ノーマとアリーシャ
やっぱり、おれの召喚獣は、全部異世界人だ。それも、本物。召喚獣のポストが一つしかなかった時から、入れ替わりで、出てくから、おかしいと思っていた。今は、ポストが、3つある。ラヴィと話をしていて、こいつら、グルだったと、わかった。これで、点と点が繋がった。
つまり
おれは、ライトボードを出して、召喚獣のポストを呼び出し、普通はできないはずの3体同時召喚をかけた。
「きゃ!」
「あれ?」
それも、実態で現れやがった。
「アリーシャ、ノーマ、お前たち、おれのゲームで、勝手に遊んでいただろ」
ちょっと怒っているおれと違い、ラヴィは、嬉しそうだ。
「おかえりー。私達のこと、ばれちゃったよ」
「キャー、ラヴィ」
「私たち、実態じゃない」
「おまえら、ほとんど、人じゃないか」
ノーマは、人魚だ。だが、足がある。アリーシャは、耳がとがっているだけ。二人は、慌てて、ラヴィの後ろに隠れた。
「大丈夫だよ。まだちょっと、怒ってるけど、ラヴィのこと、許してくれたもん。ラヴィは、相棒だよ。大丈夫だって言われた」
言ったけど、あー、もういいか
「わかった、怒らないから、出てこい」
二人とも、ラヴィと一緒で、ふわふわ浮かんで、おれの前に来た。
おれは、息を吸い込んだ。
「一つ聞いていいか。ここは、おまえらの世界じゃないか」
「そうなの?」
ラヴィは、さっきまで、自分とバーチャル世界にいた。
「そうかも」
ノーマが、自分の服を見て答える。
「だって、これ、パジャマだよ。さっきのままじゃない」
アリーシャが、念話をした。
「お母さん、ごめん、今日は、何日だっけ」
7月8日でしょ。急にいなくなるからびっくりしたじゃない、今どこなの
「うーん、たぶん、ゲートの近く」
そうなの?、いいから、戻ってらっしゃい
アリーシャは、かしこまっておれを見た。
「えっと、ヒロが、こっちに来た見たい」
「みんな、いつも、そんな感じで、浮かんでいるのか」
「そんなことない。普通よ」
「私は、地上に出た魚人族なの。両棲ってこと」
「人は、私たちの原型よ。初めて本物見たわ」
おいおい、こっちがそれを言いたいよ
「そうだな、ノーマ、ちょっと水玉弾出してみろ」
「えー、無理。そんな能力無い」
ラヴィが嬉しそうにノーマに声をかける。
「いいから」
「こう?」
ノーマが、召喚獣の時のように、人差し指を天にかざした。少し回すと、指の上に、サッカーボール大の水が、玉になって回転して現れた。水玉が出たことに驚きもしたが、ノーマは、調子に乗った。
「ウォーターシュート」
水玉は、スピードを上げて、浮き島のはるか彼方に消えた。
「すごい、今の、私が出したのよね」
はー、やっぱりな ゲームのままだ。だいたい、ライトボードが出ること自体、現実離れしているからな
「この浮き島には、アリーシャの家がある所なんだろ」
「そうみたい」
「この世界のことを教えてくれないか。できれば、帰り道があるのなら知りたい」
「わかったわ」
「私が教えるよ」
「ラヴィのお父さん、たしか、龍王だよな。人の歴史にも詳しいと思うけど、おれは、無事でいられるのか」
この3人とは長い付き合いだ。会話が成り立つものだから、少しずつ、設定を聞いていた。たぶん本当のことだ。
「すごく、怒ると思う」
「だろ! アリーシャのお母さんは、観測者だったっけ、博学なんだろ。話が早いと思うんだ。ノーマは、かえっていいぞ」
「私も行く」
「今、そっちは、夜中だろ、寝ろよ」
ノーマは、パジャマ姿だ。そういえば、ノーマは、最初に出てきたとき、ラヴィの睡眠時間に出てくると言っていた。
「目が覚めちゃったの」
「じゃあ、着替えてこい。呼んでやるから。復帰サイン出してみろ、たぶんコールが来ると思う」
「うん」
こっちが迷子になったのに、仕切っている状態だ。
ノーマは、シャボンの泡と共にいなくなった。
基本、ラヴィメインで召喚していたと言うか、ずっとおれの肩の上でふよふよしていたのだが、ある時間帯は、アリーシャと、ノーマが交互に出てきた。たぶんラヴィが寝ている時間がノーマで、父親に説教されていたり、用事があってゲームに出れないときにアリーシャに代わってもらっていたのだろう。最初は驚いたが、この二人は、ラヴィと違って話すから、ゲームだし、ボーナス召喚かなぐらいの軽い気持ちで、使っていた。
ノーマは、ステータス異常の回復が得意だ。さっきのように、水玉弾で敵単体に強攻撃をする。弱いが、回復もできる。マーメイドは、最初に出てくる召喚獣で、召喚獣としては、味方全員のステータス異常と弱いが回復を一挙に行う。
アリーシャは、回復系。応用で、回復させちゃうが、敵を眠らせることができる。攻撃は不得意だ。召喚獣としては、癒しの歌を歌う。パーティを組んでいたら、仲間もずっと少しずつ回復をさせる。
この二人が回復系で、たまに出てくるものだから、3体セットなのかなと思っていた。
普通気付つけよオレ。
「アリーシャの家は、ここから遠いのか」
「ゲートって、浮き島の真ん中だから、私がいる森が見えるはずなんだけど。ここ、何のゲート?」
「バベルの塔側の端っこだろ」
「ライナー渓谷から来たよ」
「ザブ砂漠の?」
アリーシャは、壊れたバベルの塔を見た。
「あんなにくっきりと塔が見えるの、初めて」
それは、壮観な眺めだった。
バベルの塔の上の雲には、ぽっかり穴が開いており、そこから、日の光が、搭に降り注いでいる。
位置関係が分かったので、アリーシャが残念な顔をした。
「ごめんね、家まで、かなりある。私も一回家に帰って、お母さんに相談する。ずっと、南に下った森が私の家よ」
「たのむよ」
アリーシャは、鮮やかな木の葉の中に消えた。