、アリーシャと共に、鱗魚族長のマイアと、面会する事になった。
マイアは、怪訝な顔をしてノーマの話を聞いていたが、急に、何かを思い出したように話しだした。
「町の財産は、確かにそのままです。だからと言って、シンと戦うための宝物なんて、見当もつきません。でも、火山流に埋もれた王宮には、何かあるかもしれません。そこは、溶岩に埋もれて地下迷宮になってしまっています。海中なのに、地上の様な空間です」
「ヒロ、ダンジョンよ」
頷くヒロ。
「では、ほとんどの魚人は、そこに入れないんですね」
「私達の種族で、それも、地上に進出できる者以外は、無理でしょう。溶岩に埋もれたのに、原形をとどめているところです。誰も、怖がって行く者はいません」
「ウラヌスを守っているのは、王宮の為じゃないんですか」
「違います。ここには、海中の歴史があります。文化遺産でしょう。発掘は、ずっと行っているのですが広範囲なので、そんなに進んでいません。ですが、いつ、また、ヘスカテ山が噴火するかわかりません。みんな一生懸命なんですよ」
「それなら、私たちが見つけたものを鱗魚族の発掘調査の方に見せると言うことで、発掘の許可をいただけませんか。それが、シン対策に使えるものなら、その許可も」
アリーシャが積極的になった。ウォッチのサブ職業を持つアリーシャは、目利きができる。アリーシャほどではないが、ライトボードを使えばヒロ達もある程度できる。
「かまいませんが、必要なものを見つけることができるのですか。危険の方が大きいと思いますが」
「ノーマとラヴィは、召喚されると、防御力が上がります。ウラヌスの探査は問題ないと思います。アリーシャは、召喚されると防御能力が上がります。彼女と、自分を劣悪な環境から守ってくれます。どれぐらい行けそうだ。アリーシャ」
「三人召還だと1時間30分ぐらい。私だけジャスト召喚で、6時間よ」
「オレの、魔法力(MP)は、限りがあります。自分が使うわけではないのですが、召喚獣が、防御に力を使います。いま、アリーシャが言った時間は、防御に徹した時間です。実際は、戦わなくてはいけません。多分、1召喚獣のみの召喚で、探査時間は、2時間ぐらいだと思います」
「でも、ヒロが、王宮の中で活動できるんなら、休憩できるでしょう。もっと長い時間大丈夫よ。だから、王宮も調べようよ」
ラヴィが、もっと調べる必要があると言う。
「王宮の中に、空気はありますか」と、ノーマ。
「はい、気温も30度ぐらいだと思います。場所によっては、熱いところも有ると思いますが。そこまで、踏み込んでいません」
「地上と通じているのよ」
アリーシャが予測する。
「ゲートはどうです。大きな都なら、有ったのではないですか」
ヒロは、外につながっているのは、ゲートで、王宮にゲートがあるのではないかと予測する。
「文献には、そうあるのですが、どこと通じていたのかわかりません。ですが、予測はできます。バベルの塔でしょう。今は無い、高い塔のどこかと通じていた。そう思わせる物語や、詩などが出土していますから」
バベルの塔がらみか。いやな予感がする
ヒロは、三人と目を合わせて危険を知らせた。三人とも、この目くばせに反応した。
「マイアさん。我々に、探査許可をいただけませんか。分かったことが有ったら、すぐ知らせます」
「最初は、下調べですよね」
三人はうなずいたが、ラヴィが違う反応をした。
「エネミーはどうですか。空気があるのなら、生き物がいても不思議ないですよね」
「ごめんなさい。入口で、引き返していますから。風を感じたのぐらいしかわかりません」
「最初は、ウラヌスを回ってみないか。そこは、環境だけですよね」
「はい、よっぽどのことがないと、シャークは襲ってこないと思います」
「いるんだ」
ラヴィが、残念そうに言う。
「シンの結晶核ができていると、襲ってくるかも」
ノーマも同じ反応をした。
「鱗魚族の為にも、回るぞ」
ヒロに言われ、三人とも頷いた。
「私たちの中にも、戦闘になれている人がいます。彼女たちを付けますね」
「女性なんですか!」
「私たちの種族は、女性の方が強いです。始祖様が女性だったからです。始祖様は、とても強い方だったそうです。アマゾネスがいいでしょう。6人と少数精鋭ですから」
「探査だけだと、全員でやるか。戦闘になったら、ノーマ、頼むな」
アマゾネスのお目付け役付きだが、こうして、古の海底都市ウラヌスの探査許可が下りた。
この後ラヴィは、王宮に入らないのなら、自分は、ウラヌスに行かないでホップを鍛えたいとみんなに断っている。全員それがいいだろうと賛成した。そして、相互の連絡だけはしっかり取ろうと言う話になった。
その日は、ノーマの家に泊めてもらった。ラヴィとアリーシャは帰宅だ。ここのゲートは、エリシウム島の地上、主に甲殻族がいる街にも通じている。時差ボケが治らないヒロは早い就寝になった。
ノーマたちは、今後のことを話し合っていた。
「お父さん。ヒロ、どうだった」
「さすが、水竜王様の目利きだよ。人魚の心をとらえていたな」
「変に偉ぶっていないし、私は好きよ」
「お母さんも、ありがと」
「結婚はどうするんだ。このままだと重婚だぞ」
「結婚は、まだ、よくわからないの」
「そうですよ、あなた。ノーマは、まだ15ですよ」
「しかしだな」
「いざとなったら、重婚でも、なんでもする。その方が、3種族とも繁栄するわ」「おまえが友達思いなのは知っている。だが、何でも調整すればいいってものでもないぞ」
「気を付けるね。でも、ヒロが決めることよ。水竜王様がおっしゃってたじゃない」「まあなんだ、剣術を習いにここに来るんだ。様子を見るか」
「うん」
「ノーマも、早く寝なさい。明日は早いんでしょ」
「ううん、朝は、ラヴィよ。ラヴィがジャス召喚された方が、みんなヒロだってすぐわかるのよ」
「転生者か。丹人が、ヒロ君に任せろと言っていたが、人魚だろ。わしの所に代表者を連れてこいと言っといてくれ」
「わかった。たぶん、代表者は、ラジオさんって人。じゃないと、あんなに転生者の人が結束することないもん」
「どんな奴だ」
「あのね・・・・、・・・・、・・・・」
こうして、海王家族の夜は更けていった。




