決戦ワータイガ
ラヴィは、ゼオに、助けたワータイガを運んでもらいながら、助けた理由を説明した。
「おじいちゃん、この子にも、結晶核が出来てた。でも、まだでき始めたばかりよ。いまだと、取り除くことができるのね。そうしてあげると、この子には、もう、結晶核ができないのよ」
「抗体ができるんだな」
「うん。だから、この子は、もう、大丈夫。でも、今、ヒロと戦っているワーウルフは、手遅れよ。結晶核を取り除くと、内臓も一緒に消滅する。あの結晶核は大きすぎる」
「そうか・・」
手短に答えたゼオが、シンとの戦いがキツイことを実感した。
「今こいつを群れに返すことはできないんだろ。もし、結晶核付きの奴が他にも居たら、格好の的だ」
「うん・・」
ゼオの速い理解を褒めるより、このワータイガを心配するラヴィ。
ゼオが優しい顔になった。
「しばらく南の本宅に、こいつをおいてやる。ラヴィが面倒見るだろ」
「いいの!」
「ワハハハハハ。サイモンには、内緒だぞ」
ラヴィは、重いワータイガを運んでいるゼオに飛びついた。
ラヴィは、サブ職業を持てるとアリーシャから聞いていたが、今まで決めていなかった。ヒロに相談して、ブリーダーになると決めた。ラヴィは、このワータイガを撫でて、「よろしくね」と、つぶやいた。
おれは、あのワータイガが、見ていないふりをしたときが一番やばいと直感していた。
ワータイガは、森に帰る仕草をした。
「そら来た」
おれは、剣を真正面に構えてワータイガを待ち構えた。
ところが、ワータイガは、まっすぐ攻めてこないで、ヒロの手が届かないところを素通りするように突進してきた。長い手足で、ヒロをからめとろうとした。
1発めの腕攻撃を避けたら、もう反転して飛びかかってくる。今度は、振り下ろしと横殴りのコンボだ。
それも、難なく避けた。先ほどのワーウルフ対ゼオを見ていてよかった。
ところが、こいつは、さらに体を回転させて、後ろ足で蹴ってくる。それも速い。巨体が、コマのように回った。
「うわっ」
これを受け止めはしたのだが、ここでも、吹き飛ばしのスキルを使ってくる。おれは、10メートルぐらい吹き飛ばされて、体勢を立て直すしかなかった。
そうすると、もう、次の突進が来る。それも、やはり真っ直ぐ来ないので、手が届かない。
「くそ! 方針を替えやがったな」
終わりのない連続攻撃に武器替えなどの対策が打てない。
それを見たゼオがアドバイスした。
「死地に飛び込め。後足がガラ空きだ」
これらの攻撃の時、後ろ脚は、踏ん張っていて、動きがとまっている。だから、反転も速い。ヒロは、次の突進に合わせてワータイガに突っ込んだ。
からめとろうとする前足を潜り抜け、頭の真正面に出る。ワータイガは、ものすごい形相で貰ったとばかりに前足を振り下ろし、横殴りの連続攻撃をしてきた。
おれは、更に、前進して後ろ足に出た。後ろ足は、両方とも軸足として踏ん張っていた。
「貰った!」
右後ろ足の爪を振り下ろして切り取った。
ワータイガの体制が崩れる。それでも、もう片足で踏ん張り、ここから脱出する。それを追いかけるヒロ。無理な体制からの跳躍に飛距離はない。
「もう片方の足だ」
一瞬、ワータイガの動きがとまる。
やばい
「グオーーーン」
全方位の吹き飛ばしが来た。
おれは、吹き飛ばされて、ダメージを負った。しかし、左後ろ足の爪は、意地で切り取ってやった。
「ヒロ!」
「待て、ラヴィ。奴は、もう、踏ん張れない。わしにヒロの実力を見せてくれ」
倒れたヒロに、残った左前脚の爪を伸ばして止めを刺そうとするワータイガが突っ込んできた。
「ジャストガード!」
おれは、剣の広い方で、これを受け、それと同時に、居合いの様に押し返す。
ワータイガの巨体が、一瞬、凍り付いたように止まる。
「オレも、似たスキルを持っているんだ」
ガッ
次の瞬間、ワータイガが吹っ飛んだ。自分の吹き飛ばしが、そのまま自分に帰って来たのだ。
ゼオは、丘の上で腕組みして、これをニヤッと笑って見下ろした。その周りに集まるハチ達。
「結晶核が、がら空きだぞ」
グワオン
ヒロが結晶核を3度切る時間があるほどワータイガは、仰け反っていた。残った爪で反撃するが、手が届かないのは、ワータイガの方だ。ワータイガは、自分の全体重をヒロに掛けるように、覆いかぶさって、ヒロを取り込もうとする。瀕死になり、肉弾攻撃を仕掛けてきた。
「ヒロ!」
ラヴィが手で口を覆った。ヒロが、ワータイガの下敷きになった。
「大丈夫だ」
次の瞬間、ヒロがワータイガの後ろ側に現れた。とどめを刺したのは、ヒロの方だった。全体重をかけてくるのに合わせて結晶核に衝きを入れていた。
この時、おれとラヴィには、【コングラッチレーション】の光文字が見えていた。このワータイガは、ここ一帯のボス級エネミーである。
ヒロに、ワータイガの爪が大量にドロップした。素材アイテムだ。これで、伸び縮みする武器を作ることができる。それと武器だ。タイガーナックルが2セット。ワーウルフの衣が24枚。そのほか、ポーションやハイポーションが大量にドロップした。後で調べないとわからないが、森羅結晶も大量のドロップした。
しかし、良いところまでゲージは伸びたものの、レベルは上がらなかった。苦戦したのに、こいつは、格下だったということだ。
ここは、こんなやつが、ごろごろいるのか
レベル以上の戦いをする相手に出会った。おれは、今回の勝利に気を緩めることができなかった。




