クラフト
アリーシャがゴングの折れた角後を癒している間に、角側を作ることにした。ヒロは、さっきドロップした素材アイテム、カブトと、ハーツソード2本を取り出した。問題は、これらの素材を融合させる触媒を何にするかだ。
触媒には、結晶石が使われる。それが、これから出来上がる剣のベース属性になる。ヒロは、期待を込めて、雷結晶を触媒にした。実際は、基部と同じように剣の硬度も上げた方がいいのだろうが、重くなってしまう。左右のバランスも大事だ。素材アイテムのカブトとは相当頑丈そうだし、ハーツソードを2本使うのだから、並みの硬さ以上は、確保できる。
「やってみるか」
ヒロは、ライトボードを出して、これらの素材を並べた。
「クラフト、融合」
ゴングの無事な角を見ながら、左右対照になる角のイメージをする。
ヒロの目の前に大きな融合空間が現れ、そこに素材アイテムが飲み込まれた。剣と、焦げ茶色のカブトが混ざり合う。
「よし」
ここで、融合触媒になる雷結晶を融合空間に投げ込んだ。中で、雷がいくつも起こり空間の中は、龍の巣のように雲と雷の塊になった。
融合には、少し時間がかかる。一部の蟲達が。珍しそうに、ヒロの作業を見守る。
雲が晴れてきた。ヒロは、融合空間に手を突っ込んで、剣を取り出した。
「おおっ」
蟲たちから、ため息が漏れる。
ヒロは、出来上がったカブトムシの角の形をした剣を見て
「ありゃ」と、小さく声を上げてしまった。
そこには、黄金に輝く角が出来上がっていた。基部の部分は、元角の内側だから色は関係ないが、ゴングの角は、左右違う色のツートンカラーになってしまった。
元素材のカブトが、ゴングのカブトと同じ色だったから、てっきりそうなるだろうと思い込んでいた。
雷結晶がまずかったか
そう思うが、素材のカブトは、さっきのしかない。これをゴングに献上するしかなかった。
「すまん、オレも、まだまだだな。色違いなのが出てきた」
そう言って、ゴングに剣を見せた。ゴングは、あっけらかんとしていた。
「おおっ、カッコいいな」
本人が喜んでいるんだ。結果往来だと思って、ライトボードで、この剣の出来をサーチした。
―ライトセーバー
いやいや、違うだろ光属性じゃないぞ。そう思ったが、ゴングが、体全体にライトセーバーに劣らないバリヤーを張っていたことに思い至る。
素材のカブトが、光属性だったのか。じゃあ、雷結晶は、どうなったんだ
とにかく、ライトセーバーを起動した。
ブゥンウーーーーーンと、光の剣が伸びた。この時点でゴングの身長と同じぐらいの長さがある。
「すまん、みんな離れてくれ」
コツはいるが、オーバーブレイドにしたときのように、一瞬だが、更に刀身を大きく伸ばすことができる。ヒロは、慣れたコマンドで、同じことをした。
「オーバーブレイド」
バヒョーン ババババババ
剣先を天井に向けていて良かった。とんでもない大きさだ。雷属性まで乗っている。剣のスキルのないゴングは、この技をすぐには習得できないだろう。
でも、ゴングが、剣術マスターに意欲を燃やしたのは間違いない。
「オレも、それ、出来るのか」
「剣術をマスターしたらだ」
「分かった」
ものすごく嬉しそうだ。
「ヒロ。いいわよ」
アリーシャの癒しが終わった。この剣をゴングにセットしてみる。色はともかく、なかなかの出来に、ヒロも満足した。
「ヒロ、なんだか騒々しいぞ」
ゴングが、クレームを出してきた。
「女の子の声が聞こえる。エリシューム島北の海中。何のことだ」
「あー、それ、ノーマの声よ。いま、ラヴィと交信しているの」
「何だって」
そう言って、ヒロもライトボードの通信を入れる。
「だから、水竜王様にも海中の転生者の町を査察をしてもらいたいのよ。聖戦士様たちはもう、向かったわ」
「わかった。お父さんに言うね」
二人は、カナン山の話の続きで、海中の転生者の町の話をしていた。ノーマは、ラヴィを通して龍王に、転生者が死んだことを警告していた。
なるほど雷結晶の効果は、これだな
ヒロは、ゴングがなくした神経の代わりになればと、期待を込めて、雷の結晶石を融合の触媒にしたのだが、全く違う効果が表れた。ゴングに説明する。
「通信だよ。オレ達と交信できるようになったんだ。神経は断ち切れるんだろうが、その声の大きさを聞こえなくできるかい」
「できるぞ」
「じゃあ、今度は、この音を覚えてくれ」
パピン、パピン、パピン、パピン、パピン、パピン、パピン
「いいが何の音だ」
「呼び出し音だよ。これを聞いたら、出てくれ。逆に鳴らしてくれたらゴングの通信に出るから」
「分かったぞ」
その間、大事な通信を終えた二人は、ゆるい話をしていた。
「ラヴィもこっちにおいでよ。アリーシャにも宝石がドロップしたよ」
「えへへへー」
「アリーシャ!」×2
「行きたいんだけど、お父さんがだめだって言うの。ヒロに早く来てって言って」
「分かった、すぐ行くね」
「まっててね」
ヒロは、ものすごく期待を込めて。ゴングをフレンド登録してみた。
「ちょっと、コールしてみてくれないか」
「こうか」
パピン、パピン、パピン、パピン、パピン
ゴングのフレンド欄がフラッシュしている。ゴングの波長を記録した。
「ヒロだ」
「ゴングだが」
ここでは、距離が近すぎて、通信という感じにならない。それでも、ヒロは、この快挙に大喜びした。
ロードオブ召喚獣を始めて3年。今まで、フレンド登録を全くしなかったわけではない。だが、ギルドを追い出されたり、せっかく友達になったのに、その人が仲間に、「止めろよ」と言われて、疎遠になったりで、気を使ってまともに連絡したことがなかった。初めて気軽に連絡できる友達ができた。
「ここじゃあ近すぎる。後で、コールしていいか」
「いつでもいいぞ」
「よろしくな」
ヒロに友達ができた。蟲族の聖戦士で肉弾戦の得意な楯役、ゴングだ。
「ゴング、これを貰ってくれ」
ヒロが、さっき大量にドロップした緑結晶、「世界樹の樹石」をゴングに渡した。ゴングの剣を外して使い方を教える。
「柄の所に穴があるだろ、ここに緑結晶をはめることができる。これをはめていると、間違って、練習相手を傷つけそうになっても、一緒に回復もしてくれる」
「剣に慣れるまで、必要だな」
本当は、シン対策だ。シンにとりつかれた仲間をこの剣は、救うことができる。今は、使い方が分かればいい。
「もう一つ穴があるだろ、ここに、例えばこの、炎結晶をはめるとだな。属性を替えることができる」
ヒロが、炎結晶をはめるとゴングの剣が燃えだした。
「炎結晶も欲しいぞ」
「剣に慣れたらな。これは、この状態でも、頭の角に戻すことができる。燃えながら敵に突っ込めると言うことだ」
「肉弾戦にも使えるのか! この方が使いそうだ」
「使うときは、ちゃんと、神経切れよ。熱いぞ」
ゴングが、角の神経を絶ち切れると聞いてヒロは、このシステムを思いついた。
ゴングは、自分の頭に角を収納することができる。多分、緑結晶を穴にセットして収納したら、弱いだろうが、持続回復効果を得られるかもしれない。それは、おいおい通信でやればいいかと思った。
ヒロにノーマとアリーシャが寄り添ってきた。ビーは、別件で、仕事ができた。そこで、シャーンが龍王城に案内してくれることになった。そこにいるムシキングに用ができたガイガイオウも、一緒についてくる。
ライトセーバーを試したくてうずうずしているゴングに見送られて3人は、世界樹の中腹にある龍王城を目指すことになった。




