三人のメイド
お屋敷の屋根裏部屋に落ち着いたカイラは、庭で騒いでいる職人を見てニコニコしていた。メイドになって、初めての仕事が、リナ様、ゼオ様のお屋敷なのは、本当にラッキーだ。頑張って学校でいい成績を収めすぎて、龍王城に連れて行かれた時は、右も左もわからないで戸惑っていた。今は、地元に帰れて、なんだかリラックスしている。
ここに、同僚のマーナとサファイが押しかけていた。
「こっちにいらっしゃいよ」
「地元なんでしょ。いろいろ教えて」
二人はベッドに座って動こうとしない。
「キートンさんが、お屋敷を案内してくれるよ。後にしようよ。」
ヒロが、リナの屋敷にやってきた。
実際は、ノーマの件で、貝の里に向かうのに、ゲートを使うので南の町に来た。ついでに、ホップの様子を見に来た。ホップに会いたがっていたアリーシャを呼んで昼過ぎまで、ここで過ごすことにしている。ノーマの時間帯だと、今は、夜中だ。
「アリーシャ、バトル召還」
額に光玉で出来た三っ目の目を持つアリーシャが現れた。アリーシャは、動きやすい格好をして現れたが、着替えのドレスも持ってやってきた。ヒロに、貝の里まで付き合ってほしいと言われていたからだ。
「きゃー、ホップ」
アリーシャは、いきなりホップに抱きついた。
無茶するなーと、思う。だが、アリーシャは、ロードオブ召喚獣のヘルプをよく読んでいた。ブリーダーに名前を付けられたエネミーは、同じ枠の召喚獣とも仲良くなる。アリーシャは、ブリーダーのスキルを持っていないのに、ホップと仲良くなれるのだ。
お屋敷の玄関でこうなり、二人とも、まだ、リナに挨拶していない。
「あなたが、ヒロね」
ヒロの身長は、177。ゼオで、そうだろうと思っていたが、見上げるような美人のリナを見て、ラヴィが小っちゃくて良かったと思った。ラヴィ達はみんな同じぐらいの身長、165だ。
「すいません、お世話になります」
「ごめん、まだ言ってなかった」
ラヴィがそうだったと思い出す。
「ヒロもホップと一緒に、お願い、おばあちゃん」
「そうなの、じゃあ、忙しくないときは、酒場で働くんだよ」
「そうなんですか」
「おじいちゃんも働いてる」
お願いしますって言っちゃったよ。まあいいか
「アリーシャはどうするんだい」
「私は、パグーの観察をしなくっちゃいけないんです」
「じゃあ、実家だね」
「あの話は」
アリーシャが、ヒロを見あげた。
「まだだ」
ヒロは、人魚たちが、盛り上がっているのをノーマから聞いてラヴィも貝の里に連れて行くことにしていた。本当は、ブリーダーのレベル上げをさせたかったのだが、それより緊急だ。この件は、ビーに、リナに相談しろとアドバイスをもらっている。そこで、リナに現状を話した。
「リナさん、すみません、ちょっと込み入った話をしてもいいですか」
「いいわよ。キートン庭に行くわね」
「はい、奥様」
アリーシャは、ホップと話ができる。ポップが言うには、少し、人の話が分かると聞いて、詳しく聞いていた。
「そうなんだ。私や雷竜人の人は、シシガーに、似ているのね」
「がっ、がっ」
「じゃあ、シシガーを観察すると普通の人も、もっと、ホップとコミュニケーションできるんだ」
「がう」
ラヴィも加わる。
「じゃあ、ヒロに頼んで、森に遠征しない」
「襲われたばかりなのに?」
「もしかしたら、シシガーの友達もできるかもよ」
「いいかも」
「あおーん!」
「大丈夫よ」
「でも、ホップは、ちょっと鍛えないとね。強い人って、もっといるんでしょう」
「がう」
「ごめんね、今度紹介するけど、ノーマの所に行かないといけないの。鍛えるのは、ちょっと待ってね」
ヒロの方は、リナとお茶しながら、ノーマの父親の話になった。
「うーん、分からないけど、ゼオに言っておくわね。ゼオが、海王に話したら、海王は、性急なことをしなくなるわ」
「お願いします。シン対策のために、味方は多い方がいいです」
「そうね。でも、今日、海王には、自分の意志をちゃんと話さなくっちゃ駄目」
「結婚は、よくわからないです」
「結婚でなくてもいいわ。いま、ヒロがどうしたいか話してみたらどうかしら。海王は、ちゃんと話すと聞く人よ」
「シンを倒すことですか?」
「いいんじゃない、そのためのラヴィ達でしょう」
「はい、ありがとうございます」
リナは、こういう、込み入った話に強い。酒場で、そんな話をいっぱいするからだ。
「ラヴィ、アリーシャ。そろそろ着替えないといけないわ。向こうに行ったら美味しそうでも、あまり食べないのよ。だから今のうちに食べて」
リナは、そう言って、二人を食堂に連れて行った。
ヒロは、ホップに、実は、ラヴィを鍛えないといけないと、話すことになる。素のラヴィは、レベルが20ない。ホップを戦闘に呼べるようになるのは、レベル20だ。だから、それまでは、素のラヴィとレベル上げをしなくてはいけない。しっかりしなくてはいけないのは、ホップの方だと言い聞かせた。
「普通〈ゲーム〉だと、オレがホップの面倒を見なくっちゃいけないんだ。でも、その暇がなさそうだ。だから、ラヴィを頼む」
「がおーーーん」
ホップは、精悍な感じで吠えてくれた。
「それと、お兄さんのスキルを覚えてほしい。爪のことじゃないぞ。お兄さんは、相手を吹き飛ばしていただろ」
「ぐーるるるるる」
「そうだ、ホップにもできる。爪はすぐに生えてこない。いま覚えるのがチャンスだよ。だから、相手が弱くても手は抜かないこと」
「がう」
「よし、オレ等も、飯を食おう」
「がおーん」
3人のメイドは、忙しくしていた。
カエラが、ラヴィ。サファイがアリーシャの着替えを手伝う。マーナは、二人のサポートで二人の間を行ったり来たりしていた。
「アリーシャ様、額の目がきれい」
アリーシャの第三の目は、見えていて、きょろきょろ動く。そのたびにキラキラしていた。
「えへへ」自慢の目だ。
「サファイ、手が止まってる。アリーシャ様、半透明のは無かったですが、このショールをお持ちください。リナ様のです」
「ありがと、みんなも貝の里に来ない?向こうで、ラヴィの面倒をみるってことで、行けるんじゃない」
「いいんですか」サファイが喜ぶ。
「リナ様に聞いてみます。サファイ、ぬか喜びし過ぎ」
「すぐ聞いてきてね」
サファイは、期待を一杯に膨らませた。ラヴィ達は、お屋敷に閉じこもっている人たちではない。自分たちも戦闘訓練を受けている。ちょっと違った人生が待っている予感がした。
ラヴィの方は、カエラと久しぶりに、ゆっくり話をした。ラヴィは、エルフ族と違ってシンプルだ。ラヴィは、祖母の酒場にも顔を出していたから、カエラと知り合いだ。カエラが、メイド学校に入っていたので、2年ぶりの再会だった。
「北の砦に行けなかったんだ」
「うん、同級生の男の子より、私の方が強かったんだよ」
「分かるけど、なんで、メイド?」
「メイドに、戦闘課程があったのよ」
「カエラに先生になってもらおうかな。最初は、素の私とホップがフィールドに出るのよ」
「じゃあ、みんなでパーティー組む?マーナもサファイも、戦闘訓練受けてるよ」
「本当!」
やはりヒロの予想の斜め上を行くラヴィだった。
「奥様と知り合いなんでしょ」
「実家が、旅人の酒場の向かいなのよ。リナ様は、そこの店主」
「リナ様は、酒場の女主人なの?」
二人ともビックリ。
「ゼオは、バーテン」
「ゼオ様を呼び捨て?」
「公だと、ゼオ様って言った方がいいわ。メードの仕事をしている時もよ」
マーナが注意する。
「うん、気を付けるね。でも、いつもだと、そうしないと、ゼオが、怒るの。酒場だとリナ様もそうよ。ゼオは、龍王をやらなかったでしょう。酒場の一人娘だったリナに惚れて、旅人の酒場に入り浸っていたんですって」
とっても面白そうな話なのだけれど、キートンが屋敷を案内すると迎えに来たので、この話は夜までお預けとなった。




