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ロードオブ召喚獣  作者: 星村直樹
ジラーフの浮島
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異世界人ラヴィ

 浮き島は、激戦のザブ砂漠やライナー渓谷。浮き島につながるゲートがある地下ダンジョンのオーロラテイルと違って、穏やかだ。


「ブラックスコーピオン、強かったな」

 それに、楽しかった。ライナー渓谷も、オーロラテイルのダンジョンもすごくリアルで、一休みなんて考えられなかった。



「そういえば、不思議なこともあったな、ラヴィ」

「ぎゃう」

 ラビーは、嬉しそうだ。


 ラヴィの胸には、砂漠の秘宝が輝いていた。ラヴィにとって、初めてのドロップ。ラヴィは、飛びついて甘えてきた。よほどうれしかったのだろう。


「ははは、よせよ」

「ぎゃう、ぎゃう」


 ラヴィとじゃれていると、強そうなモンスターが現れた。Lv20。たぶん、ここのボスだ。自分が戦うほどの相手ではない。しかし、ラヴィは、遊んでいるのを邪魔されたと思った。それに、砂漠の秘宝をまだ試していない。胸の赤い宝石を指さして「ぎゃう?」と、言ってきた。


「いいぞ、集中攻撃系の様だから、ここを荒らさないさ。でも、本気を出すなよ」

「ピピッ」


 サポートパートナーで、いるときのラヴィは、さほど大きくない。胸にある砂漠の秘宝を両手で覆い、ターゲットを見た。ボスは、キノコモンスターで、たぶん、眠りの霧を吐くだろう。剣士にとっては面倒な相手だ。しかし、ラヴィは、後方支援の魔法を得意としている。召喚獣として、エネルギーが溜まると広範囲攻撃をするが、普通の戦闘では、大した攻撃をしない。


 それが、今回、強攻撃を使えるマルチプレーヤーになった。


 ラヴィが、キノコモンスターをにらんで、上体をそらし、グイッと頭を前に出して目を赤く光らせた。


ボガン


 マ・ファイとある。5回ぐらい連続で打てそうなポイント爆発の魔法だ。キノコモンスターの内側から、火の玉が膨らみ内破した。レベルが違いすぎるので、容赦ない攻撃になってしまった。


【コングラッチレーション】



 レベルが低いと言っても、やはり、ここ一帯のボスだ。ボス戦最後に出るロゴが現れた。

 当然、自分にポイントが付く。それに、ラヴィにまた何かアイテムがドロップした。そして、レベルアップの告知。



「Lv100になっちゃったか」


 仕方ないかと思い、バベルの塔を見た。100階建てになる所を見るのも悪くない。ラヴィは、オレの肩にとまり、甘えるように頭を摺り寄せてきた。


「あの100階の建造は、ラヴィの手柄だな」

「ぎゃおーーーん」


 バベルの塔の100階部分に霧がかかった。この霧が晴れると、100層目が現れる。今回は、天空に瑞光がさしている。100階記念演出なのだろう。


 その瑞光が後光に変わり、光が、どんどん膨らんでいく。


 ぱんーと、空に穴が開き、そこだけ雲がなくなった。


 そこから、光の柱が立ち、バベルの塔に降り注ぐ。


「おい、あれ、おかしくないか」

「ぎゃう?」


 光の柱が、バベルの塔に当たり、ピカッと光る。


 ガゴ、ガゴン、ガゴンと、光の柱は、バベルの塔を食い破り、ほとんど根元まで、崩壊させてしまった。


 それを見たと同時に、音の衝撃波が来た


ゴオー――――――――――――――――-----------ン 


 バベルの塔が瓦礫になる、ガラガラなどという高い音を駆逐するかのような低周波が浮き島を襲い、浮き島の端を壊してしまった。


 おれは、思わずラヴィをかばってこの浮き島の内陸に飛び、大地に伏せた。



 みんな、いつかは、こういう日が来るだろうと、思っていた。しかし、メインコンピューターがある塔だ。テントなどの、フィールドアイテムを使わない場合は、あそこからログインする。銀行も、倉庫もあそこだ。


 こりゃバグったなと思う。


「ラヴィ大丈夫か。って君、君は誰?」

「えっ!」


 どう見ても、中学生ぐらいの女の子だ。それも、全裸で

「おまえ、ラヴィか」

 それしか、考えられない


「・・・ばれた」

 ラヴィは、真っ赤な顔をして、木陰まで飛んだ。


 飛び方は、羽を使わない感じのふわふわしたもので、サポートパートナーでいるときのラヴィの飛び方と同じだ。でも、人の大きさなので、トーンと言う感じで素早く見える。


 おれは、薄々そうじゃないかと思っていた。


「ラヴィ、いいから出てこい」


「ごめん、服がないの」


だいたい、会話をするNPCがいるわけない。そりゃ「ぎゃう」とか「がおー」しか言わなかったけど、何となく成り立っていたから、おかしいと思っていたんだ


「リゾート用のがあったでしょう。サーフパンツのやつ」

 ラヴィは、真っ赤な顔をして、木陰から顔をのぞかせている。


 そのうえ、おれの持ち物を全部把握しているんだよな。こいつ


「いいぞ、おまえ、女の子だったんだな」



 恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい


 ラヴィの頭は、真っ白だ。ちっちゃい飛竜の体で、ヒロに甘えまくっていたのがばれてしまったのだ。実際は、実体化してヒロの前にいる。それは、ありえないことなのに、そこまで気が回らなかった。


「そら」

「ありがと」


 いつもと違う、気まずい雰囲気。おれは、この異変に気付いていた。


「ラヴィは、どこの子だ。なんか、まずいことになっていないか」


 ラヴィは、お着換え中。サーフ用のパンツは、思った通りスカートのようになった。でも、ヒロがピッタリ着ていた速乾素材のシャツが、ぶかぶかのサラサラで落ち着かない。


「そうなの?私の方こそまずいことになってない?アンダー用の靴だと履けると思うの」


 戦士用の厚手の靴下のことだ。衝撃吸収に優れている。


 おれは、靴下を出して、バベルの塔を詳細にみた。3階部分までは、原形を保っているから、元ソースは生きているということだ。


 ラヴィは、ふよふよ浮かんで、おれのもとにやってきて、柔らかい靴を貰って履いていた。


 ここ一帯は、花が咲き乱れている。


「いい匂いがするよな。食事用はあるけどアバターシステムに大地の匂いは組み込まれていないはず。それに、さっきから現実世界をモニター出来ない。いつ復旧するんだ」

 そう言いながら、ラヴィに振り向いた。


 ラヴィは、ドキッとして、また顔を赤くした。空中で、ふよふよ浮かびながら、かしこまっている。


「あまり、驚かないのね」


「長い付き合いだからな。砂漠の秘宝はどうなった?」


「えっと胸にそのままある。それに、さっき、緑の宝珠っていうのがドロップした」


「良かったじゃないか。見せてみろ」


 緑の宝珠は、ラヴィの額に食い込んでいた。眉間の辺りから、放射状に広がり、額を覆っている。それをヒロに触られて、なんだか目をつむってしまう。


 おれは、緑の宝珠にサーチをかけた。


「すごいな、強回復系みたいだぞ。この能力も初めてじゃないか」


 ラヴィの魔法は、ほとんど、防御と攻撃支援だった。初期レベルの時は重宝したが、回復魔法は弱いままだった。


「うん、攻撃もできるようになったし、サポートパートナーじゃないみたい」


「そうだな、おめでと。マルチプレーヤーになったってことだろ」


「えへへー」


「それで、どうやって、サポートパートナーをやっていたんだ。そんなプレーヤー聞いたことないぞ」



「話さないとダメ?」


「いいけど、じゃあ、なんで、浮き島をずっと見てたんだよ。ラヴィのためにここまで来たんじゃないか」


「お母さんの産まれ故郷だから」


「ここは、バーチャル世界だよな」

 さっきから、その疑問が、首筋当たりの毛にチリチリ来る。


「そうだけど、わたしの世界とそっくりなの」


「やっぱり、話せよ。ラヴィは、相棒だよ。大丈夫だから」


「うん」



 ラヴィの話は、納得できるものなのだが、途方もない話だった。


「じゃあ、ご先祖は、太陽系の種族だったのかい」


「そうよ、ヒロの暦でいうと、えーっと、わかんないぐらい前よ」


「もうちょっと具体的に話そうよ。じゃあ。オレは、ラヴィのご先祖様になるのか」


「そうかも! そんな気しないけど」


 ラヴィが言うには、今なったばかりだけど、あんな感じのバベルの塔の残骸が、故郷の星にあるそうだ。そこを友達と探検していて、おれのゲームとシンクロした。


「ちょっとまて、その友達って、人魚とエルフだろ」


「すごい、よくわかるね。ヒロが、私の名前を呼んでくれた時は、本当に嬉しかったんだー」


 おれは、ムッとしてラヴィに断った。


「ノーマと、アリーシャ呼んでいいか?」


「本当!、喜ぶと思う」

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